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テレビで話題沸騰中!帯広の老舗「ひまわり温泉」若き支配人・沢本美咲さん

2026-10-07

十勝のひと

テレビで話題沸騰中!帯広の老舗「ひまわり温泉」若き支配人・沢本美咲さん

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帯広の住宅街で、約40年にわたり湯を沸かしてきた「ひまわり温泉」。その心臓部ともいえるメインボイラーが、2026年1月、突然故障しました。修理費は1,000万円。

それは、沢本美咲さんが支配人に就任してすぐのこと。予期せぬ大ピンチを抱える彼女のとった手段はクラウドファンディングでした。「故障した日にすぐに取り掛かりました」と振り返ります。

数ヶ月後、多くの支援を受けてボイラーは復旧。

「(火が)ポッとついたときはもう……」と会話を止めて深く頷く沢本さん。

復旧までの一部始終はテレビでも取り上げられ、大きな話題を呼びます。とはいえ、設備の老朽化、人手不足、集客など課題は山積。それでも前を向き、次々と行動に移す若き支配人の挑戦は、ここからが本番です。

きっかけは先輩からの誘い

ひまわり温泉は、天然モール温泉が楽しめる帯広の人気温泉。フィンランド式サウナと熱波サービスを体感できる場所として地元で親しまれています。

そんなひまわり温泉で働き始めたのは、支配人に就任する約5年前。本業で一緒だった先輩から声をかけられたことがきっかけでした。

「ひまわり温泉のことは、バイトを紹介されてから存在を知ったぐらいなんです」

当時は別の仕事をしながら、平日の夜や休日に週1、2回ほどアルバイトとして勤務。受付に立ち、ときには浴室の清掃もしていたといいます。

本業では医療事務や建築資材を扱う会社など、いくつかの仕事を経験。転職をしながらも、ひまわり温泉のアルバイトは約5年続いたといいます。長く続いた理由を尋ねると――

「温泉に入れたので!」と、沢本さんは明るい笑顔で答えます。意外にも理由はシンプル。

ひまわり温泉でのアルバイトを続けているうちに、少しずつ顔なじみのお客さんも増えていきました。

連日シフトに入っていると、「おお、今日もいるのか」と声をかけられたり、飲み物をもらったり。そんなふうに受付でお客さんと言葉を交わせたことも続けられた理由のひとつだったと振り返ります。

いつの間にか、ひまわり温泉で働くことは沢本さんの日常のひとつになっていました。

そんな沢本さんが「経営」を自分ごととして意識するようになったきっかけは、実はひまわり温泉ではありません。曾祖父の代から続く、実家の会社でした。

祖父から続く会社を「私が継ぎたい」

沢本さんの実家は、曾祖父の代から続く運送会社を営んでいます。自身は高校卒業後、家業とは別の道へ進み、会社員として働いていました。

「実家の会社は弟が継ぐと思っていたんです」

ところが、弟が継がない可能性が見えてきたことで、状況は一変。父親が家族以外の人に会社を譲るかもしれないと知り、

「祖父から続いている会社を、誰かに渡すのは抵抗がありました。それなら私が継ぎたいなって思ったんです。」と、沢本さんは話します。

経営への意識が芽生えた沢本さんですが、「継ぎたい」という想いがあっても経営に関しては分からないことだらけ。そこで、ひまわり温泉の運営スタッフに将来への正直な想いを話してみたそうです。

「経営はよくわからないけれど、いつか継ぎたいなと思ってるんですよね」

すると、ひまわり温泉からは思いがけない提案が返ってきました。ひまわり温泉で支配人をしながら、一緒に仕事や経営を学んでいかないか――と。

気軽な気持ちで始めた温泉でのアルバイトと、祖父の代から続く家業。それまで別々だった二つのものが、ここで思いがけずつながりました。

2025年12月、沢本さんはひまわり温泉の社員兼支配人に就任しました。家業を継ぐために始まった、ひまわり温泉での“経営の実践”。

沢本さんは現在の役職について「次の目標があるってわかっているのに、実際に働きながら経営を学べる環境ってなかなかないと思うので。本当にありがたいなと思っています。」と語ります。

体制が変わり、ひまわり温泉は新たなスタートをきりました。ところが、支配人となってわずか1か月ほどのこと。真冬のひまわり温泉で、営業そのものを揺るがす出来事が起こります。

就任直後にボイラーが故障

2026年1月、温泉の心臓部であるメインボイラーが故障。もともと調子が悪く、点検を兼ねて掃除を行ってみると、かさぶたのように穴をふさいでいた錆が剥がれ、とうとう火をつけられない状態になったといいます。

ひまわり温泉の源泉は約38℃。そのままでは十分な温度にならないため、ボイラーを交換するしかありません。

交換には多額の費用が必要となり、沢本さんは他の運営スタッフと相談しながらクラウドファンディングを実施することを決意しました。

「もちろん交換の費用のためでしたが、この機会にひまわり温泉をもっと多くの人に知ってほしいという想いもあったんです」

賛否両論の意見が寄せられるなか、普段から利用しているお客さんたちから「ひまわり温泉を見守りたい」という声が多く届いたことが沢本さんの印象に残ったといいます。

「クラウドファンディングをきっかけに温泉を知り、「頑張ってください」と支援してくれた人もいたんです」

そうした声に支えられながら、ボイラーが使えない間もひまわり温泉は割引料金での営業を続けました。

内風呂やシャワーはぬるいまま。それでも、別系統のボイラーで動く露天風呂とサウナは普段通り利用することができました。それが、頼みの綱になったといいます。

一部のサウナ好きのお客さんからは、ぬるくなった水風呂に「ずっと浸かっていられる、最高!」と、思いがけない反応をもらうこともあったのだそう。

思うようにお湯を提供できないなかでも、変わらず足を運び、この状況すら楽しんでくれる人がいたことを、沢本さんはうれしそうに語ってくれました。

みんなで乗り越えた3か月間

当時ひまわり温泉の行く末が不安だったのは、お客さんだけではありません。長くこの場所で働いてきたスタッフの中には、ボイラーの故障ですっかり元気をなくしていた人もいたそうです。

「スタッフもこれからどうしようっていう顔をしていました。私も絶対にボロボロの顔はできないと思って、『大丈夫、何とかする』と声をかけていました」

ボイラーが復活するまでの3か月間。もちろん沢本さん本人も、不安がなかったわけではありません。ですが、弱い顔を見せられなかったとその時の心境を振り返ります。

新しいボイラーの小さな窓から初めて火が灯った瞬間のことを尋ねると、

「ポッとついたときはもう――」

沢本さんはその先を言葉にすることなく、当時をかみしめるように頷きました。

年齢も立場も違うスタッフたちが支え合いながら、復旧の日を待ち望んでいたひまわり温泉。沢本さんの様子から、ここで働く人にとって、ボイラーの復旧は”機械の修理”という言葉には収まらない特別な想いがあったのだと伝わってきます。

そんな大きなトラブルを乗り越え、今ではすっかりひまわり温泉にいつもの日常が戻ってきました。

地元民が太鼓判!天然モール温泉

支配人就任や、ボイラーの故障など、最近は話題に事欠かないひまわり温泉。ですが、ひまわり温泉が帯広で長く親しまれているのは、温泉そのものが魅力的だからなんです。

お肌しっとり「美人の湯」

ひまわり温泉で楽しめるのは、世界的にもめずらしい天然のモール温泉。太古の植物が堆積した層を通って湧き出す植物性の温泉です。

その琥珀色の湯は、なめらかな肌ざわりとしっとり感が特徴で、温泉好きからは「美人の湯」とも呼ばれています。

ひまわり温泉では、ゆったりとした内風呂や、開放的な屋外の露天風呂で楽しむことができます。

露天風呂のまわりには自然が残り、ときにはリスが遊びに来ることもあるのだそう。街なかにありながら、外の空気を感じながらのんびりと湯浴みを楽しめます。

露天風呂でゆっくり過ごしてほしいと話す沢本さん。住宅街にある身近な温泉でありながら、湯船に浸かれば、少し日常から離れた時間を過ごせます。

サウナ好きが通うセルフロウリュと熱波

そして、ひまわり温泉を語るうえで外せないのがサウナです。イベントがある日には、地元の方をはじめ遠くに住む”サウナ愛好家”たちもこぞって集まっています。

自分でサウナストーンに水をかけて楽しむセルフロウリュに加え、熱波師による熱波サービスも大人気。

たくさんの熱波師が活動しているひまわり温泉では、モノマネを交えながら風を送るユニークな方もいるのだとか。(熱波イベントなどを事前に確認したい方は、公式Instagramがおすすめです。)

しっかり汗を流したあとは水風呂で“ととのう”を体感するのがサウナ通の楽しみ方。さらに露天風呂で外の空気を感じながら休むのもおすすめです。

湯上がりには、ぜひ受付の奥へ。広い館内には休憩スペースのほか、駄菓子やゲーム、卓球台まで置いてあります。

明るい光が差し込む卓球台を見ながら、「奥の方まで来て、ぜひ卓球も楽しんでいただければ」と沢本さんもやさしく笑います。ひとりで来ても、家族と来ても、ゆっくりと過ごせる居心地の良さがひまわり温泉の魅力です。

残すものと変えていくもの

ひまわり温泉をじっくり見て回ると、昔懐かしい温泉施設らしさが残る一方で、新しい変化もあちこちに見つかります。

たとえば、ひまわりのイラストが書かれた赤と紺の暖簾。これは、沢本さんが就任してから真っ先に変えたことのひとつです。

ロッカーのバンドに描かれた「ひまわり坊や」は、現役大学生のスタッフがデザインしたもの。

木製の装飾には長年働くスタッフのDIYが生かされ、温泉で遊べる子ども向けのおもちゃも、お孫さんがいるスタッフの「これだったら遊ぶよ」という声から置き始めたそうです。

館内を歩いていると、沢本さんの口から次々とスタッフの話が出てきます。

「今あるものを大事にしながら、新しいものも入れていきたいんです」

古いものをすべて新しくするのではなく、残ってきたものを生かしながら、そこで働く人たちのアイデアを少しずつ加えていく。その想いが、今のひまわり温泉に散りばめられています。

最近では、卓球大会やビンゴ大会、子ども食堂など、温泉の枠を飛び出した取り組みも増えてきました。

「ただの温泉だけじゃなくて、『こんな楽しいことがあった』って記憶に残り続けるような温泉施設にしたいんです」

そう語る沢本さんが目指すのは、ひまわり温泉に地域の人が集い、一緒に楽しめる場所になることです。

実家の会社を「私が継ぎたい」と思った沢本さんは今、家業とは別の場所で、長く愛されてきた温泉を支える側にいます。

大切なものを残すために、ときには変えていく。

ひまわり温泉での日々は、いつか家業を継ぐことを見据える沢本さんにとって、その意味を実践しながら学ぶ時間にもなっているのかもしれません。

今日も地域の暮らしのそばに

ひまわり温泉にどこか新しい空気を感じたのは、目に見えるものが変わっているからだけではありません。沢本さんをはじめ、世代も立場も違うスタッフたちが持ち寄るアイデアや会話が、この場所に明るい空気を生んでいます。

取材を終えるころ、館内には一番風呂を楽しみに訪れたお客さんの姿がちらほらと見え始めていました。手慣れた様子で入浴券を買い、暖簾の奥へと消えていきます。

昔からこの場所を知る人も、最近足を運ぶようになった人も。一度訪れれば、なぜここが長く愛されてきたのかが分かるはず。今日もひまわり温泉は誰かの心と体をあたためながら、地域の暮らしのそばにあります。

ひまわり温泉

  • 住所:北海道帯広市西11条南32丁目7-2
  • 営業時間:11:00~23:00(変更になる場合があります)
  • 入浴料金:大人550円、小学生150円、幼児80円
    (大人回数券11枚つづり:5,500円、リロクラブ・あおぞら共済450円)
  • 駐車場:あり
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