十勝移住物語 「エシカル給食」の実現を目指
すママがすごい!

May. 12
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十勝に移住した人を「十勝移住物語」として紹介します。東京から十勝・帯広に地方移住した中山三香さんのアクションに注目が集まっています。今回は、人にも環境にも優しい環境保全型農業の野菜・地産地消・栄養価の高い旬な食材や精製されていない調味料などを使った「エシカル給食」の実現を目指す、中山さんをインタビュー。すべては「未来の子どもたちのため」でした。

「理想のみらいフェス」で3000人を集客

「理想のみらいフェス」で3000人を集客

2022年12月4日、帯広市最大級の多目的施設「とかちプラザ」で開かれたイベント「理想のみらいフェス」。そこには、早朝から準備に追われる中山さんの姿がありました。

「理想のみらいフェス」は、「エシカル」(人にも社会環境にも配慮した消費活動)な給食の普及を目指す「ナチュラル輪おびひろ(代表 中山三香)」が主催し、帯広市や十勝総合振興局、農林水産省北海道農政事務所、十勝毎日新聞社、帯広信用金庫などが後援した、十勝の未来を担う子どもたちと地域の皆さんのためのイベントです。

子ども主体の学校教育映画「夢みる小学校」の上映会、子どもの職業体験といった、子どもと大人が一緒に楽しめるワークショップをはじめ、十勝の食材を使ったメニューを提供するキッチンカー、生きることを楽しんで活動しているパネリストによるトークイベントなどの催しがいっぱい。主催者の中山さんも「はじめての開催でしたが、3200人が参加し、大いに喜んでくれたと感じます」と話す通り、大盛況のうちに終わったそうです。

理想のみらいフェス

閑話休題。中山さんのインタビューでした。

今回の主役で、3000人以上を集めたイベントを主催するナチュラル輪おびひろとは何者なのでしょうか。

そんな質問を投げかけると中山さんは、「ごく当たり前の普通のママたちですよ。今回のイベントは右も左も分からない中で、メンバーと走り回って、多くの皆さんの協力のお陰で開催できたものです」と謙遜します。

都内で生まれ育ち、1度は国家公務員に……

東京都出身の中山さんは、警察官僚で厳格な父親に育てられますが、安心と自由を求めて、10代の頃に一度は家を出ます。しかし、自らの力で生きることを体感する中で「自分と同じような若者の居場所を作りたい。実現するためには仕組みをつくる職業に就く必要がある」と公務員試験に挑戦。家に戻り、父親に「全てを受け入れるので学校へ行かせてほしい」と嘆願。その後、見事、国家公務員試験に合格し、内閣府に入省。国づくりの基礎を学びます。

「広報課や大臣室、消費者庁に出向して地方消費者行政に携わるなどの経験は大きかったですね。社会や組織がどう動き、自分ごととしてどうしたら良いかを学べた気がします」(中山さん)

前述した、自治体や多くの企業や団体から理解を得て実現できた「理想のみらいフェス」の礎はこのときに得たのでしょう。

東京都出身の中山さん

転勤のある人との結婚を機に帯広へ地方移住

転機は突然訪れます。仕事帰りに皇居ランやスポーツを楽しむ仲間だった、現在の旦那さんから「北海道に転勤することになった。一緒に行ってくれないか」とのプロポーズを受けて結婚。2013年札幌へ、2015年に帯広へ地方移住することになりました

「まさかのプロポーズでしたよ。交際ゼロ日婚で北海道への移住を決意したんです。驚く人も多いのですが、私は幼い頃から直感で生きてきたので、結婚もフィーリングで選びました。もちろん、幸せですよ」(中山さん)

十勝に移り住んでからは、順風満帆な生活を過ごします。「子宝にも恵まれて3人の男の子を授かり、私が子どもたちに育ててもらっています。せっかくの農業王国十勝です。できるだけ自然と触れ合ったり、農業体験をしながら、ここでしか味わえない経験を子どもたちと得ています」(中山さん)

家族皆で挑んだ長男の肌アレルギー克服が原体験

家族皆で挑んだ長男の肌アレルギー克服が原体験

中山さんに十勝の良さを聞くと「十勝晴れ」「大自然」「人の温もり」など、十勝の生活が馴染んでいることを伺えます。

ところが、そんな中山さんに、またもや転機が訪れます。

「アレルギー体質の長男をなん度も皮膚科へ通わすうちに、薬を塗って治すという行為を繰り返すことに違和感を覚えたんです。自然界にはない、ケミカルな方法で治療を続けることが本当に良いことなのか。自然のままで克服はできないのだろうか。自問自答を繰り返す中、実は十勝にはナチュラルな食材の選択肢が豊富で、食べることや土台をつくるカラダのことまで支えてくれる産後ドゥーラさんや、困っている一部の消費者に想いを寄せて作っている農家さんとの交流をきっかけに、それを上手く食生活に組み入れれば、内側から改善ができるのは?と薬に頼らず、食生活や環境を改善することを試したんです。もちろん、脱ステロイド療法が長男にとっても辛いことだと言うことは知っていました。それでも、家族皆で克服しようと覚悟を決めて挑んだんです。時間はかかりましたが、長男の体質がみるみる変わっていったんです。『これだ』と確信に変わった瞬間でした」(中山さん)

食と環境

この“食と環境”の原体験を通して、中山さんの思考が「未来の子どもたちのために、本当の健康を得るためには」と変わっていきました。

中山さん夫婦がとった手法を揶揄する人もいるでしょう。それでも、長男はアレルギー体質のみならず喘息のような呼吸や中耳炎などすべてを克服することに繋がったという事実は変わりません。何より、中山さん家族は、皆でそれを支え合い、真の本質のようなものに触れたという家族の絆と強さを得ます。

「家族で食と環境の大切さを知りました。そして、多くの人たちが私たちと同じように苦しんでいるということも。これは社会課題なんです」と気づかされた中山さんが、いよいよ動き出します。

「ナチュラル輪おびひろ」でエシカル給食を目指す

すべては子どもたちの未来のため……。

2021年、中山さん家族の体験と自身の想いが具現化し、全国複数の市民団体からも情報収集しながら「エシカル給食」の普及を目指して活動する「ナチュラル輪おびひろ」を設立します。

最初に取り組んだのが、子どもたちの笑顔と健やかなる未来を願い、行政と地域と協働して目指す「学校給食をエシカルに」でした。

エシカルとは?
エシカルとは、倫理的・道徳的という意味ですが、よく表現されるのがエシカル消費です。地域の活性化や雇用などを含む、人・社会・地域・環境に配慮した消費行動のことです。これは、私たち一人一人が、社会的な課題に気付き、日々の買物を通して、その課題の解決のために、自分は何ができるのかを考えてみること、これが、エシカル消費の第一歩です。
エシカル

ただし、中山さんが考えるエシカル給食とは食へのこだわりではなく、子どもたちに「おいしい」ことを通じて、人や社会、環境への感謝の気もちを抱きながら、皆で支え合う環境づくりや行動そのものを指します。

「地域の食文化を大切にした献立、栄養価の高い旬のもの、鮮度高く環境負荷の少ない地産地消、環境保全型農業による農産物や、伝統的製法による調味料、成長に必要なミネラルやビタミンなど栄養たっぷりの食事、認証の有無でなく、顔の見える作り手の想い、心の豊かさ、生き方、在り方をも畑と食材を通して伝わる、そんな暖かさで溢れているもので、子どもたちの心と体が健康に育つこと。自分のことだけでなく、生きものすべての命にも思いを馳せて、化学物質過敏症の方にも環境にも配慮したエシカルな食材・ひと手間を知ること、食べることで、自分のおいしい!が地球にやさしいことを誇りに思える社会の構築です」(中山さん)

帯広市長と

市長や議員、行政を巻き込み、共に社会を創る

発足から1年足らずで、「ナチュラル輪おびひろ」の活動は、同じようなアレルギー体質の子どもを持つ親からの支持だけに留まらず、どんどん広がっていきました。

そこは、内閣府で政治組織や物事の動き方に触れ、心強い全国の仲間たちと試行錯誤しながら、無力でも、失敗をデータに、やってみないと分からない可能性を学んだ中山さんです。のちに「おいしい給食プロジェクト」を掲げる帯広市の米沢のりひさ市長とのトークイベントを通して、「エシカル給食」について語りかけ、同年11月には「ふるさと給食」がリニューアル。十勝産のジャガイモ、タマネギ、ニンジン、ナガイモ、ゴボウ、豆類などの野菜を使った献立が完成したり、2023年度に向けて新たに有機大豆を使用した味噌づくりを挑戦していることなど、中山さんの輪は、お母さんたち中心の想いをカタチに広がっていきます。

おいしい給食プロジェクト

他にも、帯広市内のレストランと共同で開発した理想の給食「エシカルカレー」や、ジビエ(鹿肉)を使用した伝統料理を意識した「エシカルちらし丼」、食育映画「いただきます2」の上映会、積極的に行政機関とのヒアリング、給食関係者、地元議員との懇談会を開くなど、中山さんアクションは留まりません。

保護者だけではなく、十勝の農家さんや企業さんの給食活動の取り組みにも共感した帯広市内の幼稚園やこども園などでは「オーガニック給食DAY」として十勝産の有機野菜、遺伝子組み換えをせず、無添加の餌で育った豚肉を使ったカレーを提供するなど、中山さんたちのアクションに、自らのアクションで共感を示す、団体も増えてきました。

たった1人からはじまったナチュラル輪おびひろの活動の輪は、どんどん大きくなり、そうして、実現したのが冒頭の「理想のみらいフェス」でした。

否定しない、押し付けない共感の輪だからこそ広がる

一方、多くの人たちがエシカル給食に賛同する理由は、中山さんのアクションへの共感だけではありません。

とかく、右向け右を向くことを好む日本人。オーガニックや有機作物が良いと言われると、それ以外をまるで悪とする傾向が強いのも日本人。しかし、中山さんは、自分の考えを押し付けようとはしません。

「わたしたちは、持続可能な子どもの未来のために全員が当事者となり、自律した一人ひとりが他者との違いを受け入れ、尊重し、対話から、全員が合意できる心地よい社会を創りたいと、願っています。エシカル給食は、その最終目標である理想のみらいへの架け橋になれる手段のひとつだと信じて伝えいくだけです。対話と行動を大切にエシカル給食の実現をとおして、みなさんと共により良い社会を目指したいと、思っています。それが私たちのアクションの根幹なんです。私たちが正しいわけではありません。子どもたちの未来に必要なアクションを皆で考え、実行しているだけです。たくさんの選択肢の中で、私が選んだ選択肢を子どもたちに見せているだけなんです」

社会や他人を否定せず、受け入れ、他人のせいにはしない。また、自分たちで考え行動した結果を受け入れ、間違えていれば改善を繰り返す。そんな自然体を目指す生き方に共感を抱く人たちが自然と“ナチュラル輪“の周囲に集まってくるのでしょう。

2022年12月4日、「第一回」として開催された「理想のみらいフェス」中山さんのアクションが止まらないかぎり、2023年の「理想のみらいフェス」も、また新しいイベントに生まれ変わって開催されるのでしょう。

そんな明るく前向きな気持ちを抱かせるのが中山三香さんです。十勝への地方移住をきっかけにライフスタイルのみならず、人生観を変えた中山さん。今後のアクションから目を離せません。

ナチュラル輪おびひろのアクションはホームページからご覧になれます。

https://shizenwa.com

ナチュラル輪おびひろ|代表 中山 三香

東京都出身。国家公務員を経て、結婚を機に2015年に十勝移住。妊娠中に食育アドバイザー資格、ママとベビーのヨガ講師認定を取得、2021年に「ナチュラル輪おびひろ」を発足。エシカル給食を掲げ、理想の給食プロジェクトや首長、議員、行政など積極的な対話を通して、普及啓発に図る。2022年12月4日には3000人以上が参加した「理想のみらいフェス」を主催。佐賀県出身の夫と息子3人の5人家族。

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