2025年1月11日、帯広市大空地区に一度は閉店(2023年)した老舗喫茶店「イエローストーン」が軽食喫茶「イエローストーン」としてオープンしました。オーナーは、なんと20歳の若き女性、伊藤瑠花さんです。「20歳のうちに何か大きなことをしたかった」と屈託のない笑みで語る彼女が、どうして東京からUターンしてまで、地元喫茶店を自らの手で再生させたのか。新たな息吹を吹き込ませた彼女の挑戦に迫ります。
「料理に興味を持ったのは父の影響です。父は料理が趣味で、我が家は、仕事がはやく終わる父が夕飯の担当。小さい頃から味見を頼まれるうちに自然と料理に関わるようになりました」と振り返る伊藤さん。
高校卒業後、地元の調理師専門学校に進学。そこで中国料理の名店「美珍樓」の鈴木邦彦社長と出会い、料理人としての道を本格的に歩み始めます。「まさに鈴木社長は恩師です。料理好きから料理人へと進めたのも恩師のおかげです。今回の開店についても何かと気を使ってくれているんです」と伊藤さん。その後、調理師資格を取得して同校を卒業。すぐに東京・渋谷のイタリアンレストランで修行を積み、腕を磨きました。
「20歳のうちに何か大きなことを成し遂げたかったんです」と語る通り、彼女のもう一つの夢が経営者になることでした。
「漠然と女社長ってカッコいいと思ったんです。本当は東京の大学で経営を学びたかったのですが、もう一つの夢だった料理人も諦めきれず、調理師資格を取って上京後に店を出せば同じ経営者だと考えました」(伊藤さん)
【関連記事】TCRUでは、帯広・十勝のイベント情報を2025年も随時更新していきます!
そんな思いを胸に抱くなか、彼女に吉報が届きます。それは「地元の喫茶店イエローストーンが閉店したんだよ」との母からの何気ない連絡でした。
当初は、東京でキッチンカーや間借りカフェを開こうと考えていた伊藤さんでしたが、母からの連絡によって新たな道が開きます。
彼女は地元で愛されていた喫茶店「イエローストーン」の名を引き継ぐことを決意。すぐに大家さんに連絡。すると「2年後には建物を壊すから2年間の限定ならば貸すよ」との返答でした。
「2年間しか店を開けない」。本来であれば諦めるかもしれない一言ですが、伊藤さんは違いました。
「2年間という期限付きだからこそ、思いっきり好きなことができる。だったら地元で親しまれていたイエローストーンの名称を引き継ごう」と考えたのです。
イエローストーンの元オーナーや大家さんの協力のもと、2年間限定という条件で店舗(名称の使用許可)を借りることができました。
そして、2024年10月、矢継ぎ早にUターンすると店内の改装に着手。オープン日は年明け1月11日と定めます。
「資金が限られていたので、内装は親族総出でDIYしたんです。塗装屋の祖父が壁を塗り、ステンドグラス職人の叔母がランプシェードを手掛け、電気設備屋の親族など、家族みんなの力を借りて完成したのが今のイエローストーンです」
イエローストーンは、外観や内装は昔の喫茶店の雰囲気を引き継ぎながらも、提供する料理やコンセプトは伊藤さんならではの新しいもの。看板メニューのナポリタン(800円)は、+100円で目玉焼きをトッピング可能。喫茶店らしいプリンやクリームソーダもあります。「だってレトロな喫茶店には絶対ほしいメニューですよね」と満面の笑み。
伊藤さんのこだわりは続きます。
「喫茶店の代名詞のコーヒーは、大空地区で焙煎された豆を使っています。深煎りと浅煎りの2種類の『イエローストーンブレンド』は、1杯450円で楽しめますよ」
新生イエローストーンは、伊藤さんが開設したInstagram(SNS)のアカウント名「tokidoki_dokidoki_」にもあるように、「ときどき、ドキドキする場所」がコンセプト。
同店は、喫茶店※ですが、飲食店営業許可なので、料理もアルコールも自由にだせるそう。
※喫茶店は喫茶店営業許可でカフェは飲食店営業許可。飲食店営業許可と喫茶店営業許可には、アルコールの提供に可否があります。飲食店営業許可はアルコール提供できるのに対し、喫茶店営業許可はアルコールが認められません。
「時々はモーニング営業、時々はBAR営業、さらにライブイベントや個展も予定しています。だって、トキドキ、ドキドキする店ですから……。今日のイエローストーンがどんな店かどうかはInstagramで確認してください」
【関連記事】北海道移住の成功者たち。転職・就農・起業など、十勝移住物語をどうぞ!
念願叶ってオープンを迎えた伊藤さんですが、2年後にはどうするのでしょうか。
「2年後、23歳になったら海外で修行をしたいと思っています。特にイギリスに行きたいです。ヨーロッパで料理を学び、さらに大きな夢に向かって挑戦を続けたいです。もしくはイエローストーンを続けているかも。だって未来はどうなるかはわからないですから」と最後まで笑顔満点で語る伊藤さん。
伊藤さんの挑戦はまだ始まったばかり。若さと情熱を武器に、地元の喫茶店を新たな形でよみがえらせた彼女がどのような未来を描いていくのか、目が離せませんね。
【関連記事】帯広市長の米沢さんも伊藤さんと同じUターン組です。※記事は以下
2004年3月生まれ。帯広市出身。市内大空地区で生まれ育ち、高校卒業後に帯広調理師専門学校へ。そこで、講師として登壇する「中国料理美珍樓」のオーナーシェフ・鈴木邦彦社長さんと出会い師弟関係に。卒業(調理師資格取得)後は。東京のイタリアンに就職して腕を磨いた。2024年、地元大空の老舗喫茶店「イエローストーン」の名を引き継ぐためにUターン。25年1月11日、軽食喫茶「イエローストーン」をオープンさせる。