ご存知ですか? いま北海道で、宇宙関連企業への転職が盛り上がっているんです! 世界的には、起業家でエンジニアのイーロン・マスクによって設立されたSpaceXを始めとした宇宙関連ビジネスは成長を続けているのですが、国内では特に北海道において動きが盛んです。それは、一体なぜでしょうか。本コラムでは、北海道で宇宙ビジネスが発展している理由や、注目の企業などについて解説していきます。
人工衛星やロケットの打ち上げをはじめ、衛星データの活用が進むなど、国内においても宇宙関連ビジネスは拡大の一途をたどっています。2016年に88億円程度だった国内市場の規模は、2050年には600億円近くまで拡大するとされています。2020年に商用サービスが始まった5Gなど、現代社会に欠かせない高速で安定した通信システムの活用にも、実は人工衛星が一役買っているのです。
衛星データや位置情報を使ったサービスは自動運転などとも関連があり、今後いっそうの拡大が予想されています。ちなみに現在、世界における宇宙関連ビジネスの市場規模は38兆円、2040年には300兆円にまで拡大することが見込まれています。
北海道は、宇宙ビジネスに関係のある企業が少なくありません。理由の1つは、北海道は広大な土地に恵まれていること。宇宙ビジネスにはロケットや人工衛星は欠かせませんが、ロケットの発射場というのは安全性などから、都会の真ん中には作ることができません。そもそも、国や地方自治体の許可がなかなか下りないといわれています。その点、北海道は土地が広く、日本国内ではロケットの発射に比較的適しているといえるでしょう。
その北海道において、成長が特に期待される注目の宇宙関連企業5社をピックアップして紹介します。
北海道の中部に位置する赤平市に拠点を置く、株式会社植松電機。人気ドラマ『下町ロケット』のモデルになったといわれています。同社の本業は、パワーショベル向けマグネット製品の開発・製造ですが、農業や漁業、医療機械の開発のほか、JAXAや大学などと連携して宇宙開発にも携わっているのです。
同社は、北海道初の超小型人工衛星「HI-SAT」の開発を担当。代表取締役の植松努さんは、民間宇宙開発企業カムイスペースワークスの代表取締役や、北海道宇宙科学技術創成センターの理事も務めています。
株式会社岩谷技研の代表取締役、岩谷圭介さんは北海道大学在学中、風船を使った宇宙撮影に挑戦し、2012年に上空3万mからの撮影に成功。2016年に岩谷技研が設立されました。本社所在地は、北海道中部の江別市にあります。
高度25~30kmに達する、大型気球による宇宙旅行の実現をめざして事業を進めています。また、さまざまな業種のパートナーとの共創により、日本から宇宙産業を開拓し、宇宙をすべての人にひらかれたものにしていく、宇宙の民主化プロジェクト「OPEN UNIVERSE PROJECT」を推進しています。「週末、宇宙行く?」という会話がふつうになる、そんな社会をめざしています。
北海道を代表する「匠の町」室蘭市は、100年以上にわたって、金属のものづくりに取り組んできた街です。その室蘭市にある株式会社キメラは、1998年の創業以来一貫して精密金属部品加工を行ってきました。
そして、航空宇宙分野に本格参入するため、航空・宇宙関連の品質マネジメントシステム「JIS Q9100」 規格の認証取得を宣言し、2020年5月に認証の取得を実現。この認証取得は、道内中小企業では初めてのものでした。
宇宙業界の部品製造への取り組みは、すでに始動しています。大樹町でロケットの打ち上げを行っているインターステラテクノロジズが、以前はロケット部品を道外に発注していましたが、JIS Q9100を取得したキメラに発注。ミクロン単位の精密微細加工と、設計から量産まで一貫体制で行う金型製作を武器に、北海道から航空・宇宙業界に新しい風を吹かせています。
2005年、前身となる民間宇宙開発組織「なつのロケット団」を結成。2011年、北海道大樹町にてロケット打ち上げ実験を開始しました。2013年、インターステラテクノロジズ株式会社として設立された、宇宙の総合インフラ企業で2019年、国内民間単独開発のロケットとして初めての宇宙到達に成功。同社の取締役・ファウンダーが実業家・堀江貴文さんであることでも知られています。
半導体の進化などで小型化が進み、民間企業の参入で打ち上げニーズが高まるなか、ボトルネックになっている人工衛星を運ぶための輸送インフラ問題に、同社は取り組んでいます。同時に日本、そして北海道に宇宙関連産業の一大サプライチェーンを形成することも見据え、2023年12月、事業拡大に伴い、帯広市に支社を設立しました。
ロケットや人工衛星の発射には、南が空いているほうがいいとされています。この条件に適しているのが、東南に太平洋が開けている十勝の大樹町です。その北海道広尾郡大樹町に本社を置くスペースコタン株式会社は、2021年4月に設立。ロケットやスペースプレーン(宇宙船)が日常的に打ち上がるインフラを築くことで、日本を宇宙と地球のハブ、さらにグローバルビジネスの中心地にするための活動をしています。
2023年4月には、世界に開かれた商業宇宙港「北海道スペースポート(HOSPO)」をつくり、本格稼働を開始。宇宙ビジネスのインフラの核である宇宙港として、国内外の民間・政府・大学などのロケット、スペースプレーンが日常的に打ち上げできることをめざし、宇宙×○○のさまざまなビジネスを創出する「宇宙版シリコンバレー」の実現をミッションとして掲げています。
宇宙産業は成長段階にあり、幅広い人材が求められています。ロケットや人工衛星などの設計や研究・開発はもちろんのこと、打上げや運用に関連した技術者、それにメンテナンスやアフターサービスの担当者も不可欠です。さらに、宇宙産業は営利だけを追求するものではありませんが、ビジネスである以上、マネジメントに携わる人材も求められています。
また、実際の現場でも、工学や物理学に詳しいスタッフもいるものの、みんながみんな、専門的な知識を持っているわけではありません。専門知識や技術も大切ですが、好奇心があり、幅広い知識を持った人材も必要とされていますので、せっかく仕事をするなら未来や夢、ロマンも同時に追い求めたいという方は、ぜひ挑戦していみてはいかがでしょうか。
最後に、特に注目すべき宇宙関連情報をピックアップ。2023年4月、北海道広尾郡広尾町に誕生した宇宙港「北海道スペースポート(HOSPO)」。ここは商業宇宙港というだけでなく、宇宙関連のさまざまな実験の場にもなっています。
たとえば、インターステラテクノロジズ株式会社は、HOSPO内のサブオービタルロケット発射場「Launch Complex-0(LC-0)」のインターステラテクノロジズ社開発のエンジン燃焼試験設備にて、小型人工衛星打上げロケット「ZERO」のエンジン「COSMOS(コスモス)」の燃焼器単体試験に成功。この試験では、家畜の牛ふんから製造された液化バイオメタン(Liquid Biomethane)をロケット燃料として初めて活用し、十分な性能を有していることが確認されました。
バイオメタンによる燃焼試験実施を発表しているのは、欧州宇宙機関(ESA)が開発しているロケットエンジンに続き、なんと世界で2例目。民間ロケット会社としては、インターステラテクノロジズが初めてです。
HOSPOでは2024年に滑走路が延伸され、小型ビジネスジェット機の離着陸も可能になる予定。大樹町と協力し、ロケット開発環境を提供し、国内における自立的な宇宙アクセスの維持・拡大や、国内外の宇宙産業の発展に貢献していきます。
このスペースコタンでは、現在HOSPO内でいっしょに働く仲間を募集しています。主な業務は「プロジェクトマネジメント」。世界中のロケット会社誘致と、打上げプロジェクトに携わることができます。
実は1984年、北海道東北開発公庫(現・日本政策投資銀行)から発表された「北海道大規模航空宇宙産業基地構想」で、大樹町が宇宙基地の適地だとされ、翌1985年には町として航空宇宙産業の誘致を始めました。
以来40年、宇宙開発に取り組んできたという歴史を持つ大樹町をはじめ、今後宇宙産業の発展に大きな役割を担う北海道で、ぜひあなたも宇宙ビジネスに取り組んでみませんか。