なぜ、今になって就職氷河期世代の採用支援が増えているのでしょう。1990年代から2000年代にかけて、バブル崩壊の余波を直に受け、社会から一斉に門前払いを食らった世代。それが、就職氷河期世代(ロストジェネレーション 以下 ロスジェネ世代)」です。この記事では、そんなロスジェネの逆襲を探る旅に出ます。実は彼らの再就職支援は、ただの慈善事業ではないんです。それでは、一緒にこのタイムカプセルを開け、失われた世代がどのようにして輝きを取り戻し始めているのか見てみましょう。
あなたは知っていますか?1990年代から2000年代にかけて、日本全土がバブル崩壊の寒風に震えていたことを。そう、あの時期に就職活動をしていた人々を、私たちは就職氷河期世代を「ロスジェネ(ロストジェネレーション)世代」と呼んでいます。今や40代から50代にとった彼らの影響は、今でも人生に冷たい影を落としています。
繰り返しますが、今回の主題。なぜ今になって政府が彼らの支援に乗り出しているのかということ。2023年のあるイベントを例に取りましょう。2023年9月末、経済産業省関東経済産業局主催の「広域関東圏合同企業説明会」が開催されました。
これは、あの氷河期に社会人としてデビューを果たせなかったミドル世代への正社員就職の橋渡しをするためのもの。政府がこぞって雇用促進を狙うのには、確かに重要な理由があるんです。
まず、ロスジェネ世代が直面している問題点を見てみましょう。
バブル崩壊の影響で、多くの企業が正規雇用の採用を減らし、非正規雇用を増やすことで人件費を削減しようとしました。これが、ロスジェネ世代の多くが正規雇用を得られず、今でも非正規雇用で働いている状況へとつながっているんです。内閣府のデータを見ても、就職氷河期世代の中心層と呼ばれる人たちは1689万人。そのうち、371万人が「非正規」として働いています。それだけではなく、望んで非正規雇用で働いていない人や、ニート、引きこもりといった無業者も少なからず存在するのです。
ここからがさらに重要なポイント。正規と非正規では賃金に大きな差があり、これが年金受給額にも影響を及ぼしているんです。
例えば、厚生労働省がまとめる「令和4年賃金構造基本統計調査」によると40代の正社員は平均で月収34万7,500円から36万6,300円なのに対し、非正規雇用は約21万円。この差、約1.5倍って知っていました?これが、生涯貯蓄にも大きく影響し、老後の生活にまで影を落としているというわけです。
政府はこうした状況を踏まえ、ロスジェネ世代の再就職を支援することで、彼らの生活水準の向上と、将来の社会保障費の増大を防ぐ狙いがあるのです。ロスジェネ世代が抱える問題は、彼ら個人だけのものではなく、社会全体に関わる問題なんですね。
彼らの声を聞いてみましょう。
東京都内で派遣として清掃業務に従事するAさん(45歳男性)は、都内の大学卒業後、正社員にはなれず派遣社員として仕事に就きました。
「就職活動で50通以上、履歴書を送りましたが返信があったのは数通でしたね。周囲の同級生も諦めムードでしたが、派遣登録をすると割りとよい給与だったのでそれほど落胆はしませんでした。新卒でも30万円くらいもらえる仕事も多くて、10年くらいは派遣で良いかなと思っていました」
一方、なんとか東京都内で就職できたBさん(45歳男性)はこうも話します。
「20社受けて、1社だけ中小企業に勤めることができました。例年ならば、10人ほど採用する会社でしたが、私の代の同期は2人。上司はバブル世代の方々で、けっこう多くいましたね。給与は初任給で手取り19万円ほど。ライバルは先輩や上司だと思い、10年間は、がむしゃらに仕事しましたよ」
Aさんは、そのまま派遣社員として25社ほどを経験。給与は変わらず、ボーナスなしで手取り25万円ほど。ただし、契約期間がまちまちで、短い会社は3ヶ月もあったそう。
Bさんは、主任となり後輩3人をまとめる立場。給与は手取りで25万ほどとAさんと変わりませんが、ボーナスが平均で年60万円ほど加算。仕事内容も指導業務やチームリーダーとしての役割も経験します。
Aさんは、現場仕事がきつくなり、仕事が入らない日も増えていました。正社員を目指そうともしましたが、年齢も30代後半となり、多くの会社から求められたのは「マネジメント経験」でした。
Bさんも、Aさん同様に将来を見据えて転職を検討。すると部下をまとめてきたマネジメント経験を評価され、ベンチャー企業の部長待遇として転職を勝ち取ります。
まさに、氷河期世代の明暗です。
確かに、終身雇用が消えつつある中で退職金を前提とした「正社員」という日本の雇用形態にこだわる必要があるのかはわかりません。
そんな中で、政府が進めるのが「就職氷河期世代支援プログラム」です。
まずは、各都道府県に就職氷河期世代専門窓口が設置されました。対象者は、ロスジェネ世代で正社員での就職を希望する人です。つまり、正社員経験がなくても対象となる窓口です。
次に、ロスジェネ世代限定の募集です。本来であれば求人では、雇用対策法に基づいて、年齢制限のある募集や採用は禁止されています。ところが、令和5年3月31日までの措置として、35才以上55才未満の就職氷河期世代にあたる年齢層に限って、限定求人での募集や採用活動ができるように許可されたんです。ただし、対象は正社員経験のない人です。
厚生労働省は、就職氷河期世代を対象に業界団体と連携して、短期資格等習得コース事業を開始しています。職場体験や資格取得の支援です。
団体が実施する原則無料の職業訓練を1~3ヶ月程度受けて、資格や技能を習得。その後は、職場体験を通して、資格保有者や訓練経験者として会社面接会に挑むことができるための支援です。
就職氷河期世代というネーミングは、不運なタイミングで社会に放り出された世代というニュアンスが込められています。しかし、そこで止まらないのがロスジェネの魅力なんです。
彼らは仕事に対してストイックで、自らの能力を控えめに見る傾向があります。正規雇用の道が閉ざされたこと、転職を繰り返したことで、自信を失いがち。でも、これが彼らの意外な強みに変わる瞬間があります。
確かに、氷河期世代は他の世代と比べて正規の職に就く機会が少なかったかもしれません。だけど、その経験のなさが彼らを柔軟にして、企業が求める忍耐力や適応力を育てました。
企業側は、そんな彼らの人間性や経験を高く評価しているんです。たとえ本人たちが気づいていなくても、その経験は彼らを市場での貴重なプレイヤーにしています。
「自分には役立つスキルがない」と思い込んでいませんか? でも、応募先の企業はあなたのこれまでの経験をしっかりと評価することが多いのです。不安に飲まれず、自分の経歴に自信を持ってください。そして今、その氷河期世代が逆襲を開始しました。
政府による支援も力になり、これまで埋もれていたロスジェネ世代の能力が、ついに日の目を見始めています。
なぜなら、ロスジェネ世代の一員がそれぞれの場で輝きを放つとき、それは社会全体の明るさに直結するからです。彼らの成功は、まさに日本全体の成功。それが、今、政府が彼らの支援を強化している最大の理由なんです。
そして、ロスジェネの忍耐強さと仕事に邁進する実直さが、地方で求められています。地方には、都心部の派遣で多くの経験を積んだ皆さんの力が生かせるんです。