保育士は、子どもの命を預かるだけでなく、子どもとかかわりながらも事務仕事や保護者対応などの仕事も並行してやらなければならないとても大変な仕事です。本当に頭が下がります。しかし、保育士の仕事には、そんな大変さを上回るほどのやりがいと魅力があるのだと思います。今回は、子どもや保護者との関わり、そして日々の仕事の中にどんな魅力があるのか、どんなことにやりがいを感じるのか、保育士の方々の声をご紹介します。
保育士をしていて最も嬉しい瞬間と言ってもいいのが、やはり子どもの笑顔が見られたときでしょう。特に、自分の存在や設定した保育が子どもの笑顔を引き出せた瞬間は大きなやりがいを感じられます。子ども好きな人にとっては、こんなにもたくさんの子どもの笑顔が間近で見られるようなうれしい職業はないでしょう。
日中のほとんどの時間を保育園で過ごす子ども達にとって、保育士さんは家族の次に安心できる存在です。
子ども達から「〇〇先生大好き!」と言ってもらえたときや、「〇〇先生~!」と自分の元に駆け寄ってきてくれたときなど、それまでの苦労が報われるような心持がすることでしょう。また、クラスの担任になると、自分のクラスの子ども達は特別に可愛く感じます。そして、子ども達にとっても、どんなにベテランで子どもの対応が上手な保育士よりも、担任の先生は特別な存在なのです。
さらに保育士さんならではのよろこびとして、「子どもの成長を感じられる機会が多いこと」が挙げられるでしょう。
子どもたちの成長はとても早く、特に乳児期の子どもの場合は目まぐるしい早さで成長します。寝返りやハイハイ、つかまり立ちや一人歩き、おしゃべりなど子どもたちの大きな成長を近くで感じられるのも保育士の仕事の魅力です。
また、幼児期になると、特に精神面での成長を感じる場面が多くあります。子どもたちの成長を間近に感じられるのは、保育士にとって大きなやりがいでもあり、楽しみにもなることでしょう。
幼稚園よりも子どもたちと過ごす時間が長い保育園は、保護者の方との距離が近くなります。保育士さん方は、送迎のタイミングや連絡帳でのやりとりなどで保護者との信頼関係を築く機会があります。そんな中で、保護者の方々からの感謝の言葉をもらえれば、日々の苦労が報われたことを感じられるでしょう。
また、保護者の方からの感謝は、保育士さんにとって一つの指標となります。つまり、日々の頑張りや子どもたちへの対応に関して、感謝やねぎらいの言葉をかけてもらうことで、自分がやってきたことが間違っていなかったと思えるかもしれません。
日常でのやりがいはもちろんですが、保育園での毎日の節目となるような行事に参加できることも大きな楽しみの一つとなるでしょう。保育士さんの中でも運動会や発表会で子どもたちが一生懸命に取り組んでいる姿を見て感動した、という声はやはり多いようです。子どもが何度も練習して頑張っている様子を見られるのは保育士さんの特権ともいえるでしょう。
保育士の仕事をしていて、大きな節目となるのは、やはり卒園式でしょう。卒園式に立ち会うとき、子どもたちの成長や園で過ごした思い出がよみがえってきて、「保育士をしていてよかった!」と強く感じられる保育士さんはとても多いです。なかには思わず泣いてしまう保育士さんもいるようです。卒園という節目を迎えて、達成感を感じることもできるでしょう。
保育園で働き続けていると、卒園して大きくなった子どもが保育園に遊びに来てくれるといううれしいサプライズもあります!
保育園に通っていたときには、あんなに小さかった子どもの立派に成長した姿が見られた瞬間は保育士冥利に尽きます。この喜びを感じられるのは、保育士を続けてきたからこそのご褒美です。保育園時代を思い出しながら、子どもや保護者と思い出話に花を咲かせましょう。
子どもたちだけでなく、同僚たちとのかかわりの中でもやりがいを感じられるという人も多いようです。例えば、自分が作ったお便りや書類を先輩保育士に褒められたり、会議で提案した保育や行事内容が採用されたりなど、一つひとつはささいなことでも、周りに認められるということはやりがいに繋がりますよね。
また、同僚たちとの連携が感じられる瞬間もやりがいを感じるときとして挙げられるそうです。職員同士がよい雰囲気の中で互いに信頼し合いながら仕事ができていると、やりがいを感じることも多いでしょう。
日々の保育の中で感じるやりがいや魅力もたくさんあるのですが、それと同時に社会に貢献していることを感じられるのも保育士の仕事の大きな魅力です。まず、保育士は、子どもの成長にとって重要な幼児期に関わることができる仕事です。子どもの成長にとって、幼児期の大人との関わりは重要な意味を持ちます。子どもの成長を担っていると考えると責任の重い仕事ではありますが、それだけやりがいにあふれた仕事だということでもあります。
また、働く保護者にとって保育園はとても重要な場所です。働く保護者のサポートをすることで、社会貢献ができることは大きなやりがいになるでしょう。加えて、場合によっては家庭で子育てをしているけれど育児に悩む方の手助けができるということもあります。
保育には常に悩みがつきものです。「あのとき、あの子への対応は適切だったのだろうか」といった悩みや後悔を抱くことが、毎日のようにある人もいるかもしれません。しかし、だからこそ、保育士の仕事は常に成長できるものだとも言えます。
常に悩み続けることで保育の幅は確実に広がっていっているものです。自分ではなかなか自分の成長を感じることはできないかもしれませんが、子どもの姿や後輩の成長に自分自身の成長を感じられることもあるのではないでしょうか。例えば、幅広い年齢の子どもに対応できるようになったと感じられることもあれば、よりわかりやすく、大きな仕事を任されたり、さらには、役職を得たりすることもあるでしょう。
役職を得ることで、より責任ややりがいのある仕事内容になるだけでなく、当然給与や待遇のアップも見込めます。園長や副園長、主任や副主任、専門リーダー、分野別リーダーといった役職を設けて、保育士の処遇を改善することは、国が保育士の確保を目的に行っている処遇改善の取り組み(処遇改善等加算Ⅱ)によって明確に定められています。
さて、保育士のやりがいについて説明してきましたが、保育士とはどのような仕事かの想像はつきやすいですが、具体的に保育士とは何なのかについてはあまり知らない方もいらっしゃるのではないでしょうか。特に、幼稚園の先生の違いについてはよくわからない人も少なくないのでは?
というわけで、資格や目的、働く場所など、保育士と幼稚園教諭の制度上の違いを4つの観点から解説しましょう。
保育士になるためには、厚生労働省管轄の保育士資格が必要です。幼稚園教諭になるために必要なのは幼稚園教諭免許で、管轄は文部科学省となっています。保育士資格は児童福祉法にもとづく国家資格、幼稚園教諭は教育職員免許法にもとづく教員免許という違いもあります。
保育士は保護者に代わって子どもたちを保育し、基本的な生活習慣などを教えることを目的としており、福祉関係の仕事として位置付けられています。一方、幼稚園教諭は、小学校就学に備えて、年齢に応じた教育や指導を行うのが主な目的です。つまり、幼稚園は「学びの場」で保育園には「生活の場」なのですね。
保育士と幼稚園教諭、いずれも小学校就学前の子どもを預かる仕事ですが、幼稚園教諭は満3歳以上の子どもを対象とするのに対し、保育士は0歳児から保育を受け持つことになります。
保育士資格を持っている場合は、保育園をはじめ、乳児院、児童養護施設など、子どもを保育するためのさまざまな施設で働けます。一方、幼稚園教諭の主な就業場所は、公立・私立の幼稚園となっています。
保育士の仕事のやりがいについてご紹介してきましたが、それでもやはり保育士さんとは大変な仕事です。ここからは翻って、保育士の仕事で苦労する点を紹介していきます。
ひとつは、幼児と接する責任の重さです。子どもは大人と比べて体が弱いため、ちょっとした保育士の不注意が大きな事故につながることもあります。しかしながら、どんなに気をつけていても、転倒したり、扉に手を挟めてしまったりと子どもたちの怪我を防げないことも多々あります。
また、仕事量の多さ、それに比例して、体力が必要になる点も挙げられます。保育士は子どもたちと関わるだけでなく、指導計画や壁面制作、係の仕事などとにかくやることがたくさんあり、勤務中に業務が終わらなかった場合は、持ち帰って仕事をすることなどもあるようです。さらには、子どもを抱きあげたり、元気な子どもたちと走り回ったりと、保育士さんはとにかく体力勝負の仕事でもあります。日々の忙しさの中でも、元気に子どもたちと関わるためには、“体力づくり”と“体調管理”が必要になってくるという、とても大変なお仕事なんです。
そんな大変な仕事である保育士さんですが、気になる給料はどうでしょうか。
まず、平均で言うと、令和3年度の保育士の平均年収は382万円となっています。内訳として月給25.6万円、賞与(ボーナス)74.4万円です。幼稚園教諭の平均年収は382.2万円となっており、大きな差はありません。
女性一般労働者の平均賃金の約25.3万円(令和3年)と比べると、必ずしも保育士の給与水準が高いとはいえないかもしれません。さらに男女合計の平均賃金と比較すると、平均を下回ってしまいます。しかしながら、業種や役職などによる様々な違いもあるので、保育士だけが低いというわけではありませんし、保育士のなかでも平均賃金を超えている人もいます。
また、保育士は国家資格の必要な、保育の専門職なので、一度資格を取得してしまえば、結婚や出産などのライフイベントによっていったん職場を離れても、復帰できる可能性が高い仕事の一つです。実際、一度職場を離れた後に、パートや臨時職員として復帰する人も少なくありません。
さらに言えば、保育士の平均年収は10年間で50万以上上昇しており、給与・年収は上昇傾向にあると言えます。今後も必ずしも上がるとはいい切れませんが、国や自治体は保育士のさらなる処遇改善を進めており、保育士は給与面でも将来性のある仕事と考えられるでしょう。
保育士の仕事は大変な上に、給与水準も高いとは言えないのが現状ですが、一方で、子どもたちや、保護者の方々、同僚たちなどといった幅広い関係性の中で、自分なりの成長や喜びを実感することのできる職業です。加えて、その必要性の高さや労働条件が見直されていることもあり、今後、給与の上昇をはじめとした、さらなる労働環境の改善が見込める職業でもあると言えるでしょう。