「日本語の勉強は難しいけれど、少しずつ理解できるようになってくるのを実感するのが楽しい」
そう話すプラティクシャさんは、ネパールから茨城県での暮らしを経て、この春北海道・十勝へやってきました。
現在は「元気の里とかち」「グループホーム 奏~かなで~」で働きながら、介護と日本語の勉強に励んでいます。3ヶ月を迎えたばかりの新しい環境で、仕事とまっすぐに向き合う彼女の心境をお聞きしました。
シュレスタ・プラティクシャさん
2004年生まれ。ネパールのグルミ郡出身。家族の介護経験を通して高齢者ケアに関心を持ち、日本で介護職として働く道に挑戦。ネパールで日本語を学んだ後、来日し茨城県で生活をスタート。現在は十勝の介護施設で日勤や遅番を担当しながら、介護福祉士の資格取得を目指した勉強も進めている。好きな食べ物はみそラーメンと餃子。趣味は掃除。
プラティクシャさんが日本に関心を持ったのは、東京への憧れがきっかけでした。「街並みがとても美しくて、いつか暮らしてみたいと思っていました」と話します。
同時に、自身の祖母の身の回りの世話を手伝っていた経験が、人を支える介護の仕事への興味へと繋がっていきました。日本への憧れと、介護職への関心が徐々に重なっていったといいます。
ネパールでは、カトマンズの日本語学校で1年間学習。日本語を学ぶ過程では、とくに「漢字を覚えるのが難しい」と感じたのだとか。
来日してからは茨城県の専門スクールでも1年間、日本語を猛勉強し、実務に対応するための語学力を培っていきます。努力の甲斐あって2025年4月から北海道十勝で、念願だった介護の現場で働けるようになりました。
現在プラティクシャさんは、早番・遅番勤務を担当しています。
早番の日は朝7時に出勤し、利用者さんの朝食準備から一日が始まります。食事の配膳、歯磨きやトイレの介助、健康チェック、昼食づくりなど、多様な業務に取り組んでいます。
「朝は早いけれど、得意です。早起きは苦じゃありません」と、はつらつとした表情でプラティクシャさんは語ります。
遅番の日は13時に出勤。シーツ交換や清掃、夕食の配膳と介助、就寝前の準備などを担当し、勤務が終了するのは夜22時です。夜遅くに徒歩で帰宅すると聞き、不安はないか尋ねたところ「家は職場から2分なんです」とのこと。
「元気の里とかち」では、生活の安全面への配慮が行き届いており、職場から近い住宅を紹介してもらえます。プラティクシャさんも慣れない土地で安心して働き、暮らせている様子がしっかり伝わってきました。
「利用者さんとお話しする時間がとても好きなんです」と、プラティクシャさんは嬉しそうに話します。
忙しい業務の合間に交わす利用者さんのちょっとした会話が、介護の仕事にやりがいを感じる瞬間でもあるそうです。「困っていることはありませんか?」と明るく声をかけながら、少しずつ信頼関係を築いていくように心がけているといいます。
日本人のスタッフも親切な方ばかりで、困ったときには気軽に相談できるとのこと。言葉に詰まることがあっても、やさしく待ってくれる方が多く、働くうえで不安を感じることは少ないそうです。
現在プラティクシャさんは、介護福祉士の資格取得に向けて、eラーニングによる学習を始めています。今は「エリアアセスメント」という分野に取り組み始めたばかりです。
エリアアセスメントとは、利用者さんが暮らす地域や住環境の情報を把握し、適切な介護サービスを計画するための基礎となるもの。内容はまだ難しいと感じることもありますが、「この地域で、どんな介護ができるか」を考えるきっかけになっているようです。
日本語の勉強も並行して続けています。もっと利用者さんと自然に会話できるようになりたいという思いが、学び続ける原動力になっています。
「難しいけれど、勉強は好きです」
そう語るプラティクシャさんの姿からは、前向きな努力が着実に自身の成長へとつながっている様子が伝わってきます。
仕事に勉強にと、多忙な毎日を送るプラティクシャさんに、十勝で見つけた楽しみについて聞いてみたところ、次のように答えてくれました。
「春に十勝へ来てから、もっとも心に残っているのは、公園で見た桜です。どこの公園に行ったのかまでは覚えていないんですけど、とても色がきれいでした」
ネパールの桜とは違った色をした、北海道の桜の美しさが心に残っているのだとか。
日本の食文化にも満足しているとのことで、お気に入りはみそラーメンとカレー。日本のカレーとネパールのカレーは作り方も味もずいぶん違いますが、どちらも同じくらい好きだと笑顔で話してくれました。
「日本語は大切。でも、完璧じゃなくても大丈夫ですよ」
これから日本で介護の仕事を目指すネパールの仲間たちに向けて、プラティクシャさんはそう語ってくれました。
「“助けてください”って言えば、ちゃんと伝わります。みんな親切な人ばかりです。怖がらずに挑戦してほしいです」
自身の経験を通じて、介護の仕事に一歩踏み出そうとする仲間たちの背中を、やさしく押すプラティクシャさん。その穏やかな笑顔と前向きな言葉には、未来への希望がにじんでいました。