十勝・帯広は、ウィンタースポーツのメッカですが、実は1チーム5人でボールを蹴り合うフットサルが、これから盛り上がってきそうです。帯広を拠点とする地域密着型フットサルチーム「Sorpresa(ソルプレーサ)十勝」が、2023年度北海道リーグ1位に輝きました。今回は、このチームでプレーする、吉田愁平さんと椿和真さんに、幼少時代からやっていたサッカー、そしてフットサルとの出会い、アスリートをしながら仕事を両立させるデュアルキャリアについてなど、さまざまなお話を伺いました。
---では、キャプテンの吉田さんからお聞きします。まず、サッカーのキャリアについて教えていただけますか。
吉田:私は帯広出身で、5歳くらいの時にサッカーを始め、帯広北高サッカー部で活動し、高校卒業後はフットサルのFリーグに所属している、エスポラーダ北海道という札幌のクラブに入団しました。
フットサルでのポジションは、フィクソといって、サッカーでいえばDF(ディフェンダー)のような役割です。
---エスポラーダ北海道ではどれくらいの期間、プレーされましたか。
吉田:1年です。その後、将来の日本代表を育てるための若手育成プロジェクトでもある、Fリーグ選抜に選ばれて、1年間名古屋でプレーし、その後エスポラーダ北海道で1年プレーしたあと、2022(平成4)年にソルプレーサ十勝の前身でもあるFS十勝に入団しました。
---キャプテンになられたのはいつですか。
吉田:2023(平成5)年4月です。自分から「やりたい」、と手を挙げました。フットサル経験は少ないのですが、トップリーグでの経験を他の選手に伝えたり、十勝におけるフットサルの普及に少しでも貢献したりできたらいいなと思っています。
---では、椿さんのサッカーのキャリアを教えていただけますか。
椿:幼稚園でサッカースクールに入り、高校時代は白樺学園でプレーしました。大学でのプレーも考えましたが、進学の意味を見い出せず、結局帯広市の隣にある芽室町にある明治の工場に就職し、1年ほど働きました。
就職後、週1で練習、数週間に1度くらいリーグ戦、という感じでサッカーを続けていました。でも、どんどん飽き足らなくなり、仕事をしながら社会人チームでサッカーをすることも考えたのですが、ドイツ・デュッセルドルフでサッカーをする道を選びました。
---言葉の問題はありませんでしたか。
椿:ドイツ語はまったくわからない状態でしたが、気合いとノリです(笑)。チーム(Duisburger SV 1900、ドイツリーグ6部)はデュッセルドルフから少し離れたデュイスブルクという街にあり、ドイツ語のほか、英語も飛びかっていました。
英語のほうが聞き慣れていましたが、やはりドイツに来たらドイツ語をしゃべりたいので、意味を調べながらちょっとずつ使っていました。
---ドイツから帰国したのは、ケガだと伺いました。
椿:そうです。ドイツに渡って8カ月ぐらいの時、やる気がみなぎり、チームにも慣れ、監督からの信頼も生まれはじめた頃、左足の膝をケガして、半年くらいボールが蹴れなくなりました。ビザを取ってドイツで働くことも考えましたが、「サッカーをするためにドイツに来たのに、サッカーができないならドイツにいる意味がない」と思い、帰国を決意しました。
---フットサルに転向されたのは、帯広に戻られてからですか。
椿:日本に戻り、左膝の状態が良くなってきた時、知人からフットサルに誘われました。「とりあえず練習だけでも」と声をかけてもらい、行ってみたら楽しかったんですね。一方で、サッカーもまだ諦めていなかったのですが、何度もFS十勝に熱心に誘ってもらい、最終的に入団を決めました。私が入団した1年目にチームが北海道で優勝し、最高の気分です。
--椿さんのポジションを教えていただけますか。
椿:ピヴォといって、サッカーでいうとFW(フォワード)に近い点取り屋のようなポジションです。高校のときはボランチという、守備的な役割も担ったこともありますが、基本的にはFWで、ドイツでもFWでした。
---それでは、お仕事の話も伺えますか。プロクラブを目指すソルプレーサ十勝での活動と並行し、お二人は他のお仕事をされていますよね。まず、吉田さんはどのようなお仕事をされているのでしょうか。
吉田:エスポラーダ北海道に所属していた頃は、札幌の医療型障害者福祉施設で清掃や配膳、障害者の方のサポートなどをしながら、フットサルも並行していました。今は清掃業務をしています。
清掃業務は朝が早いこともあり、時間的に大変なこともありますが、フットサル練習日は練習を優先してもいい、と言っていただいていてありがたく感じています。仕事内容としては、連絡や引き継ぎなども多いので、今後はPCを積極的に使って仕事ができるようになりたいですね。
---椿さんはどのようなお仕事をされていますか。
椿:キャプテンと同じ会社の別部署で、警備業務に就いています。交通誘導がメインで、主に屋外での業務となるため、天候の影響を受けることもありますが、会社側のフットサルの練習や試合に対するまわりの理解があり、とても感謝しています。ドイツでは、サッカー練習や試合、ジムでのトレーニングなどがメインでしたが、少しだけラーメン屋で働いていたこともあります。
---お二人はフットサル選手としてのキャリアに加え、もう一つのビジネスにも携わる、デュアルキャリアを体現されていますよね。
吉田:同僚の人たちが応援してくれていて、感謝しているのですが、自分が試合に出場している週末に、同僚は仕事をしていたりするので、少し申し訳なく感じることもあります。あと、職場の人たちに気をつかわれていることで、こちらがいたたまれないというか、気にしすぎてしまうこともありますね。
椿:私の場合は長時間の立ち仕事で、気温や天候に関係なく働いていて、若いとはいえ、疲れがなかなか抜けないこともあります。練習や試合が立て込んでいるときは、リカバリーが難しく、体調を崩したり、ケガにつながったりしないように気をつけています。とはいえ、会社の同僚の人たちに普段から気にかけてもらっていて、ありがたく思っています。
---では、最後にデュアルキャリアを積みながら活動する、ソルプレーサ十勝のフットサル選手としてメッセージをいただけますか。
椿:ドイツでは、言葉があまり通じないなかでプレーし、暮らした経験が生きていると思うのは、たとえば仕事のシーンなどでさまざま人と会っても、あまり動じることがありませんね。時間的には業務が早朝から夕方以降までかかることもありますが、業務終了後の時間を有効に使って、なるべくトレーニングをするようにしています。私は頭で考えるよりも、まず行動に移すタイプなので、試合で数多くゴラッソ(ゴール)を決めて、ソルプレーサ十勝を勝利に導きたいです。
吉田:他の仕事をしながらフットサル選手としてやっていくのは、たしかに大変な部分もあります。生活リズムもなかなか一定しませんが、デュアルキャリアのアスリートとして、トレーニングの時間を捻出しようとトライしているところです。十勝は本当に温かい人が多く、地元の応援を肌で感じますし、そういった喜びや愛みたいなものを実感していますね。
吉田選手は札幌と名古屋で選手として、椿選手はドイツでのプレー経験があり、外に出たことで改めて十勝の魅力、人の温かさに気づいたそうです。吉田選手、椿選手にとどまらず、選手生活と並行して働くことで、引退後のための経験を積むことができるデュアルキャリア。そんなデュアルキャリアに取り組むアスリートを応援し、サポートする輪がさまざまなカタチで広がることを願っています。
また、アスリートのデュアルキャリアに限らず、働きたい人が希望する時間、曜日、職種をマッチングさせて叶えるためには、企業と求職者、両者の間を取り持つ仲介役も必要です。年齢や性別を問わず、多彩な働き方を実現させる企業がたくさん生まれることで、十勝も北海道も、そして日本がもっと豊かになっていくだろうと感じた取材でした。吉田選手、椿選手、ありがとうございました。
1999年帯広市出身。高校卒業後は、幼い頃からのサッカーへの情熱を胸に、北海道のプロフットサルチーム「エスポラーダ北海道」でプレイしその後Fリーグ選抜にも選出、現在は十勝のフットサルチーム「Sorpresa(ソルプレーサ)十勝」でキャプテン。フィールド上だけでなく、人生のあらゆる場面で、私の強みは「人のために行動する力」と「責任感」です。
2000年帯広市出身。高校卒業後、私はサッカーの更なる研鑽を求めてドイツへ留学。異文化の中でプレーすることは、言葉の壁や文化の違いといった多くを挑戦。現在は十勝のフットサルチーム「Sorpresa(ソルプレーサ)十勝」で攻撃の柱の一人。言語の障壁を乗り越えるためには、多様な表現方法やノンバーバルコミュニケーションの技術を駆使する必要があると考えます。