十勝から起業家を輩出する熱意と創造の火が燃え上がりました。事業創造と起業家の輩出を目的にはじまったプログラム「とかちイノベーションプログラム(TIP)2023」の最終発表が11月22日、帯広市内のインザスイートで開催。4ヶ月間のプログラムを終えた10チームが新事業構想を発表。規格外農産物の再利用や移動式モール温泉足湯ビジネスのほか、子どもが主役の地域通貨創設、熱気球を使った新たな観光事業など10個のユニークな事業構想が発表されました。
起業家の卵たちは、7月から11月の間で14回のセッションを受けながら、すでに事業を立ち上げている革新者や投資家といったアドバイザーからの刺激をもらい、チームで新たな事業を生み出してきました。
去年の発表は以下の記事から!
とかちイノベーションプログラム(TIP)は、帯広信用金庫が主催。帯広市や管内全19市町村の共催、そして東京の野村総合研究所の協力のもと、今年で9回目を迎えました。これまでに64の事業構想が誕生。9期には58人が参加し、この日の最終発表には10チームが臨みました。
モール温泉で有名な「ふく井ホテル」で働く小松勇斗さんは、移動式モール温泉足湯事業を発表。観光のみならず、スポーツイベントでの需要を見込み、今後は足湯専用の車両を導入し、全国行脚も検討しています。すでに、専用のおけを導入し、帯広の中心街イベント「広小路マーケット」でも実証実験を行い、手応えを感じたといいます。小松さんは「列車の車掌経験者としては、将来的に足湯列車の企画も考えています。十勝・帯広のフードバレーにあわせて"モールバレー"を形成したい」と意気込みました。
自身も3人の子を持つ母でありながら、主催する「ナチュラル輪おびひろ」代表の中山三香さんのチーム「NUOK」は、子どもたちが地域の店で手伝うことで得られる地域通貨を発行。その通貨を使って加盟店で買い物ができるユニークな事業を計画。12月10日には試験イベントを開催する予定です。「子どもたちに学校とは違うコミュニティを作ってもらいたい」と中山さんは話します。
現役の池田町の地域おこし協力隊である鈴木龍太郎さんのチームは、行政主体の移住支援を民間企業としてサポートすることで、足りない支援を充足させることを発案。住む前に情報とプチ移住体験ツアーをつくり、さらには移住後のコミュニティを盛り上げます。「来年度はモニター期間とし、1年後に体験住宅をスタート、行政との連携を拡大しながら、5年後には移住者100組を目指します」と鈴木さん
英語教師としてのキャリアを活かし、世界に向けて十勝19市町村を舞台にした絵本を発刊していくのは、くろしま・ちきさんのチーム。「平和」と「自然」をテーマに、十勝の素晴らしさを絵本を通して発信する事業だそう。
日系カナダ人のジュディ・ムコウダさんのチーム「CHESTER FIELDS」は、父親から譲り受けた十勝の土地を活用し、自然を愛する人が、自然を愛する活動やスローライフを楽しむ事で十勝の農村地帯や里山の自然や景観を次の世代に遺す社会事業です。
熱気球おじさんこと、気球のプロフェッショナル篠田博行さんらは、熱気球のプライベート搭乗体験や宿泊施設を含む拠点整備などの構想を発表。その道35年の篠田さんを中心に、「あなただけの空物語」をテーマに、熱気球を使った感動の旅をプロデュース。早朝しか飛べないというデメリットを逆手にとった前泊施設「the 気球 BASE」を建設することで、 熱気球ビジネスの幅を広げます。
山本大悟さんを中心に子育て真っ最中のメンバーが提案するのは、帯広にはなかった屋内遊戯施設です。子どもが楽しんでいる間に、買い物やリラクゼーションのできる施設を作ることで、親も楽しめる空間を構想しました。
「帯広に移住して1年半、帯広で出会った人は海外に行った事ない人がほとんど」と驚いたリーダー・ミキティさんの問題意識から誕生した「世界とつながるcafé」。海外に行った気分になれるカフェを「旅を見つけるプライベートターミナル」に見立てて、十勝の人が世界を知り、興味が沸き、飛び出すきっかけを作ります。
メンバー全員が看護師で事業創発したのが、無理な減量ではなく、筋肉量が落とさずに代謝をUPさせ、簡単に体質改善が可能になるというファスティング。専門分野を持つ看護師チームがあなたにあったプランを提供します。会場を沸かせた後、男女数人から受注がありました。
トリを飾ったのは、規格外が理由で出る年間2割の廃棄食材を使った新たな取り組みです。リーダーの岸田ともえさんは「もったいない」を合言葉に、自身が経営する飲食店で、農家さんから出る規格外農産物を使って加工食品を開発。すでに東京の高島屋や北海道どさんこプラザで実験販売を経験。「300食が完売することもあるんです」と実績を披露。その上で、独自の流通網を展開することで、生産者から安定的な廃棄食材を仕入れ、生産者の新たな収益源にするとともに、フードロスを減らしていきます。
発表後は、TIP支援をし続けてきた帯広市の米沢市長が全チームに対して講評。新たなビジネスの芽たちに「新ビジネスを創出し、地域を活性化させるためのこのイベントは、起業を目指す人々がアイデアを共有し合う場となり、地方での起業支援の新たな潮流を示しています。高校生から50代までの多様な参加者が、帯広での未来への扉を今、力強く開いています」とエールを送りました。