上川郡新得町・上佐幌基線108番地4号。東大雪の峰々と日高山脈に囲まれた沃野千里(よくやせんり)に突如として、ホルスタイン模様の巨大なサークルと《酪農の可能性は無限大!!》のスローガンが飛び込んできます。まるで工場のような施設群とその異様なインパクトから、並の牧場でないことは推して知るべしですがーーー。
十勝一円に春の気配が漂い始める2025年3月、友夢牧場は設立25周年を迎えました。今や酪農王国・十勝の大看板を背負って立つ“ギガファーム”へと成長し、電力生産による地域インフラ、余剰熱を利用した果樹栽培、中央酪農会議認証の酪農教育ファームと、酪農のポテンシャルを底上げするSDGs視点の事業を展開。地域を牽引する存在として知られています。しかしそのルーツは、わずか5軒の地域の農家にあるのだと言います。
新得町内の酪農家3戸・畑作農家1戸・酪農ヘルパー1戸の共同出資により2000年に法人化。シフト制と先端テクノロジーの導入により省力化・業務効率化を図り、自然豊かなフィールドで約1600頭の乳牛を飼養する。社名は創業メンバーの頭文字「Y・Y・U・M」に漢字を当てたもので、「仲間達と共に夢を育み、酪農の無限大の可能性を楽しく追究していこう」の願いが込められている。

「率直に言うと、“休み”が欲しかったんですよ。ちゃんと働いて、みんなが当たり前に休暇をとったり、家族との時間を持てるように法人化したんです」。
共に曽祖父の代から酪農を家業とする湯浅恵次常務(以下:常務)と湯浅征寿専務(以下:専務)は、遠縁の親戚同士。それぞれの家が典型的な家族経営を続けてきました。そうしたなか会社組織へと舵を切り、大規模酪農の道を選ぶことに。その背景には各家が長年抱えてきた、共通の悲願があったと常務は振り返ります。

「牛は毎日世話が必要で、搾乳も給餌も365日欠かすことができない。それ自体は、いつの時代も変わらないんだけども……。体調を崩しても、家族に何か起きても牧場は止められない。そんな働き方では、限界が来るのもそう遠くないと思っていたわけーーー。
そうこうしているうちに、酪農一筋だった親父が倒れてしまったの。俺は学生時代からずっと法人化の意欲があったし、ちょうど専務が学校を卒業して地元に帰って来るタイミングでもあったから、専務のお父さん(現会長)や近隣の農家さんらと相談して『もう一緒にやろうよ』って。別に経営の手を広げるのが目的ではなくて、がんばって働いたぶん、ちゃんと休める体制をつくるためにはみんなが一致団結して経営の形を変えるしかなかった。いわば必然的なチャレンジでしたよ」(常務)

働き方改革ならぬ、“休み方改革”を成立させるための法人化とは目からウロコーーー。「酪農の仕事と、酪農家は休めない仕事だってのは別の話よ」の言葉にも頷けます。3人寄れば、いや5軒寄れば“文殊の知恵”の賜物です!
各自が資源を持ち寄るかたちで頭数をまとめ、翌21年に624床の牛舎で創業を開始。「一気にやらないと意味がない」と、家ごとの通例やしがらみもすべてをリセットしました。
20歳で実家の牧場に就農し、家族経営のかたわら友夢牧場の実現へ向けた構想計画に加わってきた専務にも話を聞くと。
「自分らが子供の頃は、家族の休みは月に1度程度で長期旅行に出かけた記憶もない。それでもここらの3・4代目の酪農家たちは、親世代が堅実な経営をしているのを見てきたから跡を継いでいるんですよ。法人化の目標通り、シフト制で希望休が取れるようになり、一人ひとりが安心して働けるサポート体制もつくりやすくなりました」(専務)

友夢牧場には現在、外国人実習生を含む約40名が在籍していますが、年間休日108日(月9日休・有給休暇は含まず)、希望休取得率99.9%と業界水準を大幅に上回る一般企業並みの労働環境を誇っています。搾乳・哺育・牛舎管理・飼料調整など多岐にわたる作業は専門性を要するものばかりで、いわゆる“酪農ヘルパー”もいないのに、どうやってそんな環境を実現できるのか疑問が残ります……。
「牧場なのに連休!?って驚かれますけど、誰かが休んでも回る仕組みがあるだけで、特別なことではないんです。うちでは半数以上が酪農未経験者でしたが、人材育成に力を入れていて、ジョブローテーション制も導入しています。各自の担当部門はあるものの、専任ではなく全員がマルチプレイヤーになって補完し合うほうがリスクの軽減になるし、いろんな作業にもチャレンジできる。常に“お互いさま”の気持ちで助け合っているから、自然とチームワークも高まります。もちろん、マシンやAIツールの力も借りていますけどね。ヒトを大事にしているからこそ、牛も大切にできるんです」(専務)

こちらが実際のシフト表。テトリスのようなグレーの部分が休暇を示し、小出しで休むタイプや完全週休2日の安定型、大型連休でドーンとリフレッシュ派まで、十人十色のワークスタイルが見て取れます。

ズバリ、友夢牧場ではどんな人材を求めているのかと聞いてみるとーーー。お二方とも声を揃えて、「周囲としっかりコミュニケーションがとれて、向上心がある人」と答えてくれました。
「命を預かっているのは大前提ですが、酪農家にとって牛は『経済動物』です。牛たちからの恩恵を受けて酪農業は成り立っている、つまり牛に我々の生活がかかっているんですよ。ゼロから学べる体制があるので未経験でもかまいませんが、一人で黙々と牛の世話をして完結する仕事ではないので、《わからないことを質問しない》《周囲のアドバイスを聞かない》という姿勢では絶対にダメ。ヒトも牛も、安心安全であってこその職場ですからね」

さらに、専務はこう付け加えます。「牛への愛情も含め、かけるべき手間をかけられるかどうかが大切だと思います。個体ごとの体調を管理する便利なツールも使っていますが、最終的な判断は各個人の《目と経験値》に委ねられます。毎日のスケジュールやルーティンをこなしつつも、興味や向上心をもって仕事ができる方を仲間としてお迎えしたいです」(専務)
友夢牧場では、酪農に新たな付加価値を創出する多角的な事業にも取り組んでいます。その一つが、地域に先駆けて16年に導入したバイオガス発電事業です。

牛舎から排出される乳牛の糞尿を発酵させ、取り出したメタンガスで電気をつくるというもので、年間の発電量は一般家庭約1000世帯分に相当。これは世帯数3143戸(2025年8月時点)の新得町内の3分の1ほどの電力を賄える規模を意味します。
「地元の支援がなければ酪農は続けられません。地域と環境のために、少しでも貢献したい」とお二方は話します。
北海道のメロン3大生産地といえば夕張市や富良野市、共和町が有名ですが、実は道内で初めて水耕メロンの栽培に成功したのはここ友夢牧場です。バイオガス発電で発生した余剰熱を有効活用し、17年に栽培事業を開始。約2年かけて本格的にブランド化し、現在は農薬不使用の「青空メロン」の名で全国へ出荷しています。新得町生まれのメロンが“メロン四天王”になる日もそう遠くはないかもしれません。

「青空メロン」を商品として販売する一方、無償で新得町の学校給食にも提供。地域の未来を担う子供たちに笑顔を運んでいます。
また現在は、同じく余剰熱をしたバナナやコーヒー豆の栽培にも取り組んでおり、将来的には商品加工・販売などを手掛ける6次産業化も視野に入れているのだとか。まさに、《酪農の可能性は無限大!!》です。地域社会に貢献できて、計り知れないポテンシャルを秘めた友夢牧場の仕事に少しでも興味を持ったら、ぜひ下記をクリック!
徳島県から移住し、新得町で代々続く酪農家の4代目。酪農学園大学短期大学部(江別市・2013年閉校)に在学時から家業の法人化をシミュレーションし、友夢牧場の立ち上げから経営に参加。労働環境の仕組みづくりを担うほか、バイオガスプラント先進国のドイツを視察するなどSDGs時代の酪農に取り組む。プライベートでは育ち盛りの子どもの良きパパ。

十勝酪農法人の代表も務めた父・佳春会長の背中を追いかけ酪農業界へ。酪農学園大学短期大学部を卒業後は、後継者として実家の湯浅牧場へ。家族経営を経験しながら友夢牧場の立ち上げメンバーに加わり、“酪農婚”の妻とともに牧場の発展を下支えする。酪農家としての信条は「手間を惜しまない」。牧場体験や学校給食など消費者・地域の人々との交流にも積極的で、「酪農を知るきっかけになれたら」と語る。
