今回の主役は、北海道・十勝に移住した三浦豪さん。米国シアトルのワシントン大学を卒業し、世界最大級のプロフェッショナルサービスファーム「プライスウォーターハウスクーパース(PwC)」の戦略コンサルティングチーム、Strategy&で活躍。その後、シンガポール拠点のベンチャーキャピタル(VC)で日本と東南アジアのスタートアップ企業に関わった三浦さんが十勝・帯広に移住した理由とは?現在、そして未来はどうするのかを聞きました。
みなさん、三浦豪さんをご存じですか?彼の名前は、世界中のビジネス界でそこはかとなく囁かれているんです。というのは言いすぎですが、彼が今、北海道十勝に彗星の如く現れたことは間違いありません。
先ずは、彼の華麗なる経歴を覗いてみましょう。
山形出身の三浦さんは、アメリカの名門ワシントン大学(University of Washington)を飛び出し、世界157カ国742拠点を持つ世界最大級のプロフェッショナルサービスファーム「プライスウォーターハウスクーパース(PwC)」の戦略コンサルティングチーム、Strategy&(旧ブーズ・アンド・カンパニー)で、国内外の省庁・大企業向けに戦略コンサルティング案件を複数経験。
その後、2017年にシンガポールに拠点を置くベンチャーキャピタル「Reapra Pte., Ltd.」に入社し、本社経営企画兼社長室業務と投資先支援に従事。日本と東南アジアを中心とした多くのスタートアップ企業を担当します。
PwCでの華麗なるキャリア、そしてシンガポールのベンチャーキャピタルでのアジアを舞台にした功績…。彼の経歴を紐解くと、まるで冒険小説のようですよね。
ですが、彼の真骨頂は、何と言っても2021年に設立した株式会社dandan。"だんだん"と変化を楽しむ哲学は、まさに今の時代にピッタリ。そんな彼は、ことあるごとに「急ぐ必要なんてない!」と語ります。
これまで、時代の最先端で秒刻みの世界経済の市場で活躍してきた彼が「急ぐ必要がない」と語るには理由があります。
「2020年12月にコロナウイルスが流行したことで、リモートワークが中心の生活となり、シンガポールの企業に在籍しながら日本に帰国を決断し、その際に選んだ場所が福島県糸島市だったんです。それまでは多くの起業家と接した経験からも、自分は起業には向いていないのではないか、と決めつけている部分がありました。ところが、糸島で生活する中で、福岡の湘南と呼ばれたりすることもある糸島は、関東からの移住者も多く、自由なカルチャーが根付いていて、誰かに言われたわけではなく『生き急ぐことだけが人生ではない』と語られていることに気づいたんです」(三浦さん)
意外にも、三浦さんは当初は起業に対して「怖い」という思いが先行。自分には向いていないと言い聞かせていたそう。
それを変えたきっかけが、糸島での暮らしだったというわけです。
「怖いという気持ちから、思いきりやってみても失うものないし、死ぬわけじゃない。また人生はやり戻せると思った途端に浮かんだのが『人生のなかで、一旦は自分が大切にしたいテーマで起業してみることが、自分にとっての[だんだん自己変容]に繋がるのではないか』と思ったんです。それが起業の理由の一つです」(三浦さん)
そうして、2021年に設立した株式会社dandanとはどんな会社なのでしょう。
会社概要には、「タイムマネジメント・生産性の向上を目的としたプログラムの提供」「人材育成に纏わる経営コンサルティング事業」「自分らしさを探求し、自己変容し続ける働き方、生き方の研究・実践事業を提供」と書かれていますが、皆さんわかりましたか?
「dandanのミッションは、その名の通り、人も会社も社会も『だんだん』と変容させていくきっかけをつくることです。ご存知の通り、現代社会は変化が激しく、私も含め、皆が急いでいるかのように競争社会を生きている側面が強いのではないかと感じています。変化の早い世の中から脱落しないよう、自分自身を無理やり急いでアップデートさせようとしているはずです。ところが、糸島ではゆっくりとした時間が流れるなか、自分の好きなことを中心に仕事をしたり、楽しそうに生きている人たちで溢れていました。もちろん、成長を急いで何かを学ぶことや、変化することも重要ですが、それと同時に、焦らずに、長期視点でゆっくり成長していくという考え方も、これからの時代では重要になってくるのではないか、と考えています」(三浦さん)
確かに、一度の失敗ですべてを失うという風潮は根強いかもしれません。
三浦さん曰く「失敗や行き詰まりを感じるときは、長期視点で捉え直し、再出発すればよい。短期的に居場所を失うことや、注目されていないのではないかという、要らぬ心配が人を焦らせるんです。当社の事業のひとつ、タイムマネジメントという時間の使い方の研修も、昭和時代のような『24時間モーレツに戦えますか』ではなく、長期を見据えた持続可能な、戦略的な時間管理が求められていることを伝え、がむしゃらに頑張ることだけが正解ではない、という考えを紐解いています」と語ります。
新境地を開き起業した三浦さんですが、自身でも大きな環境の変化に身を投じます。
長女が産まれたのをきっかけに、2023年1月に奥様の故郷である北海道士幌町へ移住。起業した会社は東京に登記を置いているが、コロナ禍でのシンガポール時代に、リモートワークでも大部分の仕事が回ることを痛感。離れた場所でも対応できる仕組みを構築したことで実現したという。
日本の南端九州から北端である北海道十勝へ。再出発というわけではないが、環境を変えた心境はどうなのでしょう。
「今のところ、十勝は良いことばかりですよ。時間をいっぱい使えるし、心がおだやかになります。本当に空がきれいで、良いことしかないです」と絶賛。
気になる冬についても「東京や本州の方が寒い(家の中)ですよ。北海道は家の中が暖かく、半袖短パンで過ごせます。2023年の夏頃から帯広に移住しましたが、帯広はコンパクトな街なので各種インフラの利便性も高いと思います。何より、空港も近く、月に一度に東京へ行くのが便利ですね」と褒めちぎりです。
もちろん、コンサルタントとして世界を見てきた視点も健在で、十勝・帯広をこう分析します。
「帯広のある十勝はポテンシャルが高いと感じています。日本一の農業大国は伊達じゃなく、一次産業が安定収入を地元に潤いとして与えています。その結果、関連産業が成長し、経済成長もしています。高規格幹線道路の整備や地政学的にも東北海道の拠点として、物流においても重要な役割を担い続けるのではないでしょうか。十勝には、日本中を探しても他にはない特徴があります。十勝は、普通の北海道の田舎ではない唯一無二の場所になると感じます。ここで何かをはじめようという気持ちにもさせてくれますよね」(三浦さん)
さて、そんな三浦豪さんが十勝で何を始めるのか、一体どんな夢を追いかけるのか…。彼の次なる一手に、私たちはワクワクが止まりませんね!
最後に、彼の言葉を再度引用してこの記事を締めくくりたい。
「人は20年かけて熟成していく。行き詰まったと感じても、だんだん成長していくという概念を忘れない」
三浦豪さん、これからの活躍を心より応援しています!
今後、TCRUでは三浦さんが気になる十勝の経営者や起業家との対談を掲載していきますのでそちらもご期待ください。
株式会社dandan | 代表取締役 | PwCの戦略コンサルティングチーム、Strategy&(旧ブーズ・アンド・カンパニー)にて国内外の省庁・大企業向けに戦略コンサルティング案件を複数経験したのち、2017年にReapra Pte. Ltd.(シンガポール) に入社し本社経営企画/社長室業務および投資先支援に従事。2019年後半から「自我をしなやかに活用したあの手この手の実践」を自己のテーマに据え、主にベンチャー企業の経営者・マネジャー向けに生産性向上を支援している。2021年に株式会社dandan創業。University of Washington 卒業。山形県山形市生まれ。