地域活性化企業と地域活性化起業人をピックアップ!日本では、都市部への人口集中による地方の過疎化が深刻な問題なのは周知の通り。この課題に立ち向かうため、地域活性化を目指す企業や個人が増えています。これらの地方活性化企業や「地域活性化起業人」は、地域の特色や資源を活かした事業展開により、経済活動や文化活動の活性化に貢献しています。しかし、具体的にどのような活動が行われているのか、多くの人々にはまだ知られていません。今回は、地域活性化に成功した企業の事例をピックアップし、その成功の秘訣や彼らの仕事の内容を掘り下げ、地域活性化起業人の実態に迫ります。
現在、我が国では都市圏への人口集中とそれに伴う地方の過疎化が大きな問題として取り沙汰されています。それを解決する取り組みとして、各地で「地方活性化」が進められているのですが、中でも、会社を立ち上げたり、事業の一部として取り組んだりすることで、地方活性化に貢献しようとする「地方活性化企業」が増えてきているのはご存じでしょうか?
まず、地域活性化とは「その地域での経済活動や文化活動を活発化させ、地域一体となって街おこしや街作りを進めていく取り組み」のことをいいます。地域活性化に明確な定義はありませんが、その地域の資源を活用したり、地域一帯でイベントを開催したりと、様々な取り組みが地域活性化に活用されています。
しかし、ひとくちに地方活性化と言っても、実際にどんな事業が行われているのかを知る機会はあまりないのではないでしょうか。そこで今回は、そんな企業を中心とした地方活性化の取り組みについてご説明していきます。まずは、各自治体ごとの地方活性化の成功例を5選、紹介したいと思います。
埼玉県和光市では、市民の妊娠期から子育て期にわたるまでの相談支援を行う「ワンストップ拠点」を設置し、途中で切れることのないような育児・生活支援を実施しています。
こうした市の取り組みは「わこう版ネウボラ(ネウボラ:フィンランドにおける子育てなどの相談所の総称)」とも呼ばれており、地域には5ヶ所のネウボラ拠点を設置して、主に妊婦の状況に応じた適切な支援に取り組んでいます。
高知県では、県内の中山間地域などで「集落活動センター」を立ち上げ、地域の暮らしを持続的に守る取り組みを推進しています。
また、県が「地域支援企画員」を全市町村に常駐で配置することで、県の業務としてその地域における地域活性化に向けた取り組みを支援するとともに、「地域を知る県職員」を育成することで、県政を効果的に推進するという取り組みをおこなっています。
秋田県五城目町浅見内では、地域内の商店の多くが閉店してしまい、買い物が不便になったことを受け、地域住民が主体となって運営するスーパーマーケット「みせっこ あさみない」をオープンしました。
「みせっこ あさみない」を設置することで、地域住民同士の交流の場を創出するとともに、地元スーパーとの支援協定を締結し、地域と企業の連携による経営の効率化を図っています。買い物のついでに住民同士での交流が生まれ、さらにはスタッフとして住民が活躍できる場が生まれたことで、地域活性化の促進につながっています。
福井県小浜市中名田地区では、地域課題の解決に向けて地域の各種団体や住民のべテランから若手まで参加する「田村のゆめづくり協議会」を設立することで地域活性化を図っています。
協議会では、中名田ブランドの確立やボランティアの組織化、防災の取り組みなどの様々な事業の展開について協議しているほか、若手を協議会の要職に抜擢することで次世代のリーダー育成の場としても活用し、地域活性化に取り組んでいます。
埼玉県小川町では、水稲・小麦・大豆のブロックローテーション(地域内の水田を数ブロックに区分し、1年ごとに転作するブロックを変えていき、数年間で地域内のすべてのブロックを循環する栽培方法)栽培に取り組んでいたのですが、商品にさらなる付加価値をつけることを目的に、地域で長年にかけて有機栽培を続ける霜里農場へ協力を依頼しました。
有機栽培で作った希少性の高い豆腐は人気を集め、連携した豆腐店は年間で5億円の売上にまで達し、地域経済に大きく貢献しました。
つづいては、様々な方法で地域活性化に取り組んでいる企業を5つご紹介いたします。
熊本市に本社を構える株式会社シタテルは、アパレル流通の構造的な課題に着目し、インターネットやIoTなどのテクノロジーを駆使することで国内初の衣服生産プラットフォームの構築に取り組みました。
オリジナル商品を小ロットで作りたいメーカーや小売店の販売事業者と、国内にいる熟練技術や経験を持つ職人や縫製工場の双方のニーズをマッチさせることで、アパレル産業における新しい流通サービスの提供につながりました。
芋焼酎の「黒霧島」ブランドで有名な霧島酒造株式会社では、地元・南九州産の原材料にこだわった製品づくりにより、地域産農作物の6次産業化を推進しています。
地元の生産者と連携し、栽培拡大・品質向上へ取り組むほか、平成25年には肉の名産地である同県の都城市と包括連携協定を締結。「日本一の肉と焼酎」としてふるさと納税の謝礼品に採用したところ、市のふるさと納税寄付金額は全国1位(平成27年度:約42億円)となり、地域経済の活性化につながりました。
新潟市西蒲区にある株式会社欧州ぶどう栽培研究所は、西ドイツの「国立ワイン学校」でワインづくりを学んだ創業者によって設立されました。
こちらの研究所の敷地内では、客が思う存分にワインを楽しめる空間を提供するため、イングリッシュガーデンやレストラン、カフェ、温泉、ホテルなどが整備されています。研究所のワインの年間販売量のうち、95%がワイナリーのショップやレストランで直接販売され、年間訪問者も30万人以上に増加し、地域へ観光客を呼び込むことに成功しました。
株式会社化吉田ふるさと村は人口減少が進む地域での地域産業の振興や雇用確保を目指すために設立されました。
同社では、地元の農産物を活用した加工品の開発・販売のほかに、住民の生活を支援する業務や地域資源を活かした観光振興などのコミュニティビジネスを展開し、地域活性化につなげています。こうした同社の事業により、これまでに60名以上の地域住民の雇用を生み出したほか、都会からのU・Iターン者のよびこみにも注力しています。
駅前再開発に伴う管理運営を目的として設立された「ふらのまちづくり株式会社」では、地域の商店街の衰退や中心的な病院の移転をきっかけに様々な機関から支援を受け、その病院の跡地に市街地活性化を目指した「フラノマルシェ」を開設しました。
フラノマルシェでは、名産品の販売やイベントの開催を行い、開設3年目には来場者74万5000 人、売上は5億1,000万円にまで増加。地域経済の活性化と地域雇用の創出に大きく貢献する取り組みとなりました。
著しい地方圏の人口減少を受け、総務省が設立したのが「地域活性化起業人」制度です。“企”業人ではなく“起”業人なのでくれぐれも間違わないようにしましょう!
地方活性化起業人(企業人材派遣制度)は「地方公共団体が、三大都市圏に所在する企業等の社員を一定期間受け入れ、そのノウハウや知見を活かしながら地域独自の魅力や価値の向上等につながる業務に従事してもらい、地域活性化を図る取り組みに対し、特別交付税を措置する」制度です。
この制度に参加する団体数・人数ともに年々増えており、令和4年度の地域活性化起業人 の数は、前年度から223人増加し、618人に、活用する市町村数は、前年度から110団体増加し、368団体となりました。
さて、気になるのは十勝にも地域活性化起業人はいるのか、ということですよね。令和4年度のデータでは、北海道全体では47市町村・92人が活用されており、十勝管内では、上士幌町に2人、鹿追町に1人、中札内村に1人、更別村に1人、大樹町に2人、本別町に1人、合計8人が在籍しています。
このうち、上士幌町には、それぞれ東日本電信とソフトバンクから、中札内村には日本航空から、とかなりの大企業から起業人の方がいらっしゃっています。
北海道全体から見ると、十勝管内の人数は決して多いとは言えませんが、起業人自体が年々増加傾向にあることを踏まえれば、これからもこうした取り組みは盛んになっていくことが考えられます。十勝の皆さん、この機会に是非コンタクトなどを取ってみてはいかがでしょうか。