帯広・十勝には、年齢や出身に関わらず「やってみたい」を応援してくれる土壌があります。起業家育成プログラムTIP11の最終発表会には、暮らしや仕事の中から生まれた9つの事業構想が集まりました。移住を考える人にも、転職や独立を考える人にも、「ここなら挑戦できる」と感じていただける一日でした。

帯広信用金庫が主催する「とかち・イノベーション・プログラム(TIP)」は、十勝で新しい事業を生み出すことを目的に2015年にスタート。これまでに80件の事業構想と24社の法人が生まれ、11期目となるTIP11でも、また新しい9つの挑戦が形になりました。

TIPの合言葉は「ゼロから0.5へ」です。いきなり完璧を目指すのではなく、小さく形にしてみる。その過程を、金融機関や自治体、専門家が横で伴走してくれます。「失敗したら終わり」ではなく、「やってみた経験が次につながる」という空気が、帯広・十勝には根づきつつあります。

TIP11の最終発表会「事業化支援セッション」に登場した9チームは、どれも参加者自身の人生や原体験から生まれたプランでした。
飲み会の〆をラーメンではなく味噌汁に変え、十勝の食材で健康的な夜をつくろうとする「ICHIJU」。
空き家を改修し、「1週間自分の店を試せる」宿泊一体型チャレンジショップを構想する「宿借商店プロジェクト」。

地域のパン職人や農家と子どもたちをつなぎ、いたずら心あふれるアート体験で非認知能力を育てる「アートカチ」。
ほかにも、国産食用アーモンドの栽培メソッド確立、十勝と海外をつなぐ食の視察モデル、子ども専用の電動バイクパーク、十勝を舞台にしたリトリートプログラム、記念日をアップデートする体験ギフトなど、多彩な構想が並びました。
共通しているのは、「社会のために何かしなきゃ」と無理をして考えた企画ではないことです。

自分や家族の悩み、自分が一番ワクワクすることからスタートしているからこそ、プレゼンには自然と熱がこもります。会場には、「自分もいつか挑戦してみたい」と感じさせる空気が広がっていました。

TIPには、帯広信用金庫をはじめ、十勝19市町村、とかち財団、商工会議所、日本政策金融公庫、野村総合研究所など、多くの機関が関わっています。事業計画の壁に当たっても、「次は誰に相談すればいいか」が見えやすい環境です。
空き店舗やイベントスペース、駅前の一角、マルシェ会場など、スモールスタートできる場所が身近にあります。TIPで生まれた味噌汁スタンドやチャレンジショップのように、「まずは1日」「まずは1週間」から試せるのは、地方ならではの強みです。

十勝では、農業・食・観光・ものづくり・IT・教育など、異なる分野の人たちが日常的に顔を合わせています。素材に困ったとき、撮影場所を探したいとき、リトリートの会場を探したいときなど、**「あの人に聞いてみよう」**と思える関係が生まれやすいのも特徴です。

TIPの参加者は、起業希望者だけではありません。会社員、公務員、フリーランス、移住者、Uターン、子育て中の方まで、背景はさまざまです。「独立はまだ先だけれど、いつか自分の仕事をつくってみたい」「まずは副業から始めてみたい」という人にとっても、TIPは心強い“練習の場”になっています。

帯広・十勝での働き方は、企業に入って新規事業に関わることもあれば、地域のプロジェクトに関わりながら自分のプランを育てていく形もあります。どちらを選んでも、「やってみたい」と口にした瞬間に、誰かが必ず応えてくれる。この“人との近さ”こそが、十勝のいちばんの資産かもしれません。

TIP11の総評で、米沢帯広市長は「ここからが本当のスタートです」と参加者に語りかけました。発表の7分間よりも、その後の一歩一歩を、地域全体で支えていこうというメッセージでした。
移住を考えている方、転職やキャリアチェンジを考えている方、「今のままでいいのかな」と少し立ち止まっている方。帯広・十勝は、そんな気持ちを抱えた人が「よし、やってみよう」と前に進みやすい場所です。

TCRUでは、TIP卒業生が関わる求人や、挑戦を応援してくれる企業・自治体の情報も発信していきます。
もっと詳しくTIP11の9事業や当日の雰囲気を知りたい方は、詳細レポートを掲載しているSUMAHIRO(スマヒロ)の記事もあわせてご覧ください。
ここで生まれた小さな一歩が、あなたの次の一歩につながるかもしれません。