みなさま、「酪農ヘルパー」というお仕事をご存じでしょうか。多くの人にとっては、あまりなじみのない単語かと思われますが、この「酪農ヘルパー」は実は現代日本の酪農を支えるとっても大事な仕事なのです。
酪農ヘルパーとは、酪農家が休みをとる際に、搾乳や飼料給与などの仕事を代わりに行う職業を指します。この、酪農ヘルパーの出役をする事業を「酪農ヘルパー事業」といい、国や地方公共団体も支援している事業なのです。
もともと酪農は、休みの取りづらい畜産の中でも、さらに休みがとりづらい分野でした。というのも、畜産全体に言えることとして、生き物を相手にする仕事のため、日々のルーティーンを崩さずに世話をしなければいけないことに加えて、乳牛は毎日、朝夕2回の搾乳作業が欠かせないため、酪農家は1年中休みがとれないという状況にありました。
こういった事態を少しでも解消し、酪農家が定期的に休日をとり、ゆとりのある経営をつづけてもらうためにも、酪農ヘルパーが活躍しているのです。
上述のように、「酪農ヘルパー」は忙しい酪農家さんたちが休みを取れるように、彼らに代わって作業を行うお仕事です。
そう聞くと、アルバイトやパートと捉えられがちですが、実際は各々が組織に所属し、それぞれの組織に加⼊している酪農家の需要に応じて出役し、朝・⼣と⽜の世話をする、れっきとしたプロの職業なのです。
その仕事内容上、⾃ら酪農を始めるためのステップと考え、酪農ヘルパーになる⽅もたくさんいらっしゃいます。
酪農ヘルパーの仕事は、酪農家の皆さんが毎日行っている仕事で、大きく分けて以下の5つになります。
乳牛から生乳を搾る、最も基本的な仕事です。最初に軽く搾って生乳の色や性状をチェックした後、乳頭を消毒します。ミルカーという搾乳用の機械を使い、搾られた生乳は生乳処理室へ行き、バルククーラーで冷却されます。冷却された生乳は集乳車というタンクローリーに入れられて出荷されます。
酪農は、生乳という食品を扱っているので、牛舎は清潔に保つ必要があります。つなぎ牛舎ではほうきで隅々まで掃除するほか、牛の後ろ側にはバーンクリーナーというものが設置されており、排泄物はここに落とされ、牛舎の外のたい肥処理施設までコンベアーで運ばれます。掃除が終わると、消毒のために通路に石灰などをまきます。
掃除の時間が終わると餌の給与が行われます。最近は自動給餌機を使うところも増えているようです。餌は牧草と、トウモロコシなどの飼料がメインですが、牧草や稲わらを発酵させたサイレージを与えることもあります。サイレージは食欲の落ちる夏でも牛は喜んで食べてくれます。
乳牛が乳を出すのは子牛が生まれてからです。乳は出荷されるので、子牛には粉ミルクを溶かして与えます。子牛が収容される子牛ハッチも、子牛にとって良い環境になるように清掃します。
上記の4つの仕事のほかにも、牧草地や畑を持つ牧場では、牧草やトウモロコシを育てて収穫するのも大事な仕事です。牧草を育てるには、耕地を整備し、種まきをおこなわなければなりません。刈り取った牧草は、乾燥させてから、集めてロールにして保管します。トウモロコシを収穫する牧場では、トウモロコシを集めてサイロでサイレージとして発行させることにより、安定した餌となります。
酪農ヘルパーは上記のような酪農家の仕事をそのまま行う職業です。なかなか休めない酪農家が休むためにかわりに仕事をする酪農ヘルパーは、酪農家から大変感謝される仕事です。日本の食卓の必需品である、乳製品の大元となる酪農を支える「酪農ヘルパー」は、とても重要で、やりがいのある仕事なのです。
さて、そんなやりがいのある、酪農ヘルパーという職業ですが、みなさん気になるのは働き方やお給料ですよね。酪農ヘルパーの仕事形態は「専任ヘルパー」と「臨時ヘルパー」の2種類があり、働き方に違いがあります。
専任ヘルパーと臨時ヘルパーの違いをまとめた表は以下のとおりです。
※平成28年の調査、※働く日数や予約期間は酪農ヘルパー組合ごとにより異なる、※参考:酪農ヘルパー全国協会、※参考:東京ECO動物海洋専門学校ホームページ
専任のヘルパーは毎月決まった日数働きますが、臨時ヘルパーの場合は急にヘルパーを頼みたいときや専任ヘルパーが確保できないときに仕事を依頼されます。そのため、仕事の予定があらかじめ決めづらいとも言えます。ざっくり言うと、専任ヘルパーは酪農家をサポートするのが仕事ですが、臨時ヘルパーはその専任ヘルパーが足りないときにサポートするのが仕事です。
気になる給料ですが、酪農ヘルパーの1ヶ月間の給料は平均20万円~28万円ほどで、年収になると、賞与を含め320万円~480万円ほどとなります。
就職先により賞与の回数は年1回~4回とさまざまですが、平均すると2回ほどです。ただし、賞与が高めの就職先は、就業時間が長くなる可能性が高いです。
また、当然ではありますが、同じ就職先でも、都道府県や市区町村など勤務地により給料に差があります。就職先を探す場合は勤務地も考慮し、総合的に考えて選んでいくとよいでしょう。
酪農ヘルパーとして働くには、一定の年齢制限があり、一般的には、18歳以上が求められます。また、年齢によっては、保険に加入することができない場合があるので、その点についても確認が必要となります。
上限についての規定は特にありませんが、組織によって、雇用条件に加えているところもあり、だいたい18~45歳くらいまでの人が働いているようです。長期勤続を求めている組織は、上限を設けている場合もありますが、50歳以上の採用実績があるところも多く、年齢にかかわらず働きはじめやすい職業となっています。
酪農ヘルパーの就職先は、全国の酪農ヘルパー利用組合の求人を探すことで見つけることができます。酪農ヘルパー利用組合だけでなく、新・就農人フェアの合同説明会や農業関連のコンサルティング会社が求人募集をしている場合もあるので調べてみるとよいでしょう。特に、全国にある酪農ヘルパーの就職先は、生乳の生産量が多い北海道が全体の50%を占めています。
参考までに、「一般社団法人 酪農ヘルパー全国協会」のホームページでは、全国の酪農ヘルパーの求人を掲載しています。以下のURLからとべるので、興味のある方は是非ともチェックしてみてください。
株式会社山岸牧場は、循環型酪農を目指しながら、六次産業化と情報発信を積極的に行うことで、酪農をより身近に感じてもらう取り組みを続けています。
家族経営の強みを活かしながら、持続可能な酪農経営と地域社会への貢献を目指しています。
ノベルズグループの中核企業である株式会社ノベルズは、2006年の創業以来、持続可能な農業の実現に向けて様々なチャレンジを続けている畜産ベンチャーです。北海道・十勝地方を拠点に肉牛生産、酪農を大規模に展開。現在、北海道で12牧場、山形県で3牧場を経営しており、飼養頭数は約3万2,000頭と、全国有数の畜産企業へと成長しました。