北海道移住を考えるあなたへ。今回の主役、韓国人実業家・梁泰植さんは十勝幕別町に拠点を移し、閉店した老舗〈杉野菓子店〉を継承。看板菓子〈ねこの座布団〉を復活させ、男爵いもの新スイーツで地域を盛り上げながら、創業100年を目指します。何度も成功してきた梁さんが十勝で目指すものとは……。
梁泰植(ヤン・テシク)/Yang Taesik
1969年生まれ。韓国・ソウル出身。2000 年に来日して東京に拠点を構え、AI クラウド分野で最先端の IT 企業を創業して以来、20年以上にわたり韓日両国のビジネスを結ぶ架け橋として活躍。2025年に十勝・幕別で TOKACHI BARON 株式会社を設立し、老舗〈杉野菓子店〉を事業承継。ゴルフと筋力トレーニングで体を鍛え、音楽を愛でながら、プロ級の韓国料理で人をもてなすことが何よりの楽しみ。
「十勝は北海道の縮図であり、食材の宝庫です」と語るのは、韓国出身の事業家・梁泰植(ヤン・テシク)さん。1969年にソウルで生まれ、2000年から東京でIT企業を経営してきた梁さんは、AIアプリやクラウドソリューションの開発で百戦錬磨のキャリアを築きました。しかしデータの世界を突き詰めるほど、「人の心を揺さぶる“味”を作りたい」という思いが募ったといいます。
2025年春、事業拠点を探して訪れた十勝の大地に足を踏み入れた瞬間、黄金色の畑が“未開拓のブルーオーシャン”に見え、「ここしかない」と直感。地元の不動産会社に紹介されたのは、2022年に閉店した創業93年の「杉野菓子店」でした。
前述した通り、梁さんが十勝の土を踏んだのは2025年3月上旬のこと。そこで出会った、杉野菓子店の元店主の娘・杉野留美子さんから「創業百年を目指したかった」という亡き代表の思いと、看板菓子「ねこの座布団」が地域に深く愛されてきた歴史を聞いた瞬間、梁さんの胸は熱く震えました。「この思いに応えたい」と、その場で事業承継を決意したのです。
閉店後、留美子さんは北海道の事業承継・引き継ぎ支援センターに相談しながら店の存続を模索していたそう。梁さんが手を挙げたと伝えた瞬間、長く曇っていた家族の表情に光が差し込んだに違いありません。そうして、梁さんは新会社「TOKACHIBARON(トカチバロン)」を設立。今後は人気メニュー「ねこの座布団」を復活させる他、ジャガイモを使った北海道銘菓を開発していくと言います。
4月12日、閉店していた店内で開いた韓国式の引っ越しパーティーには留美子さん、支援センター職員、飯田晴義町長ら約30人が集いました。飯田町長は「愛された店と菓子が戻るのは本当にうれしい。町の食材で新たな名物を生んでほしい」とエールを送り、梁さん自慢のチヂミやトッポギが並び、町民約30名が舌鼓を打ちました。「料理は国境を越えるパスポートです」と梁さんは言い切ります。
ほかにも、久しぶりにねこの座布団を手にした参加者らは「懐かしさと軽やかさが同居している」「口どけが嬉しいです。これを今後も食べたいんです」と再開を待ち望む声を再認識。
何より、梁さんが「伝統は守るだけではなく、更新して次の100年へ橋渡しするものです」と語る通り、人気メニューを引き継ぎつつも、次なるスイーツ開発に期待が高まります。
現在、梁さんは町の空き施設改修事業を活用してキッチンを刷新し、6月中の再オープンを目指しています。自身は料理人ではないため、十勝在住のパティシエを雇用する計画。「地域に愛された店と菓子で創業百年を迎えたい。そして男爵芋など地元食材で全国区の銘菓を作り、観光客を呼び込んで街に賑わいを生み出します」と、梁さんは静かに闘志を燃やしていました。
「北海道、とりわけ十勝にはスイーツの原材料や味のレパートリーを増やすのに適した素材がいっぱい。東京の知人であり、フランス人パティシエにも協力してもらい、新たなスイーツを開発したい」(梁さん)
一方で、年内にオンラインショップを開設し、国内外発送に対応。ほかにも、例えばAI需要予測でフードロスを最小化し、SDGsへの貢献や地元高校と連携し「高校生パティシエ育成プログラム」、2028年までに韓国・台湾・シンガポールでポップアップ展開していきたいと未来を語る梁さんは「十勝は可能性の金鉱です。皆さんと一緒に掘り当て、甘味で世界を驚かせます」と力強く締めくくります。
梁さんが次に掲げた旗印は、社名にも冠した男爵芋ですが、蒸した男爵芋を裏ごししてバターとアーモンドプードルで練り上げる「男爵フィナンシェ」澱粉で“雪肌”のような艶を出した「男爵プリン」皮をキャラメリゼして散らす「ほくほくクランチ」などなど……。
商品開発には帯広や音更の若手パティシエを積極雇用し、地産地翔の雇用創出を図ります。「男爵芋は十勝アイデンティティです。農家の粒粒辛苦を世界へ発信したい」と梁さんは語気を強めます。
一方、2025年5月21日には、帯広―ソウル定期便が就航。梁さんは「韓国のSNSで#TokachiSweetsがバズる可能性は高いでしょう。K-POPがSpotifyで世界を踊らせたように、十勝スイーツで人々の心を跳ねさせます。これぞ“スイーツ外交”です。まずは、十勝の魅力を発信して、訪れる韓国人に韓国語で語りかけていきますよ」と、さすがは住民票を移動した十勝民・梁さん。
そんな梁さんの趣味はゴルフと筋トレ、そして音楽鑑賞。最後に梁さんはビジネス論をゴルフでこう喩えます。
「先手必勝で芯を捉えれば、球は真っすぐ遠くへ飛びます」と語るとおり、切磋琢磨しながら挑戦を続ける覚悟を示します。
“甘味創生”に寄せる期待
データの大海を航海してきた梁泰植さんは、今、十勝の大地に錨を下ろしました。伝統菓子を蘇生させ、新たな男爵芋スイーツで世界市場へ挑む姿は、まさに“甘味創生”のフロントランナーです。途絶えていた〈ねこの座布団〉の湯気が再び立ち上る瞬間を、どうかお見逃しなく。
現在、1929年創業の老舗「杉野菓子店」を次世代へ引き継ぐ再生プロジェクトを進めています。DIY・庭作り・掃除が好きでお手伝いができる方、内装リメイクの作業補助など、どなたでも大歓迎です!
■ 活動場所:杉野菓子店(幕別町本町122)
■ 活動日程:5月15日〜6月25日の間で、ご都合に合わせてご参加いただけます
■ 持ち物:明るい笑顔と、汚れても大丈夫な服装
■ DIY用具、軍手、防じんマスク、電動ノコギリなど、作業に必要な道具はすべて揃えています
参加された方には、韓国人シェフ?によるオリジナル韓国料理(チヂミ・トッポッキ・チャプチェなどを予定)を提供いたします!学生の方、移住された方、町づくりに興味のある方、少しでも心が動いた方は、ぜひお気軽にご参加ください。
【お問い合わせ】
TEL:090-5213-0305(担当:ヤン)
Mail:tokachiyang@gmail.com