「スポーツは、人と人をつなぐ魔法みたいなもの」――そんな想いを胸に、新潟出身の若者が北海道・帯広で新たな道を切り開きました。バスケ一筋だった学生時代、そして大学で学んだスポーツトレーナーの知識を武器に、25歳で異郷の地に飛び込んだ笠原拓海さん。いったい何が彼を突き動かし、十勝の大地でどんなドラマが待っていたのでしょう?移住から転職までの軌跡をたっぷり解剖し、熱いスポーツ愛が生み出す新時代の“化学反応”をお届けします。
笠原拓海(かさはら・たくみ)さん
1999年生まれ、新潟県上越市出身。山梨の高校にスポーツ推薦で進学し、卒業後は東海大学体育学部へ。大学卒業後、自動車販売会社に就職、北海道帯広支店勤務。2024年1月1日、スポーツシステム パーソン(有限会社パーソン)に転職し、現在は“スポーツシューフィッター”資格取得を目指し奮闘中
――はじめまして! 笠原さんはもともと上越市出身で、大学は東海大の体育学部。卒業後、自動車販売会社に就職して帯広支店に配属されたそうですね。
(笠原)はい、まさに“青天の霹靂”でしたね。内定時点では「北海道のどこかに配属されるかも」と聞いていましたが、実は十勝って名前すら知らなくて……。いざ来てみると、上越と風景が似ているんですよ。国道沿いに大型店舗が並び、遠くには山脈がそびえていて、「これ新潟じゃないの!?」と両親もビックリしていました。ただ、雪が少なくて「十勝晴れ」の青空がめちゃくちゃ気持ちいいんです。それだけに冬の寒さはケタ違いですけどね。
――幼い頃からバスケ一直線だったとお聞きしました。大学ではスポーツトレーナーを専攻されたんですよね。どういうきっかけがあったんでしょう?
(笠原)中学まではひたすらバスケ選手としてやってきましたが、自分は“プレーヤー”よりも“裏方で支える側”に興味があったんです。スポーツを通じて人と人とが繋がっていく、コミュニティが生まれる――そういう場をつくりたいと思ったんですよ。将来の理想形としては、バスケットショップの裏にコートがあって、試し履きや選手のケアサポートをする。スポーツ好きが集まる「憩いの場所」みたいなイメージですね。
――熱いビジョンですね! しかし卒業後は自動車販売会社に。やはり不安もあったんですか?
(笠原)そうですね。就職活動をするなかで、「スポーツ業界一本」よりも、まずは社会人として営業力を身につけようと考えたんです。北海道への配属が決まったときは驚きましたが、「むしろ面白いかも」と。最初の1年半は営業をやっていたものの、「やっぱりスポーツに関わりたい」という想いが強まっていきました。
――そして、2024年1月に“スポーツシステム パーソン”へ転職なさった。どうやって見つけたんですか?
(笠原)帯広でスポーツに関わる仕事を探していたところ、十勝に特化した採用・求人マッチングサイトのTCRU(ティクル)を知ったんです。登録してキャリアアドバイザーに相談したら、「実はティクルに掲載されていないけど、スポーツ振興に力を注ぎたい企業がある」というお話をいただきました。それが有限会社パーソンだったというわけですね。
――隠れ求人と巡り合うなんて、ちょっと奇跡的! パーソンさんは普通のスポーツショップとは違うと伺いましたが?
(笠原)はい、単に用品を販売するだけではなく、“お客さんがスポーツを長く楽しむためのケア”を重視しているんです。怪我を防ぐためのアフターケアやコンディショニングなど、まさに私が理想としていた「スポーツビジネス」の形でした。幅広い競技の知識が必要ですし、負担も大きいけれど、それがやりがいになっています。
――入社してから約1年。実際の働き方はどうですか?
(笠原)正直、やりたい放題やらせてもらっている感じです(笑)。もちろん、社長には「本当にできるの? ここはどうするの?」と厳しい質問を浴びせられます。でも、そのハードルを一個ずつ乗り越えると「じゃあ、やってみようか」と任せてくれる。この信頼関係には感謝しかありません。
――具体的にはどんな仕事を担当なさっているんですか?
(笠原)今は主にインソールやサポーター部門を担当しています。足の形は人それぞれ違いますし、合わない靴を履き続けると怪我のリスクが高まるんですよ。そこをきちんとフィッティングし、「最高のパフォーマンスを発揮できるシューズ」をコンサルするのが私の役目です。現在、“スポーツシューフィッター”という資格取得を目指して勉強中で、将来的にはマスターテクニシャンのレベルまでいきたいですね。
――スポーツシューフィッター……耳慣れない資格ですが、具体的にどんなことをするんでしょうか?
(笠原)シンプルに言うと、足を正しい状態に導き、パフォーマンスアップや怪我予防をサポートする「靴の専門家」です。ウォーキングを始めたばかりの初心者から、マラソンや登山、トライアスロンなどのコアなアスリートまで、幅広く対応します。歩き方や足の骨格、筋力のバランスなどを踏まえ、一人ひとりに最適なシューズやインソールを処方できるようになるんです。
――まさに“足元から健康を支える”というわけですね。今の子どもたちの健康状態はどうでしょう?
(笠原)実は「浮き指」といって、足の指が地面につかない子どもが増えているんです。スマホやゲームの普及で姿勢が悪くなり、かかとに重心が寄ったまま生活するのが原因のひとつ。これを放置すると腰痛や歩行障害につながる怖れがある。だからこそ、小中学校の部活や運動指導を通じて、しっかりケアを教える必要があるんです。オーバーワークやストレッチ不足などの問題も山積みなので、そこに私たちが出番と感じています。
――ビジネスとしても、スポーツ指導者やチーム、学校を巻き込んだ壮大なプロジェクトができそうですね。
(笠原)そうなんです。実際、弊社オリジナルのプロテインやインソール、サポーターなどを活用しながら、加圧トレーニングやストレッチ指導も行っています。将来的には、十勝のスポーツ界隈(かいわい)の監督やコーチに専門外のコンディショニングやケアを任せず、私たちがサポートすることで、みんなが本来の役割に集中できる環境を作りたい。私はその“特攻隊長”としてどっぷりスポーツに入り込み、チーム全体をレベルアップさせるお手伝いをしたいんです。
――オリジナルのプロテイン“OENUP”は十勝発のブランドなんですね
(笠原)実はパーソンでは、十勝オリジナルのプロティンブランド「OENUP」をリリースしています。コンディショニングに特化した企業だからこそ作れた、LOWコスト・HIGHクオリティなアイテムがそろっていて、すでに多くの十勝のスポーツ選手に使ってもらっています。トレーニング後やオフトレ期間、試合前など、さまざまなニーズに応えられる豊富なラインナップなんです。
「スポーツがアガる。アゲる。」がコンセプトで、いま大人気ですよ。さらに、今年7月には、私の大学時代の同級生でもあるプロハンドボール選手(日本代表)とのイベント開催を予定していますし、地域の高校とも提携し、アスリートサポートに力を注いでいます。本当に、地域まるごとスポーツで盛り上げている感じがたまりません!
――聞いているだけでワクワクしますね! やはり帯広に移住して大正解だったと感じていますか?
(笠原)はい、まさに大正解でした。バスケットチームに所属して試合に出たり、スキーが大好きな社長からはウィンタースポーツの魅力を教わったり、僕自身も十勝の自然を全力で楽しんでいます。スポーツに情熱を注ぐ仲間がすぐ見つかるのも帯広の魅力ですよね。
――最後に、これからの展望や夢を教えてください。
(笠原)やっぱり一番大事なのは、子どもたちが将来、怪我で苦しむことなくスポーツを楽しめる環境を整えることですね。運動不足や姿勢の乱れが深刻化している現代だからこそ、正しい足のケアを伝えていきたいと思っています。小学校や中学校と連携してストレッチやアフターメンテナンスを啓蒙するのも目標のひとつ。将来的には、私自身がショップを構え、バスケットコートを併設して、スポーツコミュニティを作る――大学時代に描いた夢を十勝で実現することが理想です!
(笠原)実は、まだまだ十勝に来てからできた友人が少ないので、新しい仲間をどんどん増やしたいと思っています。もし興味がある方がいらっしゃいましたら、ぜひ気軽に声をかけてもらえたら嬉しいです。皆さんと一緒にスポーツを楽しみ、笑顔いっぱいのコミュニティをつくっていきたいですね。
「足元を変えれば、世界が変わる」。まるでファッションの世界で“自分にピッタリの靴”を探すように、スポーツにも足のケアが必須。笠原さんが目指すスポーツシューフィッターは、健康志向が高まる今、まさに時代を先取りするお仕事と言えます。新潟から北海道・帯広へ。見知らぬ土地での挑戦が、子どもたちの未来まで照らすなんて、ドラマチックすぎる展開ですよね。「まだまだやりたいことが山盛りです!」とキラキラした瞳で語る笠原さん。その足元には、きっと“次のスポーツ革命”へと続く道が伸びているはずです。十勝で巻き起こる新たなる躍動を、TCRU編集部は追いかけ続けます!
スポーツを通じて、人と人を繋ぐ――。笠原さんの熱き夢は、十勝でますます花開く予感です。