もっと広い世界を見たい―。幼い頃から抱いてきた憧れを胸に、ネパールの小さな町・ミャグディから旅立ったアルマジャ・プン・ジェニさん。「日本は安全で、人も優しい“夢の国”だと思っていました」とほほ笑む彼女は、今、十勝で利用者さんと寄り添いながら、確かな歩みを刻む。社会福祉法人「元気の里とかち」のあたたかな風土に支えられ、国境も文化も越えて咲き始めた“介護の夢”。その一日と未来図をのぞいてみてください。
「地域に根ざした福祉を創るために」をコンセプトに、帯広市・音更町・更別村と連携を図り福祉事業を展開。高齢者や認知症患者のためのグループホーム、多機能ホーム、地域密着型介護老人福祉施設、小規模多機能型居宅介護事務所、サービス付高齢者向け住宅などを開設する。
アルマジャ・プン・ジェニさん2003年生まれ。ネパール・ミャグディ出身。高校卒業後、日本語学習に専念。2024年4月に来日し、千葉県で1年間、介護と日本語を学ぶ。2025年4月、社会福祉法人 元気の里とかち入職。現在はグループホーム「清流の里」で介護職員として勤務。趣味はインド映画鑑賞とラーメン店めぐり。
「名古屋で働く姉から、日本人はとても親切だと聞いていたんです。いつか行ってみたい―その気持ちがずっと消えませんでした」
高校時代はビジネスマネジメントを学んでいたというジェニさん。しかし、家族の世話を手伝ううちに“人の役に立つ仕事をしたい”という想いが芽生え、介護の道を志します。
来日後は千葉のさくら日本語学校で1年間、日本語と介護の基礎を徹底的に吸収。介護福祉士養成課程の授業では、身体介助や認知症ケアの座学に加え、ロールプレイ形式の実技にも意欲的に取り組みました。
2025年春、北海道十勝へ。初めて訪れた帯広の印象を「静かで空気が澄んでいて、すぐに好きになりました」と振り返ります。
「元気の里とかち」を選んだ決め手は“人のあたたかさ”。スタッフ同士が自然に助け合う優しい雰囲気でした。実際に働き始めてみると、先輩たちは業務の合間に丁寧な日本語を教えてくれたり、わからない漢字をメモに書いてくれたり―小さな気遣いの連続が、不安な心をそっとほどいてくれたといいます。
「ベトナム人の同僚とは、お互いの母国料理をつくって交流することも。肉と鶏肉のスパイスカレーは美味しいですよ」の言葉からエスニックな香りが広がりました。
言葉も文化も異なる仲間が集うからこそ、多彩な“おいしい”と“たのしい”が生まれる。そんな国際色豊かな日常が、利用者さんの笑顔をさらに彩っています。
「介護は、人の生活そのものを支える責任ある仕事。大変だけど、ありがとうと言ってもらえた瞬間、疲れが吹き飛びます」
利用者さんと接するときに意識しているのは「相手のペースを尊重すること」。ことばが通じにくい場面では、ゆっくりした口調と笑顔で安心感を届けるそう。
生活面で苦労したのは、十勝独自のゴミ分別ルール。「最初は戸惑いましたが、イラスト入りの案内を見ながら覚えました」。一方、仕事終わりや休日にはオンライン講座で日本語を勉強。目標は日本語能力試験N2取得です。
「WEB研修で介護技術の動画も見ています。夜勤にも挑戦したいので、今は体力づくりも頑張っています」
ジェニさんの次なるステップは、国家資格である介護福祉士の取得。
「母国で介護をした経験が、私の原点。資格を取って、もっと専門的に利用者さんを支えたいです」
利用者さん一人ひとりの“その人らしい暮らし”を守れる介護福祉士へ―。夢の続きは、十勝の地から静かに、しかし力強く動き出しています。
「日本の介護はとてもやりがいがあります。スタッフも利用者さんも親切で、安全な環境です。勇気を出して一歩踏み出してください。ここには、あなたを助けてくれる人がたくさんいますよ」
異国での挑戦は決して平坦ではない。それでも、笑顔と感謝の言葉が、すべての努力を報いてくれる――。
国境を越えて芽吹いた“やさしさのタネ”は、今日も十勝の空の下で確かな花を咲かせています。
社会福祉法人 元気の里とかち
住所:〒080-0871 北海道帯広市清流東4丁目4番地10
電話:0155-66-6230(9:00~18:00)
URL:https://genkinosatotokachi.jp/
E-mail:info@genkinosatotokachi.jp