シュレスタ・ビニタさん
2002年生まれ。ネパール・カトマンズ近郊の「オカルドゥンガ」出身。家族の介護経験を通じて高齢者のケアに関心を持ち、日本で介護職として働く道に挑戦。ネパールで日本語を学んだ後、来日して茨城県で生活をスタート。現在は北海道十勝の介護施設で日勤や夜勤をこなしながら、介護福祉士の資格取得を目指して勉強中。好きな食べ物はみそラーメンと餃子。趣味は掃除と洗濯。
「家では私のおじいちゃんやおばあちゃんのお世話をしていました。その時、人の面倒を見ることが自分に向いているように感じたんです」
介護の道を志したきっかけについて、ビニタさんはそう振り返ります。
ネパールでは高齢者のケアを、家族が行うのが一般的です。身近な介護を通して、人の役に立てる喜びや、誰かを支えることへのやりがいを自然と感じてきたといいます。
「日本は私の夢だった」と、まっすぐな言葉で語ってくれたビニタさん。美しい街並みや文化に長年関心を寄せており、“日本への憧れ”と“介護を仕事にしたい”という願いが重なって、日本で働くことを決意しました。
最初に相談したのはお兄さん。「日本で働きたい」と素直な気持ちを伝えると、迷わず背中を押してくれたそうです。その後、ネパールの日本語学校に通いながら、夢の実現に向けて一歩ずつ準備を重ねていきました。
2024年4月の来日直後は茨城県で暮らしながら、日本語の専門スクールに通っていたビニタさん。「学校が終わったらすぐアルバイトに行っていました。最初のうちは体力的にも大変でした」と当時の生活を振り返ります。
アルバイト先は回転寿司店。日本語で交わされる注文を正確に聞き取り、素早く寿司ネタを乗せていく作業は、日本語を瞬時に理解する力を養う、トレーニングの場でした。
また、日本の食文化を肌で感じる経験でもあり、ときにはその体験が、介護現場での利用者さんとの会話にも活かされています。
茨城県から北海道・十勝へと拠点を移し、現在の職場「奏~かなで~」で勤務を始めて約3ヶ月。日勤や遅番といった異なる時間帯のシフトに対応しながら、利用者さん一人ひとりと丁寧に向き合う日々が続いています。
【日勤の流れ】
9:00出勤→入浴介助→お茶の準備~ 昼食の準備 → 食事介助 → 片付け → 排泄・歯磨きの介助 → 夕食準備(味噌汁・お茶づくり)→ 食事介助 → 片付け → 退勤
【遅番の流れ】
13:00出勤→ お茶の準備(とろみづけ対応)→ 掃除 → 夕食準備・配膳 → 食事介助 → 歯磨き・排泄 → 洗濯物干し・片付け・夜間巡回 → 退勤
「今は、だいたいの仕事ができるようになってきました」
業務の流れを思い出しながら語るビニタさんの表情には、仕事への自信がにじみ出ていました。
わからないことがあっても、日本人スタッフがやさしく教えてくれるそう。何度でも理解できるまで丁寧に説明してくれるため、安心して働けているそうです。
最近では夜勤(22:00〜翌7:00)にも挑戦。新たな勤務形態にも、少しずつ慣れてきているといいます。
掃除や洗濯、排泄介助や食事のサポートなど、日々の業務は多岐にわたりますが、ビニタさんは「どの仕事も好きです」と、自然な笑顔で語ります。
「利用者さんと話す時間も楽しいし、掃除も好き。ピカピカになると気持ちがいいんです」
休みの日にも掃除をするのが好きだというビニタさんにとって、介護の仕事は“人と関わる喜び”だけでなく、“暮らしを整えることの充実感”も感じられる仕事。利用者さんが安心して暮らせるよう支える日々に、ビニタさんは確かなやりがいを見出しているように感じられました。
現在のビニタさんの目標は「介護福祉士」の国家資格に合格すること。eラーニングを活用しながら、資格取得の勉強と日本語学習を並行して進めています。
「言葉や漢字がまだ難しいけれど、頑張っています」と力強く語るビニタさん。
介護の専門知識を深めるには、日本語のさらなる理解が不可欠です。日々の学びを積み重ねることが自分の力になると信じ、空いた時間を見つけては、コツコツと努力を続けています。
そんなビニタさんの原動力になっているのが、もうひとつの大きな夢。
「将来は、ネパールでまた家族と一緒に暮らしたいと思っています」
そのまなざしからは、遠く離れて暮らす家族への深い愛情が伝わってきました。
現在、ネパールも日本と同様に高齢化の問題を抱えつつありますが、施設介護はまだ広く普及していません。そんな中で、ビニタさんが日本で積み重ねている学びや経験は、やがて祖国に戻ったとき、大きな力となって誰かを支える糧になるでしょう。
最後に、これから日本を目指すネパールの仲間たちに向けて、ビニタさんからメッセージをもらいました。
「日本語の勉強は大変だけど、頑張ってください。介護の仕事はとても楽しいです。利用者さんと話すことも、毎日の仕事も、きっと好きになれると思います」
ひとつひとつの経験を大切に積み重ねながら、まっすぐに歩みを進めるビニタさん。そのひたむきな姿は、ふるさとの未来を照らす光となっていくように感じられました。