十勝最古の秘湯・芽登温泉を受け継いだ若き夫婦
の物語

Sep. 16
9

北海道足寄町の山あいにある「芽登温泉」は、120年以上の歴史を誇り、「日本秘湯を守る会」にも加盟する名湯。2025年、その未来を託されたのは一組の若い夫婦、中村建一郎さん(32歳)と里紗さん(34歳)。「ここで新しい物語を紡ぎたい」。そう語る二人は、TCRUで芽登温泉の事業承継求人を知り、人生を大きくシフトさせました。なぜ山奥の一軒宿を継ぐ決断をしたのか。そして今、どんな未来を描こうとしているのか。

秘湯・芽登温泉の歴史と価値

芽登温泉は、十勝で最も古い温泉として知られる、明治時代から続く源泉かけ流し・加温なしの秘湯宿(日本秘湯の会)です。山奥に自然湧出する約60度の湯は毎分230リットルもの豊富な湯量を誇り、湯船は常に新鮮な温泉で満たされています。

露天風呂に身を沈めると、運が良ければ、頭上をシマフクロウが舞い、森の奥からはエゾシカやキタキツネが姿を現すことも……。川のせせらぎをBGMに、野生動物と共存するこの環境は、まさに「秘湯」の名にふさわしい、訪れた人たちを特別な体験に誘う場所。

北海道の杜に湧く秘湯。十勝最古の湯治の湯「芽登温泉」の愉しみ方 | 芽登温泉ホテル | 帯広 十勝の求人・移住なら【TCRU】北海道生活に役立つ情報
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温泉と食事しかない宿

さらに四季折々の表情も、この温泉の大きな魅力。春は芽吹き始めた新緑が鮮やかに広がり、夏は深い森の緑に包まれます。秋になると紅葉が露天を鮮やかに彩り、冬には雪見露天として幻想的な白銀の景色を楽しむことができます。自然と一体になれる四季の移ろいは、訪れるたびに新しい感動をもたらしてくれること間違いなし。

「温泉と食事しかない宿なんです。だからこそ“人との時間”が際立ちます」と、今回の主人公の一人、中村里紗さんは話します。派手なアクティビティはありませんが、静かに湯を楽しむことこそが最大の魅力なんだそう。

宿は全7室。最大でも20人程度しか宿泊できない小規模な宿だからこそ、接客の一つひとつが印象に残ります。

「お客様一人ひとりに心を込められる。それが芽登温泉の強みです」と夫の健一さん。

なぜ事業承継を決めたのか

事業承継に挑むきっかけは、趣味であるフライフィッシングの帰りに温泉に芽登温泉に立ち寄ったことでした。

「その後、偶然に夫が事業承継の求人を見つけて、100年以上続く宿を守る役割を私たちが担えるのでは、とワクワクしたんです」と里紗さんは振り返ります。

そして、建一郎さんもこう語ります。

「僕は星野リゾート・トマムでアウトドアガイドをしていました。お客様の笑顔を引き出すのは、自然や施設よりも“人の接し方”だと思うんです。芽登温泉はアクティビティがない分、接客がすべて。自分たちの経験を活かせると感じました

二人のこれまでの歩み

中村建一郎さんは、アパレル大手「ゴールドウイン」で副店長を務め、販売やSNSを活用した販促、イベント企画に携わってきました。その後は星野リゾート・トマムで、カヌーやスノーシューツアーを案内するアウトドアガイドとして活躍。

「トマムで学んだのは“体験をどう設計するか”ということです。自然の中でお客様と向き合う経験は、旅館の接客にもつながると思っています」

一方の里紗さんは、旅行会社で国内外の企画や手配を担当した後、韓国ロッテ免税店でインバウンド接客を経験。語学力を磨き、異文化コミュニケーションを重ねてきたそう。

「旅の最初から最後まで関わる仕事をしてきました。芽登温泉でもその経験を活かして、旅館全体のサービスづくりに携わりたいです」

二人のキャリアは異なりますが、共通するのは「人と向き合う力」。その積み重ねが芽登温泉へと結びつきました。

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入社してからの日常と苦労

2025年夏に入社してからの数ヶ月、二人は走り続けています。まず着手したのは館内案内図や見取り図の整備、レストラン「やませみ」のメニューづくりなど、基盤の整理でした。

「やることが山積みですが、一気に変えるのは大変です。まずは目の前のことを少しずつ進めています。既存のスタッフとも相談しながら、一歩ずつ前進している感覚です」と建一郎さんは語ります。

宿を訪れる客層は、定年後のゆったりとした時間を求める人が多く、北海道外からのリピーターや「秘湯を守る会」のスタンプ帳を手にした愛好家たちが中心です。

「お客様に助けられている実感があります。私たちの接客が完璧でなくても、自然や温泉の力が支えてくれます。そして、また来てくださるんです」と里紗さんは笑顔を見せます。

秘湯の魅力を未来へ

夫妻が次に見据えるのは、インバウンドや環境に配慮された温泉づくり!

「2025年11月からはアウトドアガイドとしての経験を生かして、新しいアクティビティを始めます。いまは海外からの旅行者も多くなってきているので、インバウンド接客の経験と英語力を生かして、海外のお客様ともコミュニケーションをとり満足度を上げていきたいですね。」と建一郎さん。

「今後はアパレル勤務を生かして、オリジナルグッズを考案してきたいと」と里紗さんも続きます。

「洗剤やボディーソープ、シャンプーなどアメニティを環境に配慮したものに変更し、環境へのダメージの少ない運営をしていきたい。この先も長く続く温泉を目指して、地産地消によるフードマイレージの削減と、地域社会への貢献をしていきたいんです」

また、館内も混浴システムの改善や美化も予定しているのだそう。

「古き良き伝統を大切にしつつ、現代に合ったスタイルを組み合わせたいです。120年以上続く宿を“ハイブリッドな温泉宿”にしていきたいと思っています」と建一郎さんは力を込めます。

未来像とメッセージ

「スタッフがやらされている雰囲気ではなく、楽しく働ける場をつくりたいです。そしてお客様には“また来たい”と思っていただける宿を目指します」と建一郎さん。

「十勝最古の芽登温泉は地域の宝だと思うんです。この場所を守りながら、未来へつなぐ。それが私たち夫婦の使命だと思っています」と言葉を添える里沙さん。

息のあった中村夫妻の挑戦はこれからが本番。応援の声はすでに地域や常連客から届き始めています。静かな山奥で、新しい芽が確かに育ちつつあります。

プロフィール

中村 建一郎(なかむら・けんいちろう)
1992年生まれ。千葉県立市川工業高校、中央工学校建築室内設計課卒。株式会社ゴールドウインにて副店長を務め、販売やイベント企画に従事。その後、星野リゾート・トマムでアウトドアガイドとして自然体験プログラムを担当。2019年より株式会社bondsに所属し、トマム支部統括。2025年芽登温泉に事業承継者として入社。

中村 里紗(なかむら・りさ)
1990年生まれ。明治大学政治経済学部経済学科卒。旅行会社で企画・手配を担当後、韓国ロッテ免税店でインバウンド接客を経験。2019年より株式会社bondsでアウトドアガイドを務める。資格は総合旅行業務取扱管理者、TOEIC670点。2025年芽登温泉に事業承継者として入社。

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