田んぼの真ん中で「踊る人」に出会った濱田安之氏。その日から彼の眼差しは変わり、農業とITのクロスオーバーが生んだ「AgriBus-NAVI」が世に出ました。失敗を乗り越え、農家のリアルを知り尽くした彼が、どうして農業の未来を変えるテクノロジーを提供し続けるのか。そんな濱田氏の情熱と、農業情報設計社が目指す新しい農業のカタチに迫ります。(TCRU編集部)
今から20年以上前。ある日、初めて田植機を運転していた濱田安之氏は、畦(あぜ)の反対側で「踊っている人」に出会います。
「ドキドキの初運転の日です。ふと、畦の反対側で踊っている男性が目に入ったんです。『何をしているんだろう』と、近づくと、彼は“踊り”でなく、私がおもいっきり曲がりながら走っているのを身振りで指示していたんです。ずれた分は後から手で植え直すと聞いてとにかく平謝りしましたよ。でも、そのときにわかったのが、トラクターを真っ直ぐ・等間隔に走ることの難しさでした。ハンドルを真っ直ぐにしているつもりでも、実はずれていくんですよ」と振り返る濱田氏。
その時から、農業に対する眼差しが変わったと言います。
その日から15年以上、長年の研究と開発を経て誕生したのが「AgriBus-NAVI(アグリバスナビ)」です。
しかし、開発の道のりは決して平坦ではありませんでした。それでも一貫していたのは「農業者と畑を最も近くで支えるITを」という強い思い。
少しだけ、彼のキャリアを紐解いていきましょう。
濱田さんは、農業・食品産業技術総合研究機構や農林水産省で農業機械開発の研究者としてスタート。彼が研究していたのは、20年以上、ロボットトラクターなど、農業の現場で直接役立つ機械たちでした。
一貫して追い求めていたのは、「農業の生産性向上に役立つ技術を作ること」。
その情熱は、「踊る人」との出会いからはじまったことはご承知のとおりですね。
すべてを注ぎ込んだ、畑や田んぼで真っ直ぐ等間隔で走る手段を模索するプロジェクト。しかし、参加して驚愕。開発中のソフトウェアは、使う人のことを一切考えておらず、彼は大胆な決断を下します。
たった3ヶ月で上司を説得しつつ、ソフトウェアを一人でゼロから作り直し、AgriBus-NAVIの前身となる「農用車両ナビゲータ」を開発したものの、結局は一台も売れず、成功を収めることはできません。
周囲は、「もう諦めて次の研究に進んでほしい」という声が大多数。それでも彼は諦めません。「
この技術を絶対に一人でも多くの農家さんに届け、お役に立ちたい、という強い意志のもと、「今のままでは想いを具現化するのは難しい」と判断して独立を決意、2014年4月「農業情報設計社」は誕生します。
AgriBus-NAVIは、専用端末不要、スマホやタブレットだけで利用可能なアプリとして農業者に提供されています。
基本機能は無償で、これにより数多くの農業者がこのテクノロジーを利用できる道が開かれたのです。しかも、手持ちの機械に後付けで装着しグレードアップができるという利便性が、農業の現場に新しい風を運びました。
濱田氏の物語は、単なる技術者からスタートアップのCEOへとシフトした一人の男のストーリー。技術と情熱、挫折と再起が紡ぎだす、誠実なビジョンの物語です。
彼が歩んできた道のりには、農業、特に農業者のリアルな声が詰まっています。その一つ一つがAgriBus-NAVIに結実し、今、私たちの農業を変革しています。
あなたもその一翼を担ってみませんか?
農業情報設計社は、情熱と技術で農業の未来を切り開きます
濱田CEOの挑戦は、これからも農業とITの融合を更に進め、新しい未来を創っていくでしょう。そして、その道にはきっと未来を共に創る仲間が必要です。
ITと一次産業、そのクロスオーバーで新しい価値を生み出す。あなたもこの興奮を一緒に感じませんか?濱田安之CEOと一緒に、農業の未来を創っていきましょう。
株式会社農業情報設計社 | 代表取締役兼CEO | 1970年北海道室蘭市出身。96年に北海道大学農学部卒業後、農業機械の研究者として性能や安全性の評価試験や情報化・自動化に関する先端技術を開発するとともに、国内の大手農機メーカーや工業会と連携して農業機械間の通信制御の共通化に取り組む。2014年4月に農業情報設計社を設立。GPSを利用して真っ直ぐ等間隔、効率的な走行と作業を実現するトラクター運転支援アプリ「AgriBus-NAVI」は世界140か国の農業者に愛用されている。