今回は、会社を経営する社長さんたち必見の内容です! 今、外国人の方を採用すると、「外国人雇用助成金」を受け取れることはご存じでしょうか? 助成金には様々な種類や条件があるので、受け入れ前に知っておいて得すること間違いなしです!
まず、「助成金」とはなんでしょうか。助成金と似たような言葉として、「補助金」という言葉もよく聞かれるかと思いますが、この二つには違いがあるのはご存じでしたか?
どちらも、返済の必要がない給付金であるという点は同じですが、助成金は厚生労働省、補助金は経済産業省の管轄となっているのが違いです。外国人雇用に対する支援策は、厚生労働省、経済産業省それぞれから打
ち出されていますので、外国人材の雇用にあたって有効活用できるとよいでしょう。
また、自治体によっては、「日本語の教育」など、外国人の生活を支えるため取り組みが実施されていることも多くあるので、こちらもよく調べてみることをおすすめします。
では早速、外国人を雇用する際に利用できる助成金について、解説いたします! 助成金には以下のようなものがあります。順に説明していきましょう。
外国人を雇用する際、どうしても、日本の労働基準法や雇用に関するルールについての知識が足りなかったり、言語の違い等から事業主との間でトラブルが起こってしまったりする可能性があります。
そこで、「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」は、外国人特有の事情に配慮した就労環境の整備を行って、外国人労働者の職場の定着をはかるために、事業主に対して支給される助成金となっております。主な受給要件については以下の通りです。
受給額については、受給要件を満たした事業所に対して支払われます。
※支給対象経費:通訳費、翻訳機器導入費、翻訳料、弁護士、社会保険労務士等への委託料金、社内標識類の設置・改修費
雇用調整助成金は、経済上の理由によって事業の縮小を余儀なくされた事業主が、雇用の維持を図るための休業、教育訓練、出向に必要な費用として利用できる助成金です。主な受給要件については以下の通りです。
受給額については、対象労働者1人あたり8,490円が上限とし、事業主の負担した金額に対して、助成率を乗じて算出されます。また、教育訓練を実施した場合は、1人1日あたり1,200円が加算されます。
トライアル雇用助成金は、安定的な就職が困難な求職者に対して、ハローワークや職業紹介事業者等の紹介により、一定期間、試行雇用した場合に支給される助成金です。求職者の早期就職の実現や雇用機会を作るために設定されています。主な受給要件については以下の通りです。
受給額については、支給対象者1人につき月額4万円となっています。また、対象者が母子家庭の母または父子家庭の父である場合、1人につき月額5万円に増額されます。
人材開発支援助成金は、従事する業務に関する専門知識・技能取得のための訓練に必要な経費に利用できる助成金です。
訓練実施計画を作成し、訓練の開始日の1か月前までに管轄の労働局へ提出することで、受給することができます。
受給額については、中小企業で200時間以上の訓練を実施した場合、最大で50万円が受給できます。
キャリアアップ助成金は、非正規雇用の労働者のキャリアアップを促進するために、企業が改善する取り組み(正社員化、処遇改善)を実施した事業主が利用できる助成金です。主な受給要件については以下の通りです。
※コース:正社員化コース、障害者正社員化コース、賃金規定等改定コース、賃金規定等共通化コース、賞与・退職金制度導入コース、短時間労働者労働時間延長コース
受給額については、コースによって異なりますが、生産性向上の取り組みを支援する「生産性要件」を満たすことで助成金額が増額し、生産性要件を満たした中小企業が最も高い金額を受給できるように制度設計されています。例えば、有期雇用労働者等を正社員化した場合、一人につき80万円が受給できます(中小企業の場合、令和6年度)。
一方で、経済産業省が管轄する外国人雇用のための支援制度もあります。それについてもご紹介いたしましょう。主に以下の3つがあります。
こちらの制度は、国内にある事業所を人材育成や技能継承等の機能を有する国内生産拠点として研究開発や設備投資を強化し、そこで確立された生産技術等を当該事業者の外国にある事業所に普及させることで、国内生産拠点と海外生産拠点の役割分担を図り、製造業の国際競争力を強化するとともに、国内製造業の空洞化を抑制することを目的とした制度です。
具体的には、製造特定活動計画の認定を前提とし、個々の特定外国従業員が「特定活動」という在留資格を付与されることにより、国内にある事業所で生産活動に従事することが可能となります。受入企業は、認定を受けた製造特定活動計画に基づき、外国人の職員を国内にある事業所に期間(最大1年)を定めて転勤させ、生産活動に従事させることにより、新製品の製造や新技術の導入等に必要となる特定の専門技術の移転を実施することになります。
外国人労働者の雇用管理の改善や職業生活上の問題などについて、専門的な知識や経験のある「外国人雇用管理アドバイザー」が、各事業所の実態に応じた相談・指導を行います。こちらは、ハローワークの無料相談で利用できます。
日本の中小企業が留学生インターンとして受け入れる事業です。インターンシップ方法については、①国内留学生の対面参加型、②海外在住人材のオンライン参加型、③海外在住人材の対面参加型(来日)の3つのコースから選ぶことができます。
さて、ここまで外国人労働者を雇用するにあたって得られる助成金について紹介してきましたが、こうした制度の整備が進んでいる背景には、昨今の労働者不足の問題があります。
近年、国内の企業のあいだでは人材の確保に苦労する声が上がっています。ご存知の通り、少子高齢化により生産労働人口が減少しているためです。厚生労働省が発表している有効求人倍率を見ると、令和6年7月の有効求人倍率は1.24倍で、これは求職者ひとりに対して1.24件の求人があることを指しています。国内では、2014年ごろからずっと採用は売り手市場となっており、コロナ禍でも1を下回ったことはありません。その一方で、国内で働く外国人の数は右肩上がりで増えています。国内の人手不足を伴うため、外国人を雇いたいという需要が高まっているのです。
しかし、外国人労働者を日本人労働者と全く同じように扱えるかというと、必ずしもそうとは限りません。それでは、外国人労働者を受け入れる上で、どのようなメリット・デメリットが存在しうるのでしょうか。
メリットとしては、まず考えられるのが、人手不足の解消です。外国人材を採用の対象に加えることで、求職者の幅が広がります。電子・電気や機械系のエンジニアといった専門スキルを持った人材の採用や、地方での募集が多い農業、慢性的に人手が不足している宿泊・飲食といったサービス業の従業員の確保などにも適しています。
日本語だけでなく、英語やその他外国語を母語とする従業員を幅広く雇うことで、訪日外国人への対応力を高めることができます。日本を訪れる外国人旅行客の数は増加し続けており、政府は観光を国の政策の大きな一つに掲げています。コロナ禍以降ますますその需要は高まっていると言えるでしょう。
介護職や建設、飲食業といった国内で人材が不足しがちな職種では、採用期間が長引き年中求人を出さなければいけないこともあります。募集期間が長引くと採用コストも増えてしまいますが、日本人だけではなく、国内外の外国人を対象に含めることで求職者の数が格段に増え、結果的に採用サイクルが短縮され、求人広告費用などにかかるコストが改善されたり、人材雇用がより安定したりすることが期待できるでしょう。これに助成金を利用すれば、よりコストを抑えることができるのです。
海外へサービス展開を考える企業にとって、現地の法や習慣、言語の壁は大きな問題です。そんなときに、外国人従業員がいれば、海外進出の大きな助けになるかもしれません。今すぐでなくとも、数年単位で海外ビジネスの展開を検討している企業は、進出先の国の言語や習慣に精通している外国人人材の受け入れを検討してみるといいかもしれません。
大きな壁となりうるのは、やはり文化や習慣の違いです。文化や習慣の違いを理解していないと、思わぬところからトラブルになってしまうことがあります。ちょっとしたことでも、価値観や考え方の基準が異なると、悪気がなくとも摩擦が起こってしまうことがあります。事前にお互いの文化について理解を深めることが非常に大切なんです。
外国人従業員の日本語レベルによっては、最初は意思疎通がうまくいかないこともあります。また、日本語の問題だけでなくコミュニケーションに対する考え方の違いもあります。例えば、日本人は大まかな指示を出されても察しようとしますが、海外の多くの人は、具体的に指示をしなければその通りに行動しません。これは悪気があるのではなく、コミュニケーション方法が日本と大きく違うからです。コミュニケーション上の認識の違いや、わかりやすい指示の仕方などを、あらかじめ現場に周知するなどして、溝を埋める手助けができば、徐々にスムーズになっていくでしょう。
外国人労働者ならではの雇用に関する手続きや、就労のルール、支援などがあり、在留資格によっては就けない職種もるので、外国人雇用に関する知識を必要最低限は持っていなければなりません。外国人受け入れに精通した社員がいない場合は、外国人材の紹介専門会社や、外国人の雇用に詳しい行政書士などに相談することで解決できます。
海外にいる外国人材を雇用する場合、ビザの発行や渡航までに時間を要するため、日本人のように採用後すぐ働くということはできません。また、日本在住の外国人材であっても、手続きなどで時間がかかることは変わりません。
外国人労働者を雇用するメリットとしてはやはり、採用の幅が広がるという点が大きいですね。一方で、コミュニケーションや事務の点で不安材料もありますが、しっかりと意識を持てば対処できる範疇なのではないでしょうか。
最後に、厚生労働省が出している、令和5年10月末時点の「外国人雇用状況」の届け出状況をご紹介いたします。これを見れば、現在の我が国における外国人雇用がどのような情勢にあるのかがわかります。
令和5年10月末時点の外国人労働者数は 2,048,675 人で前年から 225,950 人増加しています。これは、届出が義務化された平成19年以降で過去最高です。増加率も 12.4 %と前年の 5.5 %から 6.9 ポイント上昇しています。
外国人を雇用する事業所数は 318,775 所で、前年と比べて 19,985 所増加しています。こちらも、届出義務化以降、過去最高を更新し、増加率は 6.7 %と前年の 4.8 %から 1.9 ポイント上昇しています。
国籍別にみていくと、ベトナムが最も多く 518,364 人。これは、外国人労働者数全体の4分の一以上となる25.3%を占めています。次いで中国 397,918 人(19.4%)、フィリピン 226,846 人(11.1%)の順となっています。
在留資格別にみていくと、「専門的・技術的分野の在留資格」が595,904 人で、前年比 115,955 人(24.2%)増加。この対前年増加率は在留資格の中で最も大きい数字となっています。次いで「技能実習」が 412,501 人、前年比 69,247 人(20.2%)増加、「資格外活動」が 352,581 人、前年比 21,671 人(6.5%)増加、「身分に基づく在留資格」が 615,934 人、前年比 20,727 人(3.5%)増加。一方、「特定活動」は 71,676 人、前年比から1,687 人(2.3%)減少となっています。
やはり注目すべきは、外国人労働者・雇用事業所ともに、現在過去最高の数字となっている点ですね。人材不足が叫ばれる今、外国人労働者は非常に重要な労働力として注目されていることがわかります。また、外国人労働者と言えば、どうしてもそこまで高度な専門的技能を必要としないような職に就いているイメージがあるかもしれませんが、最近では、専門的・技術的分野での在留資格で働いている外国の方も増えてきているんです。
日本はいま、人口減少の一途をたどっており、このままでは働き手不足が深刻化していく一方です。仮に今から人口増加に転じたとしても、働き手不足が解消されるまでには長い時間がかかります。そのため、外国からの労働力を取り入れることはこれから先、会社を経営していくうえで必要な過程となっていくでしょう。経営者の皆さん、外国人労働者を雇用する際は、ぜひ、今回の記事の情報を役立ててくだされば幸いです!