十勝の求人から見える地域経済のトレンド

北海道・十勝地域では、農業・畜産業の基盤が堅牢である一方、人口減少・高齢化・人手不足が進行中です。そんな中で求人情報は、地域経済の「今」と「これから」を見通すバロメーターになっています。特に、事務・管理、介護・福祉、建設・製造業などの求人動向には、地域企業の課題意識や成長分野を映す力があります。十勝・帯広における最新データを交えながら、求人トレンドから見える地域経済の姿を描き出します。

求人倍率・雇用情勢の現状

1. 2025年6月、帯広公共職業安定所の集計によれば、月間有効求人倍率は0.91倍 となり、前年同月より0.02ポイント低下、2ヶ月ぶりに前年水準を下回ったとの報道があります。
2. また、TCRU内の関連記事によると、帯広の5月時点の有効求人倍率も0.91倍と報じられており、「求職者1人に対して求人0.91件」という “買い手市場” 的な状況が発生しているとの解説もあります。
   
3. 北海道全体の動きを見ると、常用雇用を対象とした月間有効求人倍率は0.93倍という数字も報じられており、北海道地域全体でも求人・求職の需給バランスが非常にタイトであることがわかります。

これらの数字は、求人件数自体が減っているわけではなく、求職者数・条件のミスマッチが拡大している可能性も示唆します。

農業・畜産が牽引する十勝経済 — 規模と動向

求人トレンドを語るうえで、十勝の“経済の屋台骨”である農畜産業の実績を無視することはできません。

1. 2024年産の十勝管内23農協の農畜産物取扱高（概算値）は3,770億円となり、過去最高を記録。前年比約5.5％増です。
2. 取扱高の内訳を見ると、耕種部門（畑作物・野菜など）が約39.1％、畜産部門が約60.9％を占めています。
3. 帯広市域の農業産出額推移も公表されており、令和6年度には市内合計で 約358億円（＝3,580億円相当換算） に相当する規模となっており、十勝全体の数字と整合性があります。

帯広市公式WEBサイト

この農畜産業の取扱高の大きさは、十勝経済の裾野の広さを示しており、地域資源・地場産業との連携こそが求人需要の背骨になっています。

業界別求人傾向と読み解き

以下、主要業界別に求人傾向とその意味を整理します。

事務・管理部門

• バックオフィス求人は地域企業の体制づくり強化の表れ
• 給与例として、一般事務：月給18〜25万円、管理職：24〜38万円程度の求人が散見される
• 求人票には「総務・経理兼務可」「業務改善スキル歓迎」などの文言が目立つようになっており、従来の事務から一歩進んだ業務幅が期待されています

介護・福祉

• 高齢化地域である十勝では、介護人材需要が常に高い
• 求人数は施設運営だけでなく制度・調整管理系の事務系求人も目立ち始めており、サービス運営を支える仕事の比重が上昇
• 給与・待遇改善、資格取得支援などを条件に掲げる法人も増加

製造・建設・物流

• 農産加工・食品関連の製造業は地元資源とのシナジーで求人を維持
• 建設業界では公共インフラ工事・農業施設整備需要が継続的に発生
• 物流は農産物の出荷シーズンに合わせた人員増強が常態化

求人傾向から読み解く地域経済の方向性

1. 背後支援機能（バックオフィス）整備が重視され始めている
2. 介護・福祉は地域の社会基盤として不可欠な産業
3. 農畜産を中心とした地場産業力の高さが、他産業の求人を支えている
4. 業務効率化・各種兼務型人材のニーズが高まる
5. 求人倍率が1倍を割る状況下では、求人側の条件設定や人材育成力が差をつける要因になっている