酪農は年中無休で牛と向き合う必要のあるハードな仕事です。そんな現場で「少し手を借りたい」「休暇を取りたい」という声に応える存在として、酪農ヘルパーが注目されています。
北海道清水町の株式会社ラクネス(以下、ラクネス)で酪農ヘルパーとして働く神谷さんと田邊さんは、それぞれ異なる道を経て、この仕事にたどり着きました。酪農家を支える立場として現場に立ち続ける若き二人の言葉から、酪農ヘルパーという働き方のリアルと魅力に迫ります。

1994年生まれ。大阪府出身。関西学院大学に在学中、北海道で暮らす高校時代の友人から声をかけられ、十勝を訪れたことをきっかけに移住を決意。現在は株式会社ラクネスで酪農ヘルパーとして現場に立ち、主任としてチームを支えている。趣味はドライブとスノーボード。
── 北海道に来た理由を教えてください。
神谷 十勝に住んでいた高校の同級生が「いいところだから一度来てみたら?」と声をかけてくれたのがきっかけです。当時は大阪の大学に通っていて、卒業後の進路に迷っていたので、まずは自分の知らない世界を見てみようと思いました。
── 実際に暮らしてみて、どう感じましたか?
神谷 都会では「大勢の中の一人」という感覚が強かったのですが、十勝では一人ひとりをきちんと見て、受け入れてくれる空気がありました。「自分が必要とされている」と感じられたのが印象的でしたね。

1999年生まれ。愛知県名古屋市出身。高校卒業後、北海道江別市にある酪農学園大学へ進学し、酪農を学ぶ。卒業後は十勝・清水町の牧場に就職し、約3年間現場で経験を積んだのち、株式会社ラクネスに入社。現在は複数の牧場を支える酪農ヘルパーとして働いている。趣味はバスケとスノーボード。
── なぜ名古屋に住まれていた田邊さんが、遠く離れた北海道の酪農学園大学を選ばれたんですか?
田邊 最初から「酪農をやりたい」と決めていたわけではありません。ただ、大好きな自然が近くにある仕事への進路が開けそうだと感じたのが大きかったですね。大学卒業後は牧場で約3年間、現場経験を積みました。
── 牧場勤務から酪農ヘルパーへの転向を考えたきっかけは?
田邊 牧場での仕事を一通り経験したあと、次にどういう道に進もうか考えていた時期に、ラクネスと出会いました。社長の話を聞いてみて、安定して働けそうな将来性の高さに惹かれましたね。酪農業界が人手不足になる中で、酪農ヘルパーの需要は今後さらに高まっていくと感じています。

酪農ヘルパーとは、主に乳牛を扱う酪農家が休みを取る際に、搾乳やえさやり、牛舎の管理などを代わりに行う専門職です。乳牛は毎日、朝夕2回の搾乳が欠かせないため、一年を通して休みを取りづらい仕事とされてきました。
酪農ヘルパーは現場に入り、酪農家が安心して休暇を取りながら無理なく経営を続けられる環境を支えています。
一言に酪農ヘルパーといっても、農協や民間企業、個人事業など所属先はさまざまあり、働き方も異なります。神谷さんと田邊さんが勤めるラクネスでの仕事は、早朝と夕方の2回の作業を軸に進みます。

── 酪農ヘルパーとして働くなかでやりがいを感じるのはどんなときですか?
神谷 「来てくれてありがとう」と農家さんから言ってもらえることですね。人手が足りない環境で頼っていただける仕事なので、その感謝が実感として伝わってきます。
田邊 こちらが現場の作業を担うことで、農家さんが安心して用事を済ませたり、休めたりする。仕事だけでなく生活全体を支えられるのは大きなやりがいです。

── 一方で、この仕事ならではの大変さはありますか?
神谷 牧場ごとに、仕事に対する価値観が全然違うところですね。丁寧さを重視する牧場もあれば、スピードを重視する牧場もある。
田邊 同じ動きをしても、同じように喜ばれるとは限らないんですよね。その牧場に合わせて、やり方や対応を柔軟に変えていく必要があります。酪農ヘルパーの仕事をしていくなかで、一番頭を悩ませる点かもしれません。

実際に働くとなると職場の雰囲気も気になるポイントですよね。実際のところ、どうですか?
田邊 雰囲気はめちゃくちゃいいと思います。風通しはすごくいいし、居心地もいい。社長の塚本さんに「これ言いづらいな」って思う場面は、正直ほとんどないですね。
── これから入る人も、受け入れやすい雰囲気ですか?
神谷 大丈夫だと思います。田邊さんが言うようにお互いの関係性も良好ですし、ビジネスと酪農の両方に知見のあるメンバーがそろっているのも強みです。たとえ未経験の方でも酪農の世界に入るための土台が整っています。
── 働き方については多様性が認められている環境だとお聞きしました。
神谷 そうですね。もともとは正社員として一緒に働いていたメンバーが一名、カメラマンの道を進みたいということでアルバイトに働き方を変えています。
田邊 酪農ヘルパーに専念するだけではなく、個々のやりたいことを尊重したうえで働かせてもらえる雰囲気が根付いていますね。

── ラクネスで働く前と、働いた後で感じるご自身の成長について教えてください。
田邊 ひとつの牧場で働いていた頃は、やり方も考え方も「そこしか知らない」状態でした。今はいろんな牧場に行かせてもらっています。「こんなやり方があるんだ」「こういう考え方もあるんだ」と、毎日発見があり、視野が広がりましたね。
── 神谷さんは、もともと学生からのスタートでしたよね。
神谷 学生の頃と比べると、メンタル面は現在のほうが、圧倒的に安定しています。都会では人に気を使ってばかりでした。今も酪農家さんとの関わりはありますけど、仕事の8割は牛と向き合う時間です。アニマルセラピーじゃないですけど、都会で疲れきっている人は、酪農ヘルパーを始めることで救われるかもしれません。
── 今後挑戦してみたいことを教えてください。
田邊 今は清水町と新得町の農家支援が中心ですが、人数を増やして十勝管内全域の牧場を支えられるようになりたいと思っています。
神谷 私はできることの幅を増やしていきたいですね。たとえば機械の操作をもっと上手くなっていきたいです。
また、酪農ヘルパーの仕事以外でも価値を提供できるようになっていきたいですね。現在は、新得町で学生に勉強を教える活動もしています。実際に、農家の子どもさんが来てくれることもあって。地域に還元できるようなコミュニティづくりも、これから広げていけたらいいなと思っています。

── 酪農ヘルパーに関心を持っている人も多いと思います。どんな人が向いている仕事だと思いますか?
田邊 体を動かすのが好きな人ですね。それと、朝起きるのが苦じゃない人。
神谷 まあ、理想を言えばそうなんですけど(笑)それが絶対条件かと言われると、そうでもないと思います。
── 酪農家の支援という観点では、どんな資質が必要でしょうか?
田邊 ちょっとした違和感に気づける人……ですかね。「今日はいつもと牛の様子が違うな」とか。
神谷 その気づきをちゃんと酪農家さんに的確に伝えられるコミュニケーション能力も大切ですね。酪農の仕事の専門的なことは入社してから私たちが教えるので、知識ゼロの状態でもまったく問題ありません。
── 最後に、酪農ヘルパーに少しでも興味を持った人へ、メッセージをお願いします。

田邊 最初は「ちょっとやってみたいな」くらいの気持ちでいいと思います。酪農ヘルパーを始めてから「あれ、意外と向いてるかも」って気づく人も多いので。また十勝という場所を知ることで、自分の可能性を見つけられることもあるかと思います。
神谷 もし入ってみて酪農ヘルパーの他にやりたいことがあったとしても、ラクネスはそれを否定しない会社です。昼間の時間を使って、別の挑戦をすることもできますし、ちゃんと応援してくれます。この仕事を拠点にして自分のやりたいことを見つけていく。そんな働き方もアリだと思います。
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