北海道・新得町の「北広牧場」には、搾りたての牛乳をかたちにする小さな部署があります。名前は「乳製品加工・販売部」。ソフトクリームミックスや低温殺菌牛乳、飲むヨーグルト……朝のしずくのような牛乳が、人のもとへ届くまでを担うチームです。
この部署の立ち上げを現場で支え、現在はマネージャーとしてチームを率いている若杉絵里子さん。商品づくりの実務から人材育成までを担いながら、国内でも数少ない「水牛ミルク」を使った乳製品開発という新たな挑戦にも取り組んでいます。
これまでの若杉さんの歩みと「北広牧場で働く」選択のリアル、そして乳製品づくりを通して、どんな未来を描いていけるのかを掘り下げていきます。

若杉さんが北広牧場に入社したのは2017年。最初の雇用形態はパートで工房に配属されましたが、実質一人の状態でした。
「事業として続けていけるのかも見えないなかで、『まずはやってみよう』という気持ちからのスタートでした」
と、当時を振り返ります。
前職では乳業メーカーで商品開発や企画を担当していた若杉さんですが、製造や販売の現場経験はありませんでした。分からないことだらけの立ち上げ期には、他の酪農家の工房を見学したり、帯広畜産大学の先生に相談したりしながら、一つひとつ形にしていったそうです。

最初に製造したのはソフトクリームミックスでした。お客様の反応を直接確かめたかったため、キッチンカーでの販売を試みます。
2019年には、大学時代の同級生が加わり、新製品の開発や新卒採用、販路拡大が一気に進みました。その後、若杉さんがリーダーとなります。
現在は乳製品加工・販売部のマネージャーとしてチームをまとめながら、新しいチャレンジにも取り組んでいます。2026年からはパートから正社員へと雇用形態を切り替える予定で、これまで「工房と一緒に歩んできた時間」を、次のステージにつなげようとしているところです。
「乳製品加工・販売部」の製品は、次の3種類です。



入社後は、これら3つの製造に関わってもらいます。製造のある日とない日では、担当する仕事の内容が少し変わるため、それぞれの働き方を分けて紹介します。
製造がある一日の大まかな流れは、次のようなリズムです。

朝は、牧場で搾ったばかりの生乳をバルクタンクからミルク缶に汲み出し、工房まで運ぶところからスタートします。工房に持ち込んだ生乳を製造機に流し込み、マニュアルに沿って副原料を加え、設定されたプログラムどおりに加熱殺菌・冷却を行います。
「仕込みって難しそう……」
そう感じるかもしれませんが、現在つくっている3つの製品については、機械側にプログラムが組み込まれているため、手順さえ覚えてしまえば、それほど複雑ではありません。
一方で、製造の合間には
など細かな作業が積み重なっていきます。午前中はとくに、体も頭も動かしながらテキパキと作業を進めるため、「気づいたら休憩時間」という日も多いそうです。午後は、機械や器具の洗浄・片付けが中心です。一日の最後に工房を整えてから仕事を終える──そんな流れで、乳製品加工・販売部の業務が回っています。

製造のない日に、いろいろな仕事にチャレンジできるのも、乳製品加工・販売部で働く楽しさのひとつです。
工房での製造にとどまらず、こうした業務にも関わることで、仕事の幅を広げていけます。催事やキッチンカーでは、お客様の反応を目の前で知ることができます。
「自分たちでつくったものが人に届く瞬間を見られるのは、やっぱりうれしいです」と若杉さん。「おいしかったです」「また買いに来ます」といった声を直接もらえることが、大きなやりがいにつながっているそうです。
また、新しい製品のアイデアやパッケージの提案も大歓迎です。
「こんな味のヨーグルトがあったらどうだろう」
「このラベルの色にすると、もっと手に取りやすくなりそう」
など、先輩たちと意見を出し合いながら、企画・開発を進める場面もあります。
製造の仕事を軸にしながら「お客様と向き合う経験」や「企画・デザインに関わる経験」を重ねていけるのは、北広牧場の乳製品加工・販売部ならではの魅力です。
※製造業務に特化して働きたい方に向けたパートスタッフの募集も行っています。

国内で水牛を飼育している牧場は、わずか2か所。そのひとつが北広牧場です。第2牧場「REKA(レカ)」で水牛の飼育に取り組み、「乳製品加工・販売部」との連携によって新しい製品づくりが進んでいます。第一弾として着手したのが「水牛ミルク100%のヨーグルト」です。

開発で大きなポイントになったのは、味や食感を左右する“乳酸菌の選び方”でした。
「乳酸菌は本当に無数にあって、組み合わせもさまざま。その中から、水牛ミルクの個性を素直に伝えられる菌を探していきました」
と若杉さんは語ります。試作を重ねた結果、酸味を出しすぎず、まろやかで食べやすい乳酸菌にたどり着きました。

完成したヨーグルトは、水牛ミルクの個性をしっかり感じられる一品です。上部には脂肪分が層になってバターのように固まり、その部分に香りや風味が凝縮されます。脂肪の層を全体に混ぜて食べると、酸味と水牛ミルク特有のコクがなじみ、なめらかな口当たりがクセになります。
「水牛ミルクが使える環境は全国でもほとんどありません。だからこそ生み出せるアイデアがたくさんあると思っています」
今後は、水牛ミルクを使ったソフトクリームやモッツァレラチーズにも挑戦していく予定。新しい取り組みに前向きな人にとって、水牛ミルクを使った製品開発は大きなやりがいにつながるはずです。

北広牧場では事業の拡大に伴い、一緒に働く仲間を募集しています。製造業や食品業界の経験者はもちろん、未経験の方も歓迎です。最初は先輩と同じラインに入り、マニュアルを見ながら作業を進めていきます。基本の流れをつかんだうえで、適性を見ながら少しずつ担当範囲を広げていくイメージです。
「いきなり全部お任せ、ということはありません。少しずつ一緒に覚えていけるようにしています」と若杉さんは話します。

乳製品加工・販売部の仕事で、若杉さんが何より大切だと考えているのは「一つひとつの業務に丁寧に向き合えるかどうか」です。
「たとえば、その日使う生乳や副原料の状態はどうか。製造機器は問題なく稼働しているか。なにかいつもと違ったところはないかなどに気づいて、周りに伝えたり対処を相談したりする場面もあります」。
「食を扱う仕事」である以上、一つひとつを確実に積み重ねていかなければ、大きな事故につながりかねません。できあがったものを人が口にするからこそ、責任を持って丁寧に仕事を進められるかどうかが、何より重要になります。
そのうえで、
といった要素があると、この仕事をより楽しみやすくなります。新たなメニューを考えたり、接客販売をしたりと、製造にとどまらない側面を持つ仕事だからです。

この記事を読んで「北広牧場の仕事が少し気になる」「どんな現場なのか見てみたい」と感じた方は見学から始めてみませんか。新得の工房に足を運んでいただき、現場の雰囲気や設備、働き方を実際に見てもらえます。
道外にお住まいの方や、すぐに新得まで来るのが難しい方には、若杉さんとのオンライン面談もご用意しています。見学やオンライン面談のお申し込みは、以下のボタンから応募フォームにアクセスし、必要事項をご入力ください。
「いきなり選考や採用の話に入るのではなくて、お互いを知るところから始めたいと思っています。『この人たちと一緒に働きたい』と思えたうえで進められたら、きっとお互いにとってよいですよね」
若杉さんも、あなたとお話しできる日を楽しみにしています。
大学卒業後、乳業メーカーの商品開発部門に就職。商品企画や開発に携わったのち、大学時代の同期であり、現在「北広牧場」専務取締役を務める若杉真吾さんとの結婚を機に前職を退職する。2人の子どもの出産・育児を経て、2017年にパートスタッフとして北広牧場へ入社。現在は乳製品加工・販売部のマネージャーとして、乳製品工房の運営や商品開発を担っている。趣味は音楽鑑賞。