地方創生企業「そら」が描くこれからの十勝 -
ふく井ホテル社長 林佑太-

Nov. 03
2870

北海道十勝、豊穣の大地が生んだ一期一会の対話。地方創生を牽引する企業「そら」。帯広に新天地を求めた移住者。古き良き「ふく井ホテル」の継承者として、林佑太氏がどのように"新しい風"を吹かせるのか。その素顔とは?予測不能な物語が今、幕を開けます。(取材:三浦豪 / 記事・写真:スマヒロ編集部)

INTERVIEWER | 三浦 豪 | みうら ごう

株式会社dandan 代表取締役 | PwCの戦略コンサルティングチームStrategy&、ベンチャーキャピタルの Reapraグループを経て、2021年に株式会社dandanを創業。人や組織は「だんだん」変容するというコンセプトで、企業研修や経営支援、コンサルティングを行っている

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https://tcru.jp/articles/immigrant

三浦豪×林 佑太さん

2020年4月、縁もゆかりもない十勝・帯広で元野村證券の米田健史さん、水野彰吾さんと元日本生命の林佑太さんらが立ち上げたのが地方創生ベンチャー「株式会社そら」です。今回の主役は、株式会社 そら藤丸・かぜ事業推進責任者兼ふく井ホテル社長の「林佑太」さん。

PROFILE | 林 佑太 | はやし ゆうた

札幌市出身。北海道大学卒業後、日本生命入社。在籍の11年間に、法人部門の企画・戦略設計部門、人材採用責任者、本店組織(約5,000名)の従業員代表(労働組合委員長)等を経て、大学時代の同級生米田健史社長らと株式会社そらを創業。株式会社そら 藤丸・かぜ事業推進責任者/北海道帯広駅前ビジネスホテル「ふく井ホテル」代表取締役

そら誕生秘話。10年越しに聞いた大学時代の約束「起業しような」

三浦 唐突ですが、社長の米田さんの「親友」なんですよね?

林 はい、私は札幌生まれ札幌育ちなのですが、米田とは北海道大学の入学式のときに、たまたま隣同士に座っていたことがきっかけで、それからもう約20年来の付き合いになります。濃い大学生活を経て、私は日本生命へ、米田は野村証券に就職となりました。

米田は、大学4年生の頃、野村證券に入社が決まっていたのですが、「北海道で起業する夢が出来た」と言い出したんですね。最初は「何を言ってるのかな?」と思ってたんですけど、その後、実際に北海道中を旅行にしたり、お酒を飲みながら話しているうちに「それって面白いかも」と変化して行ったのをよくよく覚えています。そして大学生の最後、卒業式の別れ際に、米田から「佑太、将来は北海道で起業しような!その時は絶対誘うからな」と言って来て、当時の自分もかっこつけて「分かった!どんなに会社で上手く行ってても、自分の環境がどんな状況でも二つ返事でYESと言ってやるよ!」と言って別れたんです。それがまさか11年後に本当に来るとは思いませんでしたけどね!笑

三浦 林さんは法学部を卒業したのち、保険会社に進まれたということですが、大学入学当時はどのようなキャリアを見立てていたのでしょうか。

法学部ですから、大学受験の時は弁護士を目指したいと思いながら入学しました。ただ、大学の講義で外来講師として来てくれている弁護士の先生の話などを聞くうちに、自分の思い描いていた姿というか「なりたい大人像」とは少しギャップを感じてしまったんです。そんななかで、正直、何かしたいことがあって保険業界を選んだというよりは、「どうせ仕事をするなら100億や1,000億を動かすような大きな仕事をしたい!」と思い、その年の就職人気ランキングで上位だった会社数社を受けて、フィットしたのが日本生命でした。

三浦 なるほど。日本生命ではどのようなお仕事をされていたのですか?

林 日本生命では、在籍11年の間に法人部門の企画・戦略設計部門、人材採用責任者、本店組織(約5,000名)の従業員代表(労働組合委員長)など、様々なことを経験しました。

その間も、米田とは近況報告をするために毎年最低でも年1回は会っていました。その間にお互い結婚したり、子どもが生まれたりといったこともありましたが、疎遠になることもなく仲良くしていました。

転機が訪れたのは、私が出世の登竜門とされる労働組合などの仕事を経て、自身の希望していた法人部門の戦略設計部門に配属され、3人の子宝に恵まれ、妻が大好きなディズニーランドの近くにマンションを購入し、まさに順風満帆なキャリアを送っていた真っ只中でした。久しぶりに米田に会うと、開口一番「一緒に起業しよう」との一言。米田にも子どもが2人いて、千葉に家を買ったばかりのタイミングです!笑 お互いにとって、まさに一番考えられないタイミングでの誘いが米田から来た形になります!笑

三浦 それは、恐るべしタイミングですね。

林 本当ですよね。私も最初に聞いたときは「このタイミングか!?」と驚きました。けれど、「起業しよう」と聞いた瞬間、大学時代のあの時の「北海道で起業しような」という言葉をまさにフラッシュバックのように思い出し、2秒後には二つ返事で「わかった」と返答していた自分がいたんです。その後、語り合ううちに「会社名は『そら』にしよう」と決めました。

優しい奥様のはじめての重低音「は?」

三浦 そんなにすぐに決断されたとは驚きました。とはいえ、順分満帆だった会社員生活に終止符を打つのは大変だったんじゃないですか?

林 わかった」と返事をしたのが2020年の1月頃で、その2ヶ月後の3月には退職していました。大企業だと1月にはもう新年度の人事構想が固まっている時期なので、会社を相当バタつかせてしまったと思いますし、申し訳なかったなと思います。

三浦 すごいスピード感で物事が進んだんですね。

林 いえいえ、最大の難関は妻でした。私の妻はいつもとても優しく、例えば、私が財布や携帯電話をなくすようなミスをしても笑って優しく「仕方がないよね」と許してくれるような

とてもとても素敵な性格です。なので、今回の起業の件も「そうなんだ!頑張ってね!」と言ってくれるかなぁと勝手に期待していたんですが、私が「会社を辞めて起業する」と言った途端、これまで聞いたことがないくらいの重低音で「は?」との一言

むちゃくちゃ怖くて、妻の開けてはいけない何かの扉を開いてしまった感はありましたね!笑 結局は、私が単身赴任する形で「まずは見守ってほしい」というお願いを聞いてくれ、チャンスをもらいました。あれから3年半ですが、妻と子どもは引き続き千葉に住んでいます。とはいえ、空港も近くドア・ツー・ドアで2時間半ほどで帰れるので、寂しくはないです。

三浦 そうして起業したのが2020年。世間はコロナ禍の真っ只中で、肝心の事業アイデアもまだ定まってなかったとお聞きしました。

林 そのとおりです。今振り返ると、周囲の皆さんにはどう映っていたのだろうと思いますよ!笑 ある意味では滑稽にも映っていたのかなと!笑

地域の方々に「初めまして、株式会社そらです。元々金融機関出身の3人です。でも金融はやらないんです。食と観光をテーマにいろんな事業をやっていきます」と話して周っていたわけです。

当然、周囲からは「食と観光の経験があるんですよね」と聞かれるのですが、そのたびに「ありません。でも頑張ります」と返答するもんですから、会った方も目が点になっていたと思います!笑

ところが、転機はすぐに訪れます。前述の通りにいろいろな方にご挨拶をしていた矢先に、フェーリエンドルフを運営していた西さん(現:そら不動産管理責任者)と出会い、あっという間に経営統合することになりました。

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クラファン5,000万円がターニングポイント

三浦 すごい流れですね。林さんはいま、ふく井ホテルの代表も務めていますが、ふく井ホテルとの関係はどのように近づいていったのでしょう。

林 「株式会社そらです。頑張ります」から「フェーリエンドルフを運営しているそらです」に変わり、敷地内に冷燻工房をクラウドファンディングを使って建設したり、「コロナ禍でも頑張るのがそらです」というメッセージが徐々に発信できるようになっていきました。

すると、地元メディアに取り上げていただけることも多くなりました。一番の転機は、冷燻工房の建設資金をクラファンで5,000万円集めた時でしょうか。ちょうど、フェーリエンドルフで温泉施設を建てたいけど岩盤の問題が出てきて困っていたときです。前ふく井ホテルの社長が「後継者問題」に悩んでいた時期とも重なり、「冷燻工房で5,000万円」の記事を前社長が見て金融機関を通じて声をかけていただいたことが、最初のきっかけですね。

三浦 なるほど。フェーリエンドルフでの取り組みがきっかけとなったんですね。ちなみに、そらにも複数人のメンバーがいるなかで、林さんがホテルの代表に就任されたのは、何か背景があるのでしょうか。

林 当時、私はフェーリエンドルフを担当していたのですが、クラウドファンディングの達成で一区切りし、強いスタッフも揃っていて現場が回るようになっていたタイミングでもあったので、その流れのままに「ふく井ホテルは林が担当する」となりました。

とはいえ、およそ100年もの歴史のあるホテルです。従業員の方々も30年や40年働いている方たちばかりで、当時36歳の私なんて、下から数えた方が早いわけです。就任当初は、従業員の方々から「試されているな」と感じたりもしましたが、それでも、できること、正しいこと、皆が喜びを感じながら働けるような環境にしていくことだけを考え、手を打っていきました。

三浦 歴史のある企業に、急に入ってきた若い経営者が信頼を得ていくことはそう簡単ではないですよね。その過程にはどのような努力があったのでしょうか?

もちろん、ホテル業界の知識や経験では勝てません。私にできることは「少しずつ結果を残すこと」でした。新たなお客さんを連れてきたり、世間からの評価を高めたりすることに邁進しました。最初は「これから先どうなるのかな?」という不安を持っていたスタッフもいたかと思いますが、少しずつ結果が上向きになってくるにつれ、全従業員が「みんなでよりよくしていこう」という姿勢を持ってくれているのがとても嬉しいです。

三浦 当たり前ですが、実際に業績が上向いていくことは組織にとって本当にポジティブな影響がありますよね。林さんは現場の業務には、どのように関わられていたのですか?

林 それぞれの従業員がもつ技術や経験をより多くのスタッフに共有するべく、マニュアル作りを進めたり、既に持っている質の高いレストランやモール温泉などを上手く情報発信していくことなどに力を注ぎました。結果的には、新しいことに沢山取り組んでいるというよりも、過去から受け継がれている資産がより良く活用されるような取り組みを心がけています。

頭の中は「ふく井ホテル」一色。駅前のホテルから、十勝を盛り上げていく

三浦 ふく井ホテルの今後の展望は?

林 ご存知の方もいらっしゃる方と思いますが、ふく井ホテルは、駅前で唯一のモール温泉を源泉で保有している歴史あるホテルです。地元の方にとって「モール温泉」は当たり前かもしれませんが、温泉業界では世界的にも珍しい価値の高い泉質なんです。

今後は、今まで以上に「モール温泉」を全面に打ち出していこうと思っています。たまたま宿泊なさったお客様の中にコスメ(化粧品)を製造している会社の会長がいらっしゃって、先日、「モール温泉を使った化粧水」の開発をし、販売開始したりしました。他にも、まだ内緒なのですが(インタビューで言ったら内緒でないですね!笑)その他モール温泉を使ったプロダクトを検討していますので、楽しみにしてください

三浦 林さん個人としての人生計画はどうですか?

林 私がふく井ホテルを担当したからには、このホテルをもっともっと知ってもらい、多くのお客様にご利用いただくように試行錯誤していくことが第一義であると思っております。最初は3人だった「そら」にも、多くの仲間が増えました。

帯広ロータリークラブやその他地元の団体にも入れていただき、少しずつですが、まちづくりにも携われている感覚を持てています。これまで出会ったひと、これから出会う人、私と関わるすべての人達を幸せにできるよう、十勝を盛り上げるのが使命だと思っていますし、私たちの取り組みに興味を持っていただける方がいたら、是非ご連絡を頂きたいです。

三浦 最後に今一番の課題(困りごと)はなんですか?

林 ふく井ホテルの施設のリニューアルをいつやるのかということと人材の採用でしょうか。

特に、人材については、ふく井ホテルにはレストランがあり、業績自体はコロナ前水準までに回復し順調ではあるものの、先日、副料理長が定年で辞めてしまったんですよね。30年超に亘り活躍していただいた方なので、その代わりになる人と言ったらなかなか見つかりません。もちろんその他にも挙げたらキリがないくらい、細かいものも含めたら課題はたくさんあります!そう考えると私の頭の中は、ふく井ホテルでいっぱいですね!笑 

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ただ、すべてを解決するためにも、まずは売上をしっかりと上げていくことが、現在の最大ミッションであると考えています。絶対に解決してみせますよ!

三浦 ありがとうございました!


取材を終えて

大手保険会社でのキャリアを捨て、コロナ禍に新しい挑戦に踏み切った林さんのいい意味でのフットワークの軽さと、経営を受け継いだ歴史あるホテルをより良いものにしていきたいという実直な想いが伝わる楽しい会話でした。次回は、株式会社そらの金庫番・水野彰吾さんです。

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