“デュアルキャリア”という言葉、聞いたことはありますか。耳にしたことがあるかもしれませんが、よくわからないという方が大多数かもしれません。これからの時代にふさわしい、新しい働き方ともいえそうな、“デュアルキャリア”について解説していきます。今アスリートになかで、セカンドキャリアよりもデュアルキャリアを選ぶ人が増えているそう。
デュアルキャリアとは?デュアルキャリアをひとことで説明するのは、実は容易ではありません。デュアルキャリアはアスリートに対して使われることがしばしばあり、アスリートを続けながら企業で働いたり、将来を見すえて同時に準備をすることをいいます。
デュアルキャリアの説明をしようとすると、「それってセカンドキャリアのこと?」と言いたくなる人もいるかもしれません。
セカンドキャリアとデュアルキャリアは同じ意味でしょうか。そんなことはありません。アスリートにおけるセカンドキャリアというのは、主に現役引退後の仕事を指す言葉。たとえば、プロのアスリートが現役引退後に整体師になったり、保険会社の営業員になったりするケースがあります。このような場合、現役引退後の仕事をセカンドキャリアということが少なくありません。
それに対し、デュアルキャリアは少し違います。アスリートとしての本業と異なるという意味では同じですが、デュアルキャリアは現役引退後に就く仕事というより、現役引退後を見据えて、現役時代から現役生活と併行して取り組むこといいます。
デュアルキャリアとセカンドキャリアの違いにふれましたが、実際にそれを実践している選手がいるのかどうか、と気になる人もいるかもしれませんよね。
そこで、実例を紹介します。たとえば、北海道十勝地方の帯広市を本拠地とするプロフットサルチーム「Sorpresa(ソルプレーサ)十勝」には、プロフェッショナルのフットサル選手として活躍しながら、他の仕事も同時並行しているアスリートが大勢います。
ソルプレーサ十勝所属の選手、小松勇斗さんは、プロフットサル選手として活動しながら、以前はJR北海道の車掌として、現在は帯広市にあるふく井ホテルのフロントマンとして勤務。短時間勤務をしているわけではなく、ホテルでの勤務に全力で取り組んでいます。仮に現役を引退しても、ホテルマンとして十分な実績がある、といえるほどの働きぶりです。
現在、フットサルのアスリートとして、そしてホテルのフロントマンとしての仕事、それ以外に、自分の発案した「足湯事業」の担当者としてもイベント等を企画・運営しています。つまり、デュアルキャリアとして3足のわらじをはいた生活を送っています。
その小松さんだけでなく、デュアルキャリアとして清掃業に取り組む選手、警備業務を担っている選手なども、ソルプレーサ十勝には所属しています。
ソルプレーサ十勝は、北海道で優勝するほどの強豪であると同時に、デュアルキャリアを実践する選手を後押しする、先進的なクラブといえるかもしれません。
©エスポラーダ北海道
デュアルキャリアのメリットはいくつか考えられますが、主なものを3つ挙げてみることにしましょう。
第1に収入が安定しやすくなるということ。プロフェッショナルのアスリートとはいえ、十分な収入が得られない場合もあります。デュアルキャリアは、選手の生活を経済面で補うことにつながる可能性があります。
第2に、現役選手としての生活と併行して、デュアルキャリアでは別の仕事に取り組んだり将来を見据えた準備をすることなので、引退後にセカンドキャリアを構築する人より、有利なスタートができます。たとえば、ビジネスの知識やスキルが早めに身につきやすく、そのことによって引退後も生活の安定にもつながりやすくなります。
プロのアスリートになる人は、子どもの頃からスポーツの才能に秀でていることが多く、スポーツ推薦で進学できるからと、勉強が後回しになっている場合もあります。それにより、プロアスリート引退後、一般社会に出てセカンドキャリアを築く際、大変な苦労をともなう人もいると言われています。
その点、デュアルキャリアは違います。現役アスリートと併行し、他の仕事をしたり、準備をしていることで、現役引退時に第2の生活へスムーズに移行できるでしょう。現役引退後、デュアルキャリアとして取り組んでいたことを、本業にしやすいからです。
第3に集中力が磨かれます。アスリートと別の仕事を同時にこなしたり、その準備をしていたことで、たとえば、アスリートとしての練習時間は少なくなるかもしれません。しかし、そのことが逆に、集中力を高めたり、効率的な練習するために工夫することにもつながります。デュアルキャリアに取り組むことで、時間のやりくりが上手になり、集中力が高まる可能性は大いにあるでしょう。
アスリートとして現役選手の活動と並行して、別の仕事に携わることによるデメリットは、時間的な余裕がなくなること。2つのことを併行することにより、アスリートオンリーの生活より、練習などに費やす時間が減り、スポーツのパフォーマンスが低下する可能性があります。その点はデメリットといえなくもありません。
デュアルキャリアという働き方が浸透することで、プロのアスリートをめざす人が増える可能性があります。競技によっては、プロであっても十分な収入が得られないこともなくはありませんが、デュアルキャリアに取り組む人が社会に浸透していくことで、プロのアスリートとして活動しやすくなるかもしれません。
つまり、デュアルキャリアが広く知られることで、プロのアスリートをめざす人が今よりも増えるのではないでしょうか。
前述のプロフットサルクラブ「ソルプレーサ十勝」では、スポンサー企業がデュアルキャリアとしての仕事を用意するなど、選手生活をサポートしています。そのような取り組みは選手を経済的にバックアップし、現役引退後につながるキャリア形成にも貢献するでしょう。
また、ソルプレーサ十勝所属の小松選手はこう話します。
「デュアルキャリアで培ったつながりによって、声援が増えれば、選手のモチベーションアップにもつながります。自分の仕事をがんばることによって、もっとフットサルの観客動員数が増え、地元選手への声援を大きくなるなら、仕事や足湯事業ももっとがんばろう、という気持ちになりますね」(小松選手)
デュアルキャリアによって、選手はビッグプレーにつながる活躍が期待でき、スポンサー企業のイメージアップや認知度向上にも貢献することは確実です。
デュアルキャリアはアスリートとしての働き方を表すというより、生き方としてのスタイル、生き方としての新しいカタチといってもいいかもしれません。
また、このコラムではアスリートを中心に説明してきましたが、それだけに限らないといっう気がします。現在の仕事を継続しながら、将来を見すえ、別の業務にも挑戦する人すべてに、デュアルキャリアへの取り組みはヒントになるのではないでしょうか。
TCRUでは、ソルプレーサ十勝の選手の仕事探しの支援をしていきます。ご興味のある企業様は、ぜひご連絡ください。info@sumahiro.com TCRU担当宛