2025年は、地方創生の追い風が拭きます。地域再生・地域共創を実現する注目企業たちを紹介します。2024年、地方創生を旗印に石破首相が交付金倍増を掲げたことで、地方創生が一段と注目を集めています。地方創生は、人口減少や高齢化といった課題に対応し、地域の活性化を図る国策。その中で、地方の個性を活かした革新的な企業が次々と生まれています。
たとえば、北海道帯広市の株式会社そらは、「十勝にあったらいいな」を形にすることで、老舗ホテルやグランピング施設の再生、藤丸百貨店の再建などを通じて地域を盛り上げています。また、観光地の活性化や雇用創出を目指す企業も続々と登場。地方創生は、地域課題の解決とともに新たなビジネスチャンスを生む舞台として、いま最も注目すべき分野です。
長文記事なので、地方創生企業をすぐに知りたい方は、目次から飛んでください。
2024年10月、石破茂さんが新たな首相に就任したのは、まだ記憶に新しいですよね。鳥取県出身の石破さんといえば、第二次安倍内閣で初代地方創生大臣を務めた経験を持つ「地方創生の熱血リーダー」として知られています。
そんな石破首相が、11月8日に首相官邸で開かれた「新しい地方経済・生活環境創生本部」の初会合で、「2025年度予算案で関連交付金を倍増する計画」を発表。地方創生への本気度が伝わってきますよね。今、まさに「地方創生」というテーマが“激アツ”なんです。
石破首相は「地方創生の5本柱」を掲げました。
このなかで、「付加価値創出」、「デジタル技術」といったキーワードは、地方創生で一旗揚げようと考えている人にとっては、重要になってくるのは間違いありません。石破首相就任後、Google検索で「地方創生企業」を検索するが増えていて、このキーワードで自社のサービスを知ってもらおうとリスティング広告単価も倍増しているんです。
「地方創生」という言葉、最近よく耳にしますよね。でも、そもそも何を指しているのでしょうか?地方創生は、2014年に施行された「まち・ひと・しごと創生法」を基に始まった政策や取り組みのことを指します。
この政策は、地方を元気にしようという国の思いが詰まったものなんです。現在、国と地方自治体は、それぞれの人口ビジョンや総合戦略に基づいて地方創生に取り組んでおり、最近では「SDGs(持続可能な開発目標)」と絡めたプロジェクトも増えています。
要するに、人口減少が避けられない状況の中で、移住促進や「関係人口」を増やし、「うちの自治体って魅力的なんだよ」とアピールするための動きなんですね。
背景には、地方から都市への人口流出が深刻化しているという現実があります。東京圏などの大都市への一極集中が続けば、都市部では人口増加に伴い環境が悪化し、災害時には都市機能が麻痺するリスクも高まります。
一方、地方では人口減少や高齢化が進み、経済や地域コミュニティの維持が難しくなってしまいます。この状況をなんとか改善しようと、人口の流れを都市から地方へ移し、地域の活性化を目指すのが地方創生の大きな目的なんです。
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地方創生に似た言葉で「地域創生」というものがありますが、実は少し意味が違うんです。地方創生は、国が主導し、自治体や地域企業と一緒に進めていく国全体の取り組みを指します。
一方、地域創生は、地域住民や地元企業が主体となり、それぞれの地域で独自に行う活動を指すことが多いんです。イメージとしては、地方創生は規模が大きく、地域創生はその地域ごとの具体的な取り組みといった感じですね。
ただ、この二つの取り組みは対立するものではなく、むしろ連携することで相乗効果が期待できます。国のサポートを受けつつ、地域独自のアイデアや行動を組み合わせて、より効果的な地方活性化を目指しているんですね。
地方創生が奨励されている背景には、我が国における大きな問題である「高齢化の進行」と、今後確実に見込まれる「人口の減少」があることがわかったと思います。我が国における少子高齢化は、他の先進国と比べてそのスピードが非常に早く、このままでは様々な問題が生じてしまうことが懸念されるんです。
少子化に伴って、我が国の人口は、2008年の1億2,808万人をピークに、2011年以降13年連続で減少しており、2023年10月時点の総人口は1億2,435万人と、前年に比べて約60万人が減少しています。この減少幅は、奇しくも石破首相の地元鳥取県(人口約58万人)と同じだけの人口が1年で減ったことを意味します。
国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口では、2070年には、我が国の人口が9,000万人を割り込むと推計。そして、高齢化も進行し、65歳以上の人口割合を示す高齢化率は、2020年の28.6%から、2070年には38.7%へ上昇すると推計されているんです。
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問題になってくるのは、将来的な生産年齢人口(15歳~64歳)の低下。2000年時点の生産年齢人口は8,622万人で、総人口に占める割合は68.1%となっていますが、これが2050年にはそれぞれ、5,389万人、53.6%にまで低下することが見込まれています。
生産年齢人口の減少は、経済成長の阻害につながる上、総人口に占める生産年齢人口の割合の低下は、支え手の減少を通じ、社会保障制度の基盤を不安定にしてしまうことが懸念されているのです…。こうした変化は、地方において特に顕著になってきます。
観光大国として注目を集める日本。コロナ禍が明けた後、外国人観光客が急増し、観光地は賑わいを見せています。しかし、その裏では「オーバーツーリズム」という問題が顕在化しているのをご存知でしょうか。
具体的には、街中の混雑や交通渋滞、トイレ不足、ゴミや騒音、さらには地域住民とのトラブルが発生。背景には、観光地の一極集中があります。東京や京都など一部の都市や有名観光地に観光客が集中するため、他の地方観光地とのバランスが取れていないのです。
こうした問題を解決するには、観光客を幅広く地方へ誘導する仕組みづくりが必要です。まさに地方創生の起爆剤のひとつが「観光」というキーワードなんです。
地方のもう一つの大きな課題は、働き口の少なさです。都会に比べて企業の数が少なく、求人数も限られているため、希望の職業に就けないケースが珍しくありません。
また、収入面でも地方は都会と比べて低い傾向にあります。同じ職種でも、月給や年収が下がりやすく、昇進や昇給のスピードも遅いのが現状です。働き口の少なさが若者を苦しめているのかもしれませんね。
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現在の日本は、地方の過疎化と都市への人口集中という問題を抱えています。これを解決するには、地方特有の課題を一つずつ乗り越える必要があります。課題が多いからこそ、国や地方自治体、民間企業が連携し、官民共同での解決策を進めているのです。
地方の未来を明るくするには、皆で手を取り合い、地方の魅力を再発見する取り組みが欠かせませんよね。
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そんな中、「地方創生」を「仕事」にしようとする動きがかつてない盛り上がりを見せています。地方創生を仕事にするメリットとしては、まず「社会に貢献できる」ことが挙げられます。仕事を通して地方創生という国を挙げての課題解決に携わることで、仕事に対するやりがいを強く感じられ、モチベーションがメキメキ上がっていくのです。仕事に対しても前向きに取り組むことができますよね。
また、地方創生に関わる仕事をすすめることで、地域の雇用数の増加とともに「地域経済の活性化」を期待できます。また、その過程で地域の人やコミュニティとのつながりが生まれて、「企業の事業自体の活性化」も期待できます。
地方創生事業としての仕事があることで、働き手となる「ひと」が集まり、地域が活性化すれば、地域の魅力もさらに高まるという好循環が生まれ、企業と地域ともにwin-winの関係に慣れるのです。
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さらには、地方で起業を行う、あるいは東京などの都市圏から、転職と同時に地方へ移住する人を対象として、地方公共団体が「補助金」を支給する取り組みが行われています。前者は「起業支援金」、後者は「移住支援金」と呼ばれる補助金で、地方公共団体が主として行う事業です。
起業支援金については、東京都圏以外の地域で新たに起業、もしくは事業継承または第二創業する場合に、最大200万円が支給されます。移住支援金は、東京23区に在住または通勤する人を対象として、東京圏外へ移住し起業や就業を行うことを条件に、地方公共団体が支給を行うものです。支給額は最大100万円(単身の場合は60万円)です。さらに、これらは重複するので、合わせて最大300万円ももらえてしまう可能性があるのです!
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また、地方は物価が安いため、生活費を控えめに済ますことができます。総務省が公表した2022年度の「小売物価統計調査(構造編)」によると、全国平均を100とした消費者物価指数は、東京都が104.7ポイントとなっています。
一方で、他の都道府県、特に都市圏ではない地方では100ポイントを大きく下回っていて、最も低い宮崎県では96.1ポイントとなっています。つまり、地方は都市に比べて物価が安いため、地方を拠点に地方創生の仕事をする場合、東京都など都市圏と比較した場合、地方の生活では費用を安く抑えられることが期待できるんです。
しかし、地方創生の仕事はメリットばかりではありません…。デメリットとしてはまず、転職先によっては地方創生プロジェクトが頓挫してしまうかもしれないことが挙げられます。
企業が地方へ新規事業を展開するなどの形で地方創生プロジェクトに携わる場合、事業がうまく進まずにプロジェクト自体が頓挫してしまうリスクがあるんです。地方創生プロジェクトの一環として、その企業に雇用された場合、プロジェクトの頓挫によって最悪の場合には解雇となるおそれがあるものです。起業する場合も同様で、事業が上手くいかない場合は会社を畳まざるを得なくなってしまうことも十分にあり得ます。
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また、今まで住んだことのない街に移住する場合、交通の便や気候、商業施設の充実度において、東京圏と比較したときのQOL(クオリティー・オブ・ライフ)が低下してしまう懸念もあります。
移住する前には移住先の状況を把握しておいて、移住の是非や対策を検討するとよいでしょう。この際、地方の転職エージェントやメディアであれば、移住先の生活や企業事情にも詳しいため、一度相談すると有益な情報をもらえるかもしれません!
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最後に、やはり都市と比べて年収が下がる可能性が高い、ということが挙げられます。
厚生労働省が公表した、令和4年「賃金構造基本統計調査」によると、年収の全国平均は311.8万円。東京都は375.5万円、神奈川圏は335.6万円、最下位は青森県の247.6万円です。
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この結果からは、東京圏とそれ以外の道府県で年収に大きな差があることがわかります。しかしながら、東京都は家賃やその他生活にかかるコストも頭ひとつ抜きんでることから、移住後は都会と比べて住居費を抑えられる可能性があります。そうした事情によっては、最終的に転職前と変わらない生活水準も十分に期待できます。
ここからは実際に地方創生事業に携わっている企業をご紹介します。もし地方創生を仕事にすることに興味があれば、ぜひとも参考にしてみてください!地方創生が加速する2025年には目が話せない企業ばかりです。
リノベる株式会社は、個人向け住宅デザイン・中古マンションのリノベーション事業や不動産再生を軸とした法人向けの都市創造事業を行っている企業です。「日本の暮らしを、世界で一番、かしこく素敵に。」という目標のもと、誰もが自分らしいライフスタイルを実現できる世の中を目指し、「顧客」「社会」「産業」のあらゆる課題をテクノロジーの力で「価値」へ変える挑戦をしています。
アソビューは、日本全国の遊び・レジャースポットを多数紹介し、便利でお得に予約できるサービスを提供するベンチャー企業です。「遊び産業」という新しいフィールドの創造を目指し、日本全国の地域の魅力を発信しながら、地方創生に貢献しています。
日本全国の地域を盛り上げるべく、体験商品開発やさらに売れる体験にする改善提案を行い、遊び予約サイト「アソビュー!」などで情報発信を行い、地域の魅力を「遊び」を通じて届けていく取り組みを行っている企業です。最近では各自治体と協業し、地域クーポンの開発・販売を推進し、全国のおでかけ需要に応える取り組みに力をいれています。
LIFULLは、不動産や住宅事業を通して社会課題の解決に取り組む企業です。地方創生の一環として、社会課題であった空き家を、可能性ある資源へと捉え直し、放置された全国の空き家を正しく活用する取り組みを行なっています。空き家データ・人材育成マッチング・活用ノウハウプロデュース・資金調達支援、といった4つの柱を軸に、地方創生を推進していくことを提言しています。
エスビージャパンは、自治体課題の解決に向けて「みんなの観光協会」などの自社メディア、スタートアップとの事業共創を生むオープンイノベーション、日本の企業や自治体のアジアPR拠点「JAPAN SAKURA BASE」など新事業を創造し、日本のまちを元気にすることを目指している企業です。
サービス内容としては、インバウンド向けのPRや、海外販路開拓支援、ポップアップやイベントのサポートなどといった地域のよさを海外に広める活動の支援から、輸出・輸入支援事業、文化コンテンツ事業に力を入れています。
株式会社SHONAIは、2014年にヤマガタデザインとしてスタートした、山形県の庄内エリアに密着した企業です。共通ビジョンとして、「地方の希望であれ」を掲げ、自分たち自身が当事者として、地方から地域の課題解決事業に取り組む姿勢や実績、提供するサービスを通じて、他の地方で挑戦する当事者に貢献し、日本の地方からより多くの希望を創出したいという思いが込められています。
事業戦略としては、地方における事業成長領域を、観光・農業・人材と区分けし、グループ各社で共同代表体制を構築、将来的なIPOやM&Aを見据えた自立自走の事業成長を目指しています。教育施設の運営や、ソーラー発電事業など、幅広くチャレンジしている企業です。
株式会社おてつたびは、地域の困りごとをお手伝いすることで報酬を得ながら旅行をすることのできるサービス「おてつたび」を運営している企業です。行きたかった地域にいく際のボトルネックになりがちな旅費を軽減する事が可能なほか、お手伝いを通じて地域の方と関係性ができ再び同じ地域へ訪れる参加者も増えており、地域のファン(関係人口)を創出することに成功しています。
日本経済新聞社主催「日経ソーシャルビジネスコンテスト」優秀賞や、一般社団法人 日本起業アイディア実現プロジェクト主催「女性起業チャレンジコンテスト」グランプリなど、数多くのスタートアップ系の賞を受賞しており、注目の地方創生企業となっています。
地方創生の新たな担い手として注目される 株式会社そら(北海道帯広市)。設立わずか4年で、十勝地域を中心に数々の事業を成功させ、地方活性化のモデルケースを築いています。ミッションは「十勝にあったらいいなをつくり、人とお金を呼び込む」。地域経済に新たな風を吹き込むベンチャー企業です。
代表的プロジェクトの一つが、創業95年の老舗「ふく井ホテル」の事業承継。歴史を尊重しつつ、現代のニーズに合わせた改修を実施し、観光客や地元住民からの支持を集めています。老舗ホテルの再生を通じて、帯広の玄関口としての役割をさらに強化しています。
そらはまた、中札内村にある「グランピングリゾート フェーリエンドルフ」の大規模リニューアルを手掛けました。北海道の自然を活かしたこの施設は、滞在型観光の新たな可能性を提示。観光客に特別な体験を提供し、地域全体の観光振興に貢献しています。
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2023年1月に閉店した帯広の象徴的存在「藤丸百貨店」の再生にも挑戦中です。「藤丸パーク」として仮設商業施設を2025年に開業予定。地域経済を活性化する新たなランドマークとして再び輝かせる計画が進行中です。このプロジェクトには30億円以上の資金が必要ですが、地域全体で取り組む壮大な挑戦となっています。
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そらの挑戦は、既存事業の成功にとどまりません。将来的には十勝をモデルに、地方での金融教育事業を展開する構想も。地域経済の発展だけでなく、住民の金融リテラシー向上を目指しています。株式会社そらが描く十勝の未来。これからの地方創生を担うその動向に、ぜひ注目してください。
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長野県長野市にあるICS-net株式会社は2017年に食品原料の輸入卸として創業した会社です。2019年に食品開発のための原料検索サービス「シェアシマ」ローンチし、以来シェアシマの運営を中心的に行っています。
シェアシマの語源は、「その原料シェアしませんか?」で、全国各地の食品原料を必要としている企業にWeb上でつなぐものとして、サービスをスタートさせ、現在では食品製造に関わる課題全体を解決するソリューションをたずさえ、巨大なプラットフォームとして成長してきています。
株式会社PECOFREEは、福岡発の学⽣向けフードデリバリーアプリ「PECOFREE(ペコフリー)」を運営する会社で、学生に自由な食事を提供する、をコンセプトに、『Baton Pass the Happy』をミッションとして、食を通じて人・モノ・コト・想いを繋いでいくことを目標にしています。
「PECOFREE(ペコフリー)」は、学校と給食会社をマッチングし、スマホで簡単にスクールランチが注文できる学生向けのデリバリーアプリで、栄養士監修のお弁当が常時3~5種類、1食ワンコイン以内から注文でき、お弁当はアプリ上で事前注文・事前決済し、学校に配達することが可能です。
また、お弁当を作る給食会社は、事前注文で必要な食数が把握できるため、フードロスの削減にも貢献しているSDGsにも配慮した合理的なサービスです。
今回紹介させていただいたのはほんの一部ですが、様々な地域でユニークな事業が展開されていることがお分かりいただけたかと思います。
なかには、輝かしい賞を取ったり、メディアで注目されていたりと、地方創生はいま注目のビジネスとなっていることも、目ざとい方々には察せられるのではないでしょうか。
石破首相も後押ししている地方創生事業は、事業の飽和した都市部と比べてブルーオーシャンとなっているのみならず、日本の課題を解決するという点でも大きなやりがいを感じられる領域となっています。皆さんぜひ地方創生への参入をご一考してみてはいかがでしょうか!