「Uターン就職」って聞いたことありますか?都会の喧騒から故郷の落ち着きへ、あるいは新しい地方の魅力を求めて…。コロナの影響で、このUターンやIターンっていう選択がブームになっているんです!とある調査では、23卒~26卒の学生の半分以上が、地方就職に興味を持っていることがわかったんです。でも、地域によっては、なんで選ばれないの?ってところも……。地方の“まち”のみんなは、もっと自分たちの魅力をアピールする必要があるかも。選ばれるまちになるためのアクションが、これからのキーワードになりそうですね!
今、コロナ禍をきっかけにして、Uターン&Iターン就職の波が来ているのはご存じでしょうか。株式会社インタツアーによる、23卒~26卒学生を対象とした調査によると、地方就職を選択肢に入れている学生は52.7%にのぼり、「 Uターン・Iターンどちらも視野に入れている」学生が最多、という結果となっております。
背景には、コロナ禍によってリモートワークが広がり、都会に住む意味が薄くなったこと、生活費の高い都会よりも、安心できる地元で生活することを望む人が増えてきたこと、などがあげられます。良くも悪くもコロナ禍によって社会が変化したことにより、都会から地方へ目を向ける動きが強まっているのです。
けれども、地方には仕事がない、給料が低い、福利厚生も十分でないといったマイナスイメージがどうしてもあります。みなさんの中にも、こうした考えを持つ人は少なくないのではないでしょうか。しかしながら今では、地域企業の求人数は過去最高水準にあり、募集条件も良くなっていると言うことができるのです。
ひとつには、円安傾向が続いたことで、かつて海外に移転した工場が日本の地方都市に戻ってきていることがあげられます。そうした工場では、現場の社員のほか、製品開発や生産管理にも優秀な人材が必要となり、それに見合う待遇を用意しているのです。
また、大企業による地域企業のM&Aも増加してきていることもあげられます。そうした場合、勤務体系や給与、福利厚生など様々な面での制度やシステムが大企業並みにグレードアップされていることが期待できます。
そして、地域企業の多くは後継者問題を抱えていることも重要な点でしょう。そうした場合、例えば都会の大企業などで経験を積んだ後継者が後を継いだとき、新陳代謝を図るために、人材採用に力を入れることになるでしょう。そのときにはよい待遇で雇用されることが予想できます。
全国21000人を対象に今年1月に実施した「関係人口の意識調査2023」によると、47都道府県の出身者で、最もUターン意欲が高いのは沖縄県となりました。また、2位は前年1位の福岡県、3位は熊本県、4位は京都府、5位は神奈川県、となっております。このような結果にはどういったことが関係しているのでしょうか。
クリエイトによる、全国のUターン・Iターン(以下、U/Iターン)をして地方就職している20代~40代の男女500名を対象に行われた「Uターン・Iターンによる地方就職事情調査」によるとUターンをしたきっかけについては、「住み慣れた土地で働きたい(37.4%)」が最多で、次に「実家から通勤したい(19.5%)」という回答が多く、地元の居心地の良さを理由にUターン就職を決めた人が多いことが窺えます。
つまり、Uターン意欲の高い「ふるさと」は、出身者にとって居心地の良い環境であることが予想できますね。これは一見当たり前に感じられるかもしれませんが、人口を少しでも増やしたい地方自治体にとって、まちの外の人々だけでなく、今住んでいる人々の充実度にも目を向けることも重要なのだと言えるでしょう。
一方で、地方移住が増えてもなかなか選ばれづらい「ふるさと」もあります。先ほどの「関係人口の意識調査2023」によれば、意欲度ランキングのワーストは、新潟県、福島県、鳥取県、奈良県、富山県、の順になっております。
再び「Uターン・Iターンによる地方就職事情調査」によると、地方就職に不安を抱えていた8割の人の中で、「不安に思っていたこと」の項目では、各年代とも「給料が少ない」に票が集まり、年代ごとの約半数もの人が給料の低さを不安視していたことが明らかになりました。また、若い世代である20代においては30代・40代に比べて「職場で人間関係を上手く築けるか(38.9%)」や「企業の知名度が低い(30.6%)」という点を不安に思う人が多いこともわかりました。
このように見ていくと、地方就職への不安を解消するには、まずは給料面ですが、次いで企業の体質においてアピールしなければならない点が多いように思われます。
例えば、職場の雰囲気をうまく伝えたり、全国的な知名度は低くとも、都会の企業と比べたときに負けない、あるいは、都会から見ればむしろ新鮮に見えるような、地方ならではの価値や利点をいかにアピールできるかがカギになってくると言っていいでしょう。
Uターン就職はコロナ禍によってにわかに追い風が吹き始めましたが、いずれはまたコロナ前に収束していくことも考えられます。今こそ、地方の自治体と企業が一丸となって、都市圏とは違った新しい価値を作り出していく、これ以上ないタイミングとなっているのではないでしょうか。
かつての大樹町は、60年代に人口1万人以上を擁していましたが、20年の間に2,000人ほどが減少。しかし、大樹町は宇宙関連のプロジェクトに取り組み続け、2004年には、無人の飛行船を使用した「成層圏実験」が開始され、08年には、町と宇宙研究組織JAXAが連携を強化しました。そして、2019年には、地元のIST(インターステラテクノロジズ)がロケット打ち上げに成功しました。
同時にロケットの発射場周辺には、様々な施設や観光スポットが計画されており、北海道に、宇宙版シリコンバレーをつくる!を合言葉に、アジア初の民間にひらかれた宇宙港「北海道スペースポート」は、その可能性を現実に近づけています。
北海道スペースポートを開発・運営するスペースコタンの小田切CEOは地域経済に大きな影響を及ぼすことができると信じており、国内外の宇宙関連企業に積極的に大樹町の魅力を伝えています。
夢だった「宇宙」への実現力と将来性に期待し、まちには人が押し寄せ、ついには、人口増加に至った大樹町はまさに「選ばれるまち」。
大樹町に人口増の理由を聞きました。すると「移住住者の増加、そして出生率の上昇、テクノロジー企業、特にISTの活躍、雪印の大樹工場も多様な国籍の従業員を増員しています。加えて、農業分野の実習生として多くの外国人が来ているんです。これらの動きが、人口の変動に影響を与えているんです」
中でも、最も大きな要因が「宇宙関連産業の成長」でしょう。ISTの進出と、その後の「MOMO」ロケットの成功が、全国、全世界に情報発信されました。そして、いまはISTによる超小型人工衛星打上げロケット「ZERO」プロジェクトでさらに注目が集まっています。
さらに、今後は新しい射場が稼働予定。新しいロケットが成功すれば、それが新たなターニングポイントにもなります。
まさに、情報発信による大樹町のイメージ向上と宇宙産業という将来性が噛み合ったことで人口増に繋がっているのです。