酪農といえば牛乳ですが、スーパーやコンビニで買った牛乳が実は一般的な「牛乳」ではないかもしれないことを知っていましたか?牛乳の知られざる事実と牛乳を生産する酪農の実態。そして、日本の牛乳や乳製品の半分以上を占める酪農王国 北海道。その中でもNo.1の生産地帯「十勝」について紹介していきます。これを読めば、酪農と牛乳の多くを知れますよ!
酪農と言えば、多くの人は牛乳を連想するでしょう。スーパーマーケットの飲料コーナーを訪れれば、常に牛乳のパックを見かけますよね。多くの家庭で、冷蔵庫には常備されていると思います。けれども、牛乳と一口に言っても、そのバリエーションは驚くほど豊富です。そして、実は冷蔵庫に保管されているものが一般的な「牛乳」とは限らないかもしれません。
多くの人が「牛乳」という名前を聞いてイメージするものは、牛から採取された生乳を適切に加工したものです。正確な基準としては、乳脂肪分が3.0%以上、無脂乳固形分が8.0%以上でなければならないと規定されています。簡単に言うと、「乳固形分」とは牛乳の栄養成分全体を指し、そこから脂肪を除いたものが「無脂乳固形分」となります。
現代の飲料市場には、伝統的な牛乳だけでなく、さまざまなニーズに応えるための多種多様な牛乳が存在します。パックのラベルに「牛乳」と記載されていれば、先ほどの基準を満たすものです。しかし、「成分調整牛乳」や「無脂肪牛乳」のような他のバリエーションも目にすることでしょう。
牛乳のさまざまなタイプ「成分無調整牛乳」とは?「成分無調整」とは、そのままの生乳の成分をそのまま使って牛乳を製造しているという意味です。これは、公式な基準に基づくものではなく、製品の特徴を伝えるための表示として製造業者が採用しているものです。
「成分調整牛乳」は、特定の成分の比率を調整した牛乳のことを指します。これに対して、通常の「牛乳」は成分を調整していないものと言えます。そして、さらに脂肪分を減少させた「低脂肪牛乳」と、脂肪分をほぼ除去した「無脂肪牛乳」も選択肢としてあります。これらは、一般的な牛乳に比べて、独特の風味や栄養特性を持っています。
「生乳100%」は、文字通り、その製品が100%の生乳でできていることを示す表示です。しかし、それだけでは具体的なイメージがわきにくいかもしれませんので、先ほどの説明を踏まえて、より詳しく解説いたします。
牛から直接搾った乳のことを指します。この生乳は、そのまま消費されることもあれば、さまざまな乳製品の原料として利用されることもあります。
「生乳100%」と表示される製品には、異なる4種類のカテゴリーやタイプが存在します。具体的な4つの種類についての情報が欠けていますが、そのような表示がある製品は、加工をされていない、もしくは限定的な加工のみが施されている乳を指すことが多いです。
生乳だけではなく、脱脂粉乳やクリーム、バターなどの乳製品を加えて製造されるのが加工乳です。加工乳には脂肪分の量によって、低脂肪タイプと濃厚タイプがあります。
:脂肪分が1.0〜1.5%、無脂乳固形分が8.5〜10.0%の範囲に収まる製品。エネルギーは比較的低めですが、カルシウムの含有量は多めです。
脂肪分が4.0~4.6%、無脂乳固形分が8.5~10.5%の範囲。味わいにはコクがあり、脂肪やたんぱく質、カルシウムなどの栄養価も高い製品となっています。
これは生乳や乳製品を主原料として、ビタミンやミネラル、さらにはコーヒーや果汁などが加えられた製品を指します。乳固形分を3.0%以上含むことが必要で、栄養価を高めるためのミネラル分が増量された製品では、牛乳本来の味わいが保たれていることが多いです。
牛乳の風味について、種類の違いは理解しているかもしれません。しかし、産地によってもその特徴が変わること、知っていましたか?
牛乳の源となる乳牛は生き物。そのため、品種や与えられる餌、飼育条件、地域や季節、そして年齢など、多岐にわたる要素が生乳の質に影響を与えます。乳脂肪や無脂乳固形分といった成分も、乳牛ごとに異なることがあります。そして、牛乳の加工方法も、最終的な風味に差を生む要因となります。
飼育地域の違いから生じる最大の変数は、餌の種類です。草やその加工品を餌とする場合、その草の繊維が乳脂肪の生成に貢献します。
一方、トウモロコシや大豆、大麦などの穀物が主食の場合、タンパク質やデンプンが乳の成分に影響を与えます。
飼育地の気候も、牛乳の特性を変える要素として無視できません。ホルスタイン種は、元々寒冷な地域での飼育が得意です。しかし、高温には弱いため、気温が25℃を超えるとヒートストレスを感じ、その結果、飲水量が増え、脂肪分が減少する傾向があります。そのため、寒冷な地域、例えば北海道では、酪農が栄えています。
多くの人が牛乳を飲むことは日常的ですが、その製造プロセスを理解している人は少ないかもしれません。「酪農」とは、乳製品を生産する農業のことを指し、この分野では乳牛の飼育から生乳の採取、最終製品への変換までが含まれます。そして、酪農家が生産した生乳をさまざまな乳製品として市場に供給するのが「乳業」の役割です。
では、酪農とは何でしょうか。
酪農とは、乳用牛を主に育て、牛乳やチーズ、ヨーグルト、バターなどの乳製品を製造する畜産の一部門を示します。畜産におけるさまざまな活動の中で、この特定の牛乳や乳製品製造に注力している部門を、酪農として明確に識別しています。
農林水産省によれば、2023年2月現在の統計データとしては、日本の乳用牛の飼養戸数は1万2,600戸で、前年に比べ700戸(5.3%)減少。乳用牛の総数は135万6,000頭で、前年に比べ1万5,000頭(1.1%)減少したそうです。この結果、1戸当たり飼養頭数は107.6頭で、前年に比べ4.5頭(4.4%)増加しました。
これに対して、肉用牛の育成農家数は3万8,600戸で、前年に比べ1,800戸(4.5%)減少。頭数は268万7,000頭で、前年に比べ7万3,000頭(2.8%)増加しました。
興味深いことに、1軒あたりの牛の数では、乳用牛の方が肉用牛よりも多いことがわかります。
ちなみに、牛乳の生産を目的とした農業活動を指す「酪」は、乳から製造される飲料や食品のことを指します。酪農のサイクルは、子牛の誕生から始まります。2ヶ月の哺乳期間を経て、子牛は成長し、妊娠可能な体重に達するまで飼育されます。その後、人工授精が行われ、子牛の誕生を迎えるまで丹念にケアされます。子牛が生まれた後、初めて牛乳が生産されるようになります。
毎日の乳の生産は20~30リットル程度。この量を維持するためには、酪農家は絶えず牛の健康や環境を見守らなければなりません。酪農は、多くの献身と努力を必要とする仕事です。私たちが牛乳や乳製品を楽しむとき、背景にある酪農家の努力を感謝しつつ楽しむべきでしょう。
約2300年前の日本(弥生の時代)には、アジア大陸からの移住者が家畜としての牛を持参したとされています。当初は農地の耕作や物資の運搬の手助けとして活用されていました。
そして、明治期を迎えると、海外からさまざまな種類の牛が導入され、それ以降、肉や乳の生産に活用されるようになりました。ちなみに、酪農の歴史が始まった場所として、千葉県の南房総が挙げられ、「酪農のルーツ」として知られています。
北海道は、酪農業の中心地として知られています。この地域の広大な平原と牧場は、北海道が酪農業のメッカであることを物語っています。2020年における北海道の生乳生産は驚異の415万トンを超え、日本国内での生申生産の約半分を占めるほどです。この地はまさに「酪農の中心」と言えます。
北海道の酪農業は、他の地域を圧倒しています。この地の広さは、日本の総面積の約20%に相当し、九州の2倍以上もあります。この広大な土地を最大限に活用して、北海道は日本の酪農のリーダーとしての地位を築き上げました。
数値からも、北海道が農業の大国であることが明らかです。北海道には日本全体の農地の約1/4があり、その食糧自給率はカロリーベースで200%以上にも及ぶのです。そのため、畑や牧場の面積も広大で、東京ドームに例えると100万以上の数に相当します。
前述した通り、2020年のデータによれば、北海道の生乳生産は415万トンを超え、日本の生乳生産のほぼ半分を占めていることがわかります。このことから、多くの日本人が摂取する牛乳やバター、チーズの原材料の大部分が、この地から供給されていることが理解できます。詳細な数値やデータは別の記事で取り上げられています。
では、なぜ北海道の酪農がこれほどまでに発展したのでしょうか。実は、北海道の酪農の歴史はそれほど長くありません。北海道は明治時代から開発が進められ、その後酪農業が導入されて成長しました。
一方、世界的には、酪農業の起源は非常に古く、人類が狩猟から農耕に移行した頃から始まったとされています。日本においては、千葉県南部に始まったと言われています。
明治時代には、北海道根室に柳田藤吉氏が大規模な牧場を設立し、これが北海道の酪農発展の基盤となりました。さらに、米国から招かれたホーレス・ケプロンやエドウィン・ダンなどの専門家たちの助言により、北海道の酪農業はさらなる発展を遂げました。彼らの指導のもとで、多くの民間投資家が牧場を開始し、大手乳製品メーカーが次々と北海道に進出するきっかけとなりました。
北海道における酪農の成功は、特に道東の地域、例えば十勝や釧路の活動に支えられています。この地域の広々とした土地は、酪農の展開に理想的で、北海道の各地に酪農の文化が浸透してきました。北海道内でも気候や地質の違いから、酪農の特性や最適な地域が異なります。道北・道東の冷涼な環境は、牛乳や乳製品の生産に適しています。
道東地域は、根釧台地として知られる火山灰による地形を持っています。この地域の土壌は水分を保持するのに向いていないため、一般的な農作物の栽培は難しいですが、牛に適した涼しい気候を持つため、乳製品の生産に利点があります。
十勝は、北海道の酪農の中心地として、大きな役割を果たしています。この地域の農業の多様性は、「日本の食の中心地」とも称されるほどです。実際に、十勝の食料生産の能力は、北海道の全体の自給率を大きく後押ししています。
十勝は、牛の飼料としての牧草やデントコーンの栽培に適しており、これが北海道の酪農生産の大部分を形成しています。特に、十勝地域の生乳生産の寄与は大きく、北海道の酪農を代表する存在となっています。
いかがでしたでしょうか。牛乳のホントの話。酪農の実情。そして、北海道・十勝の酪農の凄さがわかったのではないでしょう。それを裏付ける証として、十勝には大規模酪農会社が数多くあり、酪農業でありながら、現場スタッフのみならず、総務、人事、法務、広報、ITなどなどあらゆる職種で募集しています。