「税理士=決算書と申告書を作る人」。もし、そんなイメージを持っているなら、本連載はその考えを覆すかもしれません。信用金庫勤務から税理士業界で35年以上、数多くの中小企業の決算と向き合ってきた現役税理士が、経理の本質、税理士業界の現実、そしてDX時代の未来像を、正直に語ります。
1952年生まれ。北海道栗沢町出身。札幌南高校、小樽商科大学卒。北海道内信用金庫で11年間勤務後、会計事務所を経て1988年に税理士として独立開業。35年以上にわたり中小企業の決算・財務・経営に携わり、「正しい会計と経理こそが経営判断と信用力を支える」という信念のもと、事業承継や経営改善を支援。税理士・中小企業診断士・M&Aスペシャリスト。主な著書 | 『なるほど正しい事業承継』『失敗しない事業承継の知恵』『後継者が育つ“よき経営者”の役割』
ここまで、経理の本質、DXの進展、会計ソフトやクラウドサービスの変化について述べてきました。最終回の後編では、税理士という仕事の現実と、これからこの道を目指す人に伝えておきたいことを、正直に書きたいと思います。

まず、業界の現実からお伝えします。2024年実態調査によると全国登録税理士は、86,166人(2004年67,368人)、北海道では2,046人(同1,993人)ですが、そのうち60歳以上が53.88%(2024年時点)を占めています。中小企業の経営者以上に、税理士業界は高齢化が進んでいると言ってよい状況です。
一方で、若い世代の税理士は極めて少ない。20代は0.6%、30代でも10.3%にすぎません。
これは、「税理士という仕事が将来なくなる」という話ではありません。むしろ逆で、これからの時代を担う税理士が、明らかに不足しているという現実を示しています。
税理士は、法律によって以下の三つの業務を独占的に行うことが認められている専門職です。
さらに、会計に関する業務を行う専門家として、長年にわたり中小企業を支えてきました。
しかし、制度に守られているということは、同時に重い責任を負っているということでもあります。
地元中小企業の経営者が直面する環境変化や新たな困難に対し、税理士が何も変わらなければ、信頼は失われていきます。

とりわけ大きな変化が、会計を軸とする経理分野のデジタル化です。クラウド会計、電子帳簿保存、インボイス制度。これらは単なる制度対応やツールの話ではなく、経理のあり方そのものを変えつつあります。
税理士自身が学び、変わり、「頼られる存在」であり続けなければならない時代に入ったと言えるでしょう。
とはいえ、誤解してほしくないことがあります。税理士は、ICTの専門家ではありません。また、経営や財務のコンサルタントでもありません。
制度や試験科目を見ても、ITはもちろん、経営や財務管理に関する試験科目もありません。しかしだからといって、経理DXや経営判断に関われないわけではありません。
中小企業の経理現場には、以下のような経理担当者がいます。
税理士は、その経理担当者と共に学び、共に考え、共に経営者を支える存在になることができます。
専門家として上から指示や指摘するのではなく、現場に寄り添いながら、経営者の身になって、数字を通じて経営判断を支える。それは、数ある専門士業の中でも中小企業に最も身近な税理士にしかできない役割です。
私が創業した税理士事務所は、現在も次の世代の税理士に引き継がれながら続いています。創業以来、一貫して大切にしてきた考えがあります。
それは、「正しい会計と決算だけが、経営に役立ち、企業の信用力を高めることができる」という信念です。
そのために、「財務」「税務」「会計」「経理」を切り分けるのではなく、一体として指導・支援することを続けてきました。

言うまでもなく、高度な税法知識と豊かな経験に基づくノウハウを背景とする、税務判断や税務調査対応力は税理士の基礎として大切にしています。
そして、私たちは、事業承継や相続続税対策など、多様な周辺知識を合わせた重要性や難度の高い業務にも積極的に取り組んできました。
困難に直面している中小企業と経営者に真摯に向き合って力になる。そのために私たち自身も困難い立ち向かい、高度な知見を身に付けていく挑戦を忘れてはいけません。この姿勢を保ち続けることこそが、結果的に経営者からの信頼につながると信じています。
私たちの理念は「中小企業の健全経営を守るために努力を惜しみません」です!
そして、顧問先に提供する価値は、「安心」「元気」「信頼」「便利」です。

税理士という仕事は、決して楽な道ではありません。試験は長く、実務も地味で、すぐに成果が見える仕事ではありません。
それでも、経理を通じて経営を支えたい!数字で企業を守りたい!そう思う人にとって、税理士は今も、そしてこれからも、価値のある専門職です。
経理の本質は変わりません。しかし、手段と環境は変わり続けます。
その変化の中で、人に寄り添い、学び続ける税理士であってほしい。それが、この連載を通じて、私が最も伝えたかったことです。
本連載が、税理士を目指す方にとって、「税理士とは何か」「自分はどんな税理士になりたいのか」を考えるきっかけになれば、これ以上の喜びはありません。