――牛のふん尿が未来を救う!? バイオガスベンチャーの株式会社FTバイオパワーを直撃しました。
株式会社FTバイオパワー代表。北海道十勝の大地で“牛ふん尿×地域エネルギー革命”を推進中。「畜産と発電がガッチリ手を組むなんて誰が想像した?」を合言葉に、ドイツのバイオガスプラントメーカー・WELTEC BIOPOWER(ウエルテックバイオパワー)社との連携を強化し、農業者や行政と協力しながらバイオガス事業を拡大している。
同社CTO。バイオガス技術やカーボンニュートラルなど、最先端のエネルギー動向に精通。「子供たちの未来のために今できることを」をモットーに、バイオガス事業の普及のために日々奮闘している。
――牛のふん尿が未来を救う!? バイオガスベンチャーの株式会社FTバイオパワーを直撃しました。
柴田氏「ええ、最初はみんなが口をそろえて『冗談でしょう』って言うんです。でも実際は、大量に出る家畜のふん尿からメタンガスを取り出し、それを燃料に発電する仕組みなんですよ。これが“バイオガスプラント”です。まさに畜産×エネルギー革命ですね」
―――十勝では日々、牛や豚などから膨大なふん尿が出ますが、それをエネルギー源にしようという発想はいつ頃から?
柴田氏「バイオガス自体はヨーロッパ、特にドイツでは1980年代から盛んになりました。ドイツでは家畜ふん尿を溜めておくスラリータンクが農家に必ずあって、そこで自然に発生するガスを“どう使う?”という試行錯誤が進んだ結果、エンジンに利用して発電するという形が定着したんです」
―――ドイツがバイオガス先進国と呼ばれるようになった背景には、国の法律や農家の創意工夫があると聞きます。そこで御社が提携しているWELTEC BIOPOWER社もかなり有名ですよね?
寺田氏「はい、WELTEC社はステンレス鋼製のバイオガスプラント建設で世界をリードする企業のひとつです。2001年から嫌気性消化プラントの開発・建設を進め、25か国以上に400基以上ものエネルギープラントを実際に稼働させています。ドイツ国内だけではなく、ヨーロッパやアメリカ、アジアといった五大陸へ事業を広げているんですよ」
―――それはすごい実績! ステンレスの技術以外にも何か強みがあるのですか?
寺田氏「WELTEC社の特徴は、ドイツの工場で高精度の部材を作り、それをパッケージ化して現地で効率的に建設すること。結果的にドイツ国内と同等のクオリティのプラントを全世界のどこでも短工期・高品質・適正価格でつくることを可能にしています。しかも、消化液浄化設備やガス精製装置などの周辺設備のラインナップも充実している。要は“バイオガスプラントを丸ごとトータルでサポート”できるわけです」
―――十勝でも、すでにバイオガスプラントの普及が進んでいると聞きましたが、どんなメリットがあるのでしょう?
柴田氏「まずはカーボンニュートラル。家畜が食べた飼料が大気中のCO2を吸収して育つので、燃やしてもCO2の総量は増えません。さらに廃棄物を燃料にするので、畜産ふん尿の処理コストも下げられますし、発電時に出る熱を発酵槽に再利用できるからエネルギー効率が非常に高いんです」
―――廃棄物問題とエネルギー問題の同時解決とは。
寺田氏「そうなんです。十勝なら地域全体で家畜ふん尿を集めて発電し、副産物の消化液は肥料として畑に還元できる。“牛が生み出すエネルギー”で地域の電力を賄いつつ、畑の生産性も上げるまさに一石二鳥。さらに農地利用が盛んな日本の中でも、十勝はバイオガスと相性が良いんです。今後は十勝でもまだ十分に利用されていない農業残渣、水産業残渣や食品残渣等の未利用有機資源を活用し、廃棄物をエネルギーに変えていくバイオガスプラントをもっと普及させていきたいと考えています」
―――ただ、普及には法整備やコスト面など課題もあると聞きます。
柴田氏「課題はありますが、ドイツのように持続可能な社会をつくるには不可欠な取り組みです。バイオガスプラントは“胸を張って子ども世代に引き継ぐ仕事”だと思っています。自然を汚染せずにエネルギーを生むだけでなく、地域の雇用や農業の活性化にもつながる。子どもたちに『お父さんの仕事、地球を守ってるんだ』って胸を張って言えるじゃないですか」
―――素敵ですね。まさに地球防衛隊ですね!
寺田氏「私たちが描く未来は、廃棄物を減らし、地域の産業を盛り上げながらクリーンエネルギーを作り出すこと。将来的にロケットや熱気球にもバイオメタンを使えるかもしれない。そんな夢のある取り組みだから、今後さらに仲間を増やしていきたいですね」
地球規模のエネルギー危機に立ち向かうため、牛や豚のふん尿がヒーローに早変わりするバイオガス発電。日本ではまだまだ整備すべき課題がありますが、ドイツのWELTEC社が世界に示すように、バイオガス事業は決して“絵に描いた餅”ではありません。
柴田氏はこう力強く語ります。
「バイオガスプラントは地域社会そのものを豊かにする仕掛けです。北海道十勝から始まったこの小さな革命が、日本全国に広がる日も遠くないはず。その先で、子どもたち世代が今と同じか、それ以上に豊かに生きていけるような未来を創造する、そんな誇りある仕事にしたいんです」
廃棄物を宝物に変え、地球を救う可能性を秘めたバイオガス。牛のふん尿が電気になり、地域経済をうるおし、さらには宇宙開発のエネルギーにまで発展するかもしれない――そんな胸の高鳴る話が、もう現実のものとなりつつあります。
「次回はWELTECバイオパワー社のもっと詳しいプロジェクトを覗いてみましょう!」――そう言いたくなるくらい、バイオガスの勢いは止まる気配がありません。あなたもこの“地球を救う挑戦”に一枚噛んでみませんか?