更別幼稚園で年長2人を担任する、幼稚園教諭16年目の山田朋美先生。一人の人として向き合う関係と、「やりたい」を実現できる保育。一人ひとりをしっかり見られる環境と、村全体で子どもを見守る温かさ。小さな村の園で働く魅力を、山田先生の歩みから聞きました。
山田 朋美|やまだ ともみ
上席教諭・幼稚園教諭16年目。池田町出身、光塩学園女子短期大学卒業。2011年に幼稚園教諭となり、十勝の幼稚園と保育園で経験を積む。上更別幼稚園を経て、2018年から更別幼稚園に勤務。現在は年長児クラス(きりん組)を担任。休日は友人と出かけたり、家でのんびり過ごしたりしている。
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「先生がいなくなるのが寂しい」
高校生のころ、親戚の小さい子と触れ合う機会が多く、幼稚園や保育園の先生を目指すようになった山田先生。当時3歳ぐらいだったその子と遊ぶのが楽しかったと振り返ります。

「ぎゅっと抱きついてきたり、抱っこしてと言ってきたりしてくれるのが嬉しかったんです」
子どもと一緒にいるのは楽しい。その気持ちを大事にして、保育を学ぶ短大へ進みました。
実習先は、十勝のとある幼稚園。園児40人ほどの小さな園です。3週間の実習で、子どもたちとの距離が縮まっていく感覚がありました。
「ここで働きたい」
実習が終わるころには、そう思うようになっていたそうです。

最終日、子どもたちを見送ったあとに園に電話がかかってきました。家に帰ったある園児が、山田先生がいなくなるのが寂しいと泣いているというのです。自分から近づいてくるタイプではなく、別れ際にもそんな素振りは見えなかった子でした。それだけに、そんなふうに自分を慕ってくれていたことに、心が動いたといいます。
「この仕事をしたいなという気持ちにさせてくれました」
その子の園での最後の1年を一緒に過ごしたいと考え、山田先生は実習先の幼稚園に就職しました。
元同僚の誘いで、更別村へ移住
その後、十勝の別の保育園に移ります。園児約100人の大きな園で、勤務できる期間は5年まででした。
任期が終わる年、保育園で1年一緒に働いた先生から連絡がありました。その先生は、更別村の幼稚園で働いていたのです。
「次の園を決めていないなら、更別で募集があるから来ませんか」
かつての同僚からの誘いを心強く感じ、2018年、更別村の幼稚園で働き始めます。村のことは、ほとんど知りませんでした。

「更別村だから不安、ということは特にありませんでした。環境が変わることへの緊張は、もちろんありましたけど」
当時の採用の条件は、村内に住むこと。山田先生は池田町を離れ、更別村での暮らしを始めました。久しぶりの少人数の園を、改めていいなと感じたといいます。
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年長は男の子と女の子の2人だけ

山田先生が現在担任しているのは、年長児クラスのきりん組です。園児は男の子と女の子の2人。ほかに4歳児のぱんだ組10人、3歳児のぺんぎん組3人がいて、取材時点で園全体は15人です。
園舎は2006年に建てられました。柱や床はもちろん、腰壁、窓枠やドアまで、ふんだんに木材が使われています。テーブルや椅子も木製です。ガラス張りの窓から光が入り、木の温もりを感じる気持ちのいい空間です。園児15人の園なので、どの部屋もゆったりと使えます。

「2人とも個性が立っているんです」
男の子は初対面の人には少し慎重です。慣れてくると自分を出せるようになり、「すごく面白い子です」と山田先生。女の子はしっかり者で、ときどき甘えん坊な一面ものぞかせます。3歳児のころから3年間、ずっと同じクラスで過ごしてきた2人です。
「2人は仲間だと思っているから、気持ちがぶつかっても自然とまた関係が戻るんですよね」

山田先生の一日
- 8:30 出勤(早朝保育担当の日は8:00)
- 8:50 登園、玄関で迎え入れ
- 9:45 片付け、朝の会
- 10:00 クラスごとの保育(散歩、園庭遊び、工作など)
- 11:45 給食(給食室で全員一緒に)
- 12:20 歯磨き、帰りの会
- 13:00 降園、またはお昼寝(14:40まで)
- 15:00 おやつ
- 15:30 降園、または延長保育(17:00まで。担任3人で交代)
- 17:15 退勤
早朝保育を担当する日は、8:00から始まる特別保育に入ります。年長児も2学期まではお昼寝をし、3学期は小学校に向けて起きて過ごします。
「2人でもやる」。運動会の相談
今年の運動会は、山田先生が子どもたちと正面から向き合うことを特に意識した行事でした。
これまで10人ほどで分担してきた年長の役割を、今年は2人だけで担うことになります。2人には年長としての役割をやり遂げてほしい。その気持ちはあっても、負担になることは分かっていました。
そこで山田先生は、先生が決めて指示するのではなく、2人に相談することにしました。やるのは2人だからこそ、真剣に考えて自分たちで決めてほしい。一人の人として対等に向き合うために、いいことばかりではなく、大変さも正直に伝えました。
「今までの年長さんは、セリフを1つ覚えたら終わりだった。でも2人でやるなら、3つも4つも覚えなきゃいけない」
「1つでもいいし、2つでもいい。でも先生は、2人のかっこいいところを全部、お客さんに見てほしいな。それは私の気持ちなんだよね」
2人はしばらく黙り込み、やがて「2人でもやる」と答えました。そして当日、年長の役割をやり遂げたのです。

「練習中は怒ったこともありました。でも当日、あれだけ練習してきた2人が一生懸命頑張っている姿を見て、胸がいっぱいになったんです。泣きそうになってしまって」
「子どもだからという気持ちで接するのではなく、一人の人として真剣に向き合う。そうすれば、真剣に応えてくれるんです」
山田先生が大切にしているのは、先生の考えを押し付けず、子どもたちの友人のような存在でいることです。
「先生だから話すというより、この人だから話してみたい、と思われる存在でいられたら。仕事だからではなく、特に自分のクラスの子とは、人として関わりたいんです」
先生と園児という関係を超えて、本音で向き合える。その手応えを日々感じられるのが、この園で働く魅力の一つです。
村全体が、ひとつの園のように

更別村の印象を尋ねると、山田先生が挙げたのは、来た当初に感じた地域のつながりの強さでした。誰もが顔見知りの小さな村です。来たばかりのころは、人と人との距離の近さに戸惑いもありました。
見方が変わったのは、保育中に園児と散歩に出かけたときのことでした。道で出会うお年寄りは、「こんにちは」で終わりません。「可愛いね」「何歳なの」と子どもたちに声をかけてくれます。商店街のお店をふらりとのぞくと、「入っていいよ」と中に招き入れてもらいました。そのまま店内で過ごさせてもらったこともあります。
「少人数のクラスで、小さな村だからこそできることだと思います」
子どもたちは村の大人たちと、散歩の途中に生まれた触れ合いを楽しみました。そうした場面を重ねるうちに、そのつながりを温かく感じるようになったのです。
「みんなで村の子どもたちを見てくれていて、温かい目で守られていると思います。これは更別村のいいところですね」
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2人だから、気が済むまで遊べる
少人数の良さを尋ねると、こんな答えが返ってきます。
「子どもたち一人ひとりの『こうしたい』という気持ちに、応えてあげられることです」
きりん組の2人は工作が好きで、廃材を使ってさまざまなものを作るのが得意です。2人のクラスなら、一方が「もっとやりたい」と言えば、もう一方に相談します。「いいよ」と返ってくれば、「今日はこの遊びをずっと続けよう」と決められます。

「やりたい時にやりたいことを目いっぱいできて、満足したところで自分のタイミングでやめられる。わがままかなとも思うけど、そういう経験が今の年齢の子たちには必要なのかな、と思うようになりました」
今年は、先生の予定より子どもたちのやりたいことを優先するようにしました。すると、表情がまるで違うことに気づいたといいます。
「先生の予定どおりに進めることだけじゃなく、子どものやりたいことを優先するのもいいことなんだな、と」
一方で、「集団の生活を味わわせてあげることはできていない」とも率直に話します。それでも、こう続けました。

「集団では味わえない楽しさや達成感は、2人だったからこそ味わえたんじゃないかな。少人数だから悪いところばかりじゃない、と最近すごく感じています」
子どもの「やりたい」をその都度拾い上げ、納得いくまで付き合える。一人ひとりの小さな変化にも目が届く。少人数の園だからできる保育が、ここにあります。
相談や報告ができる人と働きたい
最後に、これから更別幼稚園で働くことを考えている人へ、山田先生からメッセージをもらいました。

「少人数だからこその温かさがあって、大きい園とは違う感覚で仕事ができると思います。子どもたちも本当に可愛いですよ」
「新しいところに来るのは、不安な部分もありますよね。でも、ここはいい人が多いので、すぐに打ち解けられると思います」
山田先生自身も、新しく入る先生を温かく迎えたいと考えています。
「新しい職場では誰でも不安を抱えると思うので、なんでも話せて、相談できる雰囲気を大切にしたいです。こちらからも積極的に声をかけていきますね」
一緒に働きたい人について尋ねると、答えはとてもシンプルでした。
「経験がある・ないにかかわらず、何かあったときに相談や報告ができる人です」
大切なのは、困ったときに声を上げられること。その言葉には、新しい仲間を迎える側の温かさがにじんでいました。
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