バス運転手の職業は多くの課題に直面していますが、2024年問題と呼ばれる労働市場の変動によって、その待遇や労働環境に大きな変化が見られるようになりました。年収はどの程度上昇したのか、また、労働環境は実際に改善されているのでしょうか?本記事では、最新のデータと専門家の意見を基に、現在のバス運転手の経済的及び職業的実情に迫ります。
令和4年賃金構造基本統計調査によると、バス運転手の現在の平均年収は以下の通りとなっています。
だいたい一般的な会社員の年収とほとんど変わらないと言えそうですね。では、他のドライバー職種との平均年収を比較してみましょう。こちらも令和4年賃金構造基本統計調査を参照しています。
バス運転手の平均年収を他のドライバー職種と比較すると、長時間で長距離を運転することになるトラック運転手の平均年収には及ばないものの、預かる人数の多さか、タクシー運転手の平均年収より約37万円高いことが分かります。
月収自体は、約30万円とタクシー運転手とあまり変わりませんが、バス運転手はドライバー職種のなかで最も年間賞与の支給額が多いことから年収において差がつく結果となっております。
では、冬は多くの場合雪の中を走行することになる北海道におけるバス運転手の年収はどうでしょうか。
残念ながら、約307万円と全国平均と比べると低い結果となっております。
おそらく、人口の少なさや、道内の平均年収自体の低さが影響していると思われるのですが、北海道はどうしても被雇用者の収入が低くなってしまう分、物価も都会と比べてかなり低いので、体感の生活レベルとしてはあまり変わらないかもしれません。
人口が少ないのも、乗車率が過密になってしまうことも多い大都市のバスよりも、暗くに働くことができると言えるかもしれません。しかし、やはり年収が低くなってしまうことには変わりはないので、どうしても高い収入を期待したい人は、バス運転手の平均年収が最も高い神奈川県などで就職するのがいいかもしれません。
運転手の労働規制が強化される「2024年問題」は、バス業界にも影響を及ぼしています。バスやタクシー、トラックなどの運送業界では、ドライバーの年間の残業時間の上限が960時間に引き下げられたほか、退勤から次の出勤までの休憩時間を、以前より長く確保することが求められるようになりました。
それによって、人手不足が深刻化し、減便を余儀なくされる状態になっています。そうした中で、収入面での不安のため、タクシーや物流業界に転職する運転手が相次いでいる状況にあります。
一方で、こうした労働規制によって、働き方は良好になっています。勤務は楽になり、全体的に退勤時刻も早くなって、時間にゆとりが生まれているとの声も大きいです。
こうした状況の中、バスをはじめとした交通・運送業界で期待されているのが、外国人労働者の導入です。
自民党は、外国人労働者の受け皿となる「特定技能制度」について、自動車運送業や鉄道、林業そして木材産業の4つの分野を新たに対象とする政府案を了承したとのことで、かなり近いうちに外国人のバス運転手が解禁されそうです。
先進諸国ではすでに移民の運転士が珍しくないものとなっており、日本でそうなる日も遠くないかもしれません。しかしながら、その前に日本の労働者へ対する待遇改善の方が重要との見方も多いのも現状です。こうした問題も含め、バス運転手の減少の問題について、もっと話し合って行かなくてはならないでしょう。
「2024年問題」は、労働者の「ワークライフバランス」を確立させた一方で、私たちの生活にも大きく影響しています。労働者にとっては「収入確保」、企業にとっては「人材確保」が喫緊の課題となり、利用者にとっては生活の一部となっている「利便性」をどこまで手放すことができるかが問題となります。みんなで考えていかなくてはなりませんね。