子どもの頃に憧れた宇宙への入り口を、今この手
でつくっている面白さ。

Sep. 12
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今回は、HOSPOを運営するSPACECOTANのメンバーをご紹介いたします!紹介するのは、SPACECOTAN株式会社でCTOを務める干場康行(ほしばやすゆき)。幼い頃に見た、機動戦士ガンダムをきっかけに宇宙に興味を持った干場が、「技術者としてどうしても宇宙業界に関わりたい」という思いで、自身のキャリアを生かして射場設計に関わっています。これまで、どんなキャリアを積んできて、どんな未来を描いているのでしょうか?

干場康行(ほしば やすゆき)
SPACECOTAN株式会社 CTO  

金沢工業大学大学院機械工学専攻修了後、株式会社ササクラにて、蒸発濃縮装置や排水処理プラントの設計、次世代空調システム開発および設計等を行い、プラント分野および建築分野のキャリアを積む。その後、技術開発系商社に転職後、中国や東南アジア圏での次世代空調システムのビジネスデベロップメントを行った。2020年にインターステラテクノロジズ株式会社入社し、ZERO向け60t級エンジンの燃焼試験設備の新設やMOMO打上地上支援設備の改修、MOMOv1向け14t級エンジンの縦吹き燃焼試験設備の新設を行ってきた。その後、SPACECOTAN株式会社CTO兼取締役に就任。  

大学ではどんなことを勉強してきたんですか?

僕の専攻は機械工学科で、熱交換器の研究をしていました。熱交換器とは、異なる二つの流体間で熱エネルギーの交換をする機器です。

熱交換、私には馴染みのない言葉です。どうしてその研究を?

私たちの生活には、熱エネルギー利用は必要不可欠ですよね。日々莫大な熱エネルギーが生み出されていますが、有効に使えている熱エネルギーはそのうちの50~60%程度であり、残りのエネルギーは取り出せないため捨てられています。特に化石燃料等のエネルギー源を輸入に頼っている日本においては、エネルギーを有効利用する技術は、人の生活や経済成長を維持するうえでは必要不可欠ですし、世界的な社会問題でもある、エネルギー問題の解決にも役立つ技術となります。  

僕は、エネルギーを有効利用するための技術の一つである熱交換器の高性能化に課題感を持ち、研究をしていました。熱交換器は、互いに隔たれた高温の流体と低温流体を、伝熱面と呼ばれる固体の壁を介して熱エネルギーを移動させる機器です。僕の研究では、伝熱面をアクティブに変形させて、熱エネルギーの移動を促進させていました。実用化までは至らなかったものの、いつの日か、この研究成果を使った商品が生み出されることを期待しています。

大学院修了後もその研究を続けたんですか?

修了後は株式会社ササクラという会社で排水処理プラントの設計を担当しました。海水を蒸発させて真水をつくる海水淡水化プラントの技術を応用した、蒸発濃縮装置という工場の排水を処理をする装置や排水処理プラントを設計していました。  

たとえば、下水処理場では微生物に有機物を食べさせて排水をキレイにする微生物処理が用いられますが、工場排水には無機物や微生物には有害なものが含まれている場合もあって微生物処理ができません。そこで、蒸発濃縮装置が使われます。

工場排水と言えど、排水中の多くても10%程度が無機物や有害物で、残り80%は水なんです。僕が担当していた蒸発濃縮装置を使えば、工場排水の水分だけ蒸発させ、残った無機物や有害物を濃縮水として取り出せます。蒸発し蒸気となった水は、冷却し凝縮することで、蒸留水として取り出すことができて、工場内で再利用可能となります。場合によっては、濃縮水の中には、有価物が含まれることがあるので、それだけ取り出すことも。

工場排水は、お客様の工場によって多種多様の性状となるので、蒸発濃縮装置は一品一葉。お客様との緻密な情報交換が必要な、オーダーメイド品です。当時、僕は、お客様とのやり取りから、基本仕様決定、下流工程へのインプットし装置の製作、試運転までの一通り全てを行っていましたよ!

その後、次世代空調システムの部署に異動し、更に極めたいと思って転職しました。

転職先ではどんなことをやっていたんですか?

一言でいうと、ビジネスデベロップメントのような仕事でした。中国や東南アジアを地盤に、技術開発と事業化スキーム構築を行っていました。だいたい1年の半分くらいは中国にいましたね。設計、技術開発、ビジネスデベロップメントなど、いろんなキャリアを積んできましたが、技術者としては「いつかは宇宙に携わりたい」と心の片隅で思っていたんです。でも、自分のキャリアでは宇宙領域に携われるきっかけが少なかったことが現実。だから自分のキャリアを活かせる宇宙領域への転職先をずっと探していたんです。  

そうだったんですね!いつから宇宙に興味を持っていたんですか?

小さいときから、ガンダムが好きだったんです。こういう未来があるんだな、と思っていましたね。それに技術者になりたいと思っていて、その到達点が宇宙だなと思っていたんです。

そこからISTに入社されたようですが、大きく業界が変わっていますね!

どうしても宇宙に携わりたかったんです。色んな会社を探したのですが、僕のキャリアを鑑みたときに、需要と供給がマッチしたのがインターステラテクノロジズ(以下、IST)だったんですよね。

やっぱり、射場からロケット開発や製造まで、統合的に自社内で作っているのはISTくらいで。しかもISTは今まさに、どんどん開発を進めている真っ最中な会社で、タイミングとしても今しかないと思っていました。北海道にはそれまで縁もゆかりもなかったので多少の不安はありましたが、この機会を逃すまいと、北海道に行くことを決めました。

ISTではどんなことを担当していたんでしょうか。

燃焼試験設備や、射場と呼ばれるロケット打上げ場の設計です。宇宙分野は初めてでしたが、基本的なものづくりの仕事の流れや扱う学問は、今まで培ってきたことと一緒です。ただ、一番の大きな違いは、扱っている流体の性質でした。高圧ガスや極低温流体を扱っているので、それに最適化した設計のアプローチをしなきゃいけないんですよね。そのアプローチの部分は、JAXAやNASAの文献を読み最適な手法を調べて取り入れたりしていました。  

ISTが、観測ロケットMOMOを1年かけてバージョンアップしたのですが、その過程では何度も燃焼試験を重ねています。ロケットのリソースの半分はエンジンと言っても過言ではないのですが、僕は、燃焼試験設備構築するという側面から、ロケット開発に携わっていました。エンジンの開発者たちが議論しながら、エンジンの燃焼試験で必要なことを議論し、燃焼試験設備をつくっていましたね。

SPACE COTANのCTOの仕事はどんなことを?

人工衛星を宇宙空間に輸送できる規模のロケットを、打ち上げることが可能な射場であるLC-1の企画・計画を担当しています。現在は、国内外のHOSPOを利用するユーザーとなるロケット打上げ事業者が、どんなものを必要としていて、どのような使い方をしているかを調査し、それを元に企画や設計をしている段階です。SPACE COTANでは技術担当は僕しかいませんが、道内の多くの企業と協力しながら進めています。まさに「オール北海道」の取り組みだと言えますね。 

現在稼働中のLC-0ではどんなことをしているんですか?

LC-0を使ったロケット打上げ時のサポートです。オペレーションや技術サポート、また、打上げ時の環境測定などもお手伝いしています。LC-1以降にも同じようにサポートしていく想定なので、2021年からはISTの観測ロケットMOMOの打上げの、見学場の運営や打上げ配信等のサポートも担っていますよ。  

LC-1以降は、ロケット開発のサポートも積極的にしていきたいと思っています。例えば実験設備の貸し出しやワークスペース、工場があれば、研究機関やスタートアップも来やすくなりますよね。はやく「HOSPOなら、開発から打上げまでの一通りができる」と言えるようにしたいです。

▲北海道スペースポート VISION BOOKより

どんなところに面白さを感じるのか?

射場をゼロからつくっていくのは、なかなかできない体験ですよね。しかもずっと関わりたかった宇宙領域。自分の人生で挑戦できるというのは嬉しいです。

もともと、僕はエネルギー問題に課題感を持って研究してきましたが、まちぐるみで取り組まなければ良い方向に向かっていかないなと痛感したことがあります。エネルギー問題は突き詰めると「エネルギーの最適化」つまり、無駄になってしまうエネルギーを限りなくゼロにすることと、融通し合うことが必要です。  

大学時代に僕の研究していた熱交換器だけでは、エネルギーの最適化は、十分に達成することはできません。まちぐるみで取り組み、エネルギーの共有と循環をしていくことが大切だと、僕は考えています。更に日本は自然災害も多い国ですし、町と町の距離が遠い北海道においては、町単位でのコミュニティの中で、エネルギーをシェアすることが必要不可欠だと思うんです。そんな考えを持っていたので、HOSPOを中心とした宇宙版シリコンバレーでは、エネルギー問題の解決も視野に入れたいと思っています。  

例えば、メタン発酵技術を使った、バイオガスプラントの可能性。メタン発酵技術は、酪農や畜産の廃棄物を再利用する技術とも言えます。今まで捨てるしかなかった糞尿が、電気、熱だけでなく、ロケット燃料にもなるんです。残ったものは肥料になり、エネルギーを余すことなく使えます。これを大樹町はもちろん、十勝や北海道全体で循環するような仕組みができればすごく良いですよね。SPACECOTANが思い浮かべている宇宙版シリコンバレーには、バイオガスプラントを含んでいます。

北海道の主力産業である一次産業の更なる発展には、宇宙利用が必要不可欠と考えています。HOSPOを作ることにより、北海道における宇宙利用を促進したいですね。HOSPOから打ち上げた人工衛星で得られたデータを一次産業に展開したら、もっと便利に、もっと人の手をかけずに一次産業に活かすことができますし、宇宙から見るからこそ、広域を効率的観測することができるようになるはずです。そのためにも、日本でロケットを頻繁に打ち上げられるようにすべきですし、それぞれのニーズに合った人工衛星を打ち上げる必要があるんです。例えば、「北海道衛星」を打ち上げて、北海道の人は全員そのデータを無料で使えるよ!ってなったら、おもしろいと思っています。  

最後に言い残したことは?

HOSPOは単なるスペースポートづくりで留まる話ではなく、まちづくりなんです。まちづくりだから、宇宙産業だけではなく観光や、教育や、人の生活とに関わること全てに対して、様々なアプローチができるんですよね。だから、宇宙版シリコンバレーを作っていきたい我々SPACE COTANと、まちづくりをしていきたい人たちと重なる部分が絶対ありますし、その共鳴するポイントを多くの人たちと見つけていきたいなと思います。だから、宇宙に興味がある人だけじゃなくて、まちづくりに興味がある方にもぜひ参加してほしいです。なんせ、こんなに本気で発展させようとしている町はここだけ。みんなでワクワクを共感しましょう!  

最後までお読みいただき、ありがとうございます!
本記事は、2021年9月にnoteで公開されたものになります。
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