皆さん、大和総研でシステムエンジニア、PwCコンサルティング、MBA取得、KPMGコンサルティングで脱炭素社会とスタートアップビジネスを聞いてどんな人を思い浮かべますか?農業とは無縁に見えますよね。今回の主人公・馬渕裕貴さん東京で華々しいキャリアを積み上げ、2023年2月に帯広へUターン。家業であるまぶちファームで働きながら、ふるさと十勝での農業ビジネスを模索しているんです。
1992年生まれ。帯広市出身。帯広柏葉高校卒、明治大学法学部卒業。2014年大和総研ホールディングス(現:大和総研)入社。17年PwCコンサルティングSenior Associate。その頃に早稲田大学大学院でMBAを取得。21年KPMGコンサルティングManager。23年Uターン、現在は家業である株式会社まぶちファーム。
馬渕裕貴さんは、帯広市出身。帯広柏葉高校卒業に上京。明治大学法学部卒業後、東京でのキャリアを積み、その後、2023年2月に故郷十勝にUターンしました。馬渕さんの貴重な経験と地元への貢献への意欲について、以下の一問一答で探ります。
Q: 馬渕さんは帯広市で生まれ育ちましたが、どのような経歴を持っていますか?
馬渕 帯広市で生まれ育ち、豊西地区にあるまぶちファームが実家です。川西小学校、川西中学、柏葉高校を卒業後、明治大学法学部を卒業しました。大学時代にはNPO活動に没頭し、人々と企業のサポートに尽力してきました。とにかく、物事を考えて仕組み化し、実行するのが好きなんです。他にも誰かの成長を応援すること。人事の配置を考え、組織を機能的に動かすことも好きでした。いくら考え込んでも負担にならないほどです。
Q: 東京でのキャリアについて教えてください。
馬渕 NPOでの活動を通して、バックオフィスやマーケティングに興味を抱き、行き着いたのが「企業が発展することで社会が良くなり、そうした中で頑張る人たちを応援したい」という気持ちでした。企業の成長を応援するにはどうしたら良いかと考え抜いて、出した答えが、お金(融資)、IT(システム)、コンサル(支援)の3つの業種だと思ったんです。そうして、お金とITの両方を学べると思い門を叩いのが大和総研で、金融系のITシステムの設計に従事し、その後、PwCコンサルティングで金融セクターの経験を積み、その後、MBAを取得後したのちにKPMGコンサルティングへ。
主に3つをテーマにしていました。1つめは、脱炭素関連ですね。温室効果ガスの排出を全体としてゼロとするという「カーボンニュートラル」について、当時(2021年)は経営戦略に標榜している企業が多いものの具体的な取り組みは未成熟でした。それを企業の取り組みとして少しずつ実践に落とし込んでいきました。
2つめは、スタートアップとのオープンイノベーションです。製品開発や技術改革、研究開発や組織改革などにおいて、スタートアップが持つ知識や技術などの経営資源を掛け合わせたオープンイノベーションによる新規事業を支援しました。イノベーションには投資も絡むため、数十億とか数百億が動くコーポレートベンチャーキャピタルの投資戦略を描きながら新規事業を模索していました。
そして最後が、地方の中小企業とスタートアップを掛け合わせた新規事業の支援です。
中小企業に必要な事業を考え抜き、「1円稼ぐのにはどうしたらいいのか」とよりミクロな部分で経営を考えていくうちに「組織の一員ではなく、小さくても自分でビジネスをやってみたい」と思ったんです。その際に、実家の家業である農業を意識しました。それまでは全く農業をやるつもりは無かったです。
Q:なぜ農業という分野で十勝・帯広にUターンしたんしょう?
馬渕 1つ目は十勝・帯広が働く・住む場所として好きということに気づいたからだと思います。晴天率の高い気候や身近な食の良さがあり、自動車を走らせて毎週家族でドライブすることが出来ます。東京から十勝・帯広に来て労働時間はそれほど変わっていませんが、ストレスがぐんと減りました。2つ目は十勝・帯広の農業がビジネスとして非常に魅力的だからです。自動運転トラクターやドローンなどが実践投入されており、日本で最も先端的な農業を実現している地域の一つと認識しています。こちらに来てから何度か東京の大手企業の方を案内する機会がありましたが、ビジネスポテンシャルの高さを感じて驚いていました。
Q: 帯広に戻ってからの活動はどのようなものですか?
馬渕 ゼロからのスタートになるため、農業大学校や帯広畜産大学の講義、若手農業者の育成プログラムなどに参加しながら、農業経営について学んでいます。それらの座学を生かし、トラクターの運転免許や牽引免許などを取得し、日々、農業の実務に励んでいます。JA青年部にも所属し、周りの若手農業者の刺激を受けながら、農業の合理化や生産性の向上、新しいビジネスモデルの導入を試行錯誤しています。農業はとても学ぶことが多く、日々新しい発見があります。
Q: 農業活動を通じて気付いたことは何ですか?
馬渕 繰り返しとなりますが、非常に高い可能性があると感じています。私自身は、1つの農業経営体としてさらに労働生産性・土地生産性の向上に取り組んでいきたいと感じています。例えば、生産プロセスの高度化や市場ニーズに応じた農産物への価格転嫁などです。
Q: 家族と共に2023年2月にUターンして約10ヶ月が経ちました。今後の展望について教えてください。
馬渕 農業分野は、人手不足から労働集約的な業務は削減を余儀なくされるので、より筋肉質な知能集約的な業務が多くなると認識しています。産業構造の変曲に遅れを取らないよう、長期的に持続可能なビジネスを構築することを意識していきたいと思います。
また、東京での経験を活かして、十勝・帯広の発展に微力ながら貢献したいと考えています。そのためには、農業に関して深く学ぶ知の深化だけではなく、それ以外のビジネスも含めた知の探索が必要と認識しています。新事業を創造することで地域の経済発展を目指す「とかち・イノベーション・プログラム2023」に参加。約4ヶ月間のプログラムに参加したことは大きな糧になりました。
馬渕裕貴さんのUターンは、十勝・帯広の地域発展に新たな風を吹き込む象徴。馬渕さんの経験と情熱は、十勝経済に新しい活力をもたらすと期待されています。